前のページへ | 次のページへ | 目次へ

労災保険法(6)-11

仮画像

テキスト本文の開始

 

 

 

-----------------(221ページ目ここから)------------------

 

 

第 10 章

不服申立て・訴訟
雑則及び罰則

第1節  不服申立て等    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・222
第2節  雑則    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・230
第3節  罰則    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・234

 

 

-----------------(222ページ目ここから)------------------

 

 

第1節  不服申立て等

 

1  審査請求及び再審査請求 (法38条)                   重要度 ●●●

 

outline

 

◆行政処分に関する不服申立て

 


□本来、行政処分(例えば、保険料の決定に関する処分)に不服があるときは、行政不服審査法の規定により、処分決定をしたもの(又はその直近上級行政庁)に対して、「異議申立て」又は「審査請求」を行うこととなる。

 

↓ ところが…


保険給付の支給の可否被保険者資格の得喪の確認は、一方的な判断ではなく被災者や被保険者等の立場にたって精査することも必要な場合が多い。

 

↓ そこで…


□各保険法においては、独自規定による専門審査機関(各審査官と審査会)が置かれ、処分決定をしたものと異なるものに対して「審査請求」又は「再審査請求」を行うこととされている。→行政不服審査法の「特別法」たる位置づけと理解しよう!


↓ なお…

 


労働保険徴収法においては、そのような独自規定が置かれていないため、本来の手続き通りに不服を申し立てることになる。
*これは、保険料の認定決定等に係る不服審査は、行政手続や判断基準の「運用」に誤りがなかったかを再度判定するための制度であり、納付義務者の利害を考慮する必要はないからである。

 

 

条文

 

 

1) 保険給付に関する決定*1に不服のある者は、労働者災害補償保険審査官*2に対して審査請求*3をし、その決定に不服のある者は、労働保険審査会*4に対して再審査請求をすることができる。(平4択)(平3記)(平10記)

 

2) 前項の審査請求をしている者は、審査請求をした日から3箇月を経過しても審査請求についての決定がないときは、当該審査請求に係る処分について、決定を経ないで、労働保険審査会に対して再審査請求をすることができる。

(平9択)(平12択)(平22択)(平21選)

 

3) 第1項の審査請求及び前2項の再審査請求は、時効の中断に関しては、これを裁判上の請求とみなす。(平9択)(平13択)(平22択)(平10記)

 

 

ここをチェック

 

□*1「保険給付に関する決定」とは、直接受給権者の権利に法律的効果を及ぼすところの処分をいう。したがって、業務上外、給付基礎日額、傷病の治ゆ日又は障害等級等の認定は、保険給付をするか否かの行政処分の前提となる事実認定であって、それのみでは審査の対象となる決定ではない(昭35.8.17基発691号)。(平6択)

 

-----------------(223ページ目ここから)------------------

 

□*2「労働者災害補償保険審査官」は、各都道府県労働局に置かれている(労働保険審査官及び労働保険審査会法(以下「労審法」とする)2条の2)。

(平10記)


↓ なお…


□*3「審査請求」は、審査請求人の住所を管轄する労働基準監督署長又は原処分をした労働基準監督署長を経由してすることができる(労審法施行令3条1項)。

(平8択)

 

□*4「労働保険審査会」は、厚生労働大臣の所轄の下に置かれ、9人の委員により組織されており、その委員は両議院の同意を得て厚生労働大臣によって任命される(労審法25条1項ほか)。(平6択)

 

ちょっとアドバイス

 

◆不服申立ての流れ

 

 

advance

 

前年改正

 

◆審査請求時の労働基準監督署長意見書の審査請求人への提示

 


a) 審査官は、労働基準監督署長から提出された意見書を審査請求人に提示した上で、審理を行う。


b) 審査官は、審査請求人から審査請求の理由等を聴取するのに先立って、労働基準監督署長から提出された意見書を審査請求人に送付する。
*聴取の際にも、意見書の内容を説明した上で意見を聴取する。

 

 

-----------------(224ページ目ここから)------------------

 

2  不服申立て前置主義 (法40条)                       重要度 ●
   

条文

 

 

第38条第1項に規定する(保険給付に関する決定)処分の取消しの訴えは、当該処分についての再審査請求に対する労働保険審査会の裁決を経た後でなければ、提起することができない。ただし、次のいずれかに該当するときは、この限りでない。(平22択)

 

 

イ) 再審査請求がされた日から3箇月を経過しても裁決がないとき
(平9択)(平12択)(平23択)

 

ロ) 再審査請求についての裁決を経ることにより生ずる著しい損害を避けるため緊急の必要があるときその他その裁決を経ないことにつき正当な理由があるとき

 

 

3  保険給付に関する決定処分以外の不服申立て (法41条) 重要度 ●●

 

条文

 


徴収法第37条(異議申立て*1)の規定は第31条第1項(事業主からの費用徴収)の規定による徴収金について、徴収法第38条(審査請求)の規定は第12条の3第1項及び第2項(不正受給者からの費用徴収)並びに第31条第1項の規定による徴収金について準用する。

 

 

ちょっとアドバイス

 

◆異議申立て及び審査請求のまとめ

 


イ) 事業主からの費用徴収

(平4択)(平6択)(平22択)(平10記)

 

異議申立て:都道府県労働局長


↓ さらに不服ならば…


審査請求:厚生労働大臣

 

ロ) 不正受給者からの費用徴収

 

審査請求:厚生労働大臣

 

 

ハ) イ、ロ以外の処分(特別加入の承認に関する処分、特別支給金の支給に関する処分 etc.)(平22択)

 

 

審査請求:処分庁の直近上級行政庁

 

      

  ↓ なお…


□ハの場合における審査請求に係る当該処分については、審査請求に対する厚生労働大臣の裁決を経ずに、直ちに、処分の取消しの訴えを提起することができる。 (平4択)(平6択)(平13択)

 

 

イ、ロに不服がある場合は、審査請求に対する厚生労働大臣の裁決を経た後でなければ処分の取消しの訴えを提起することができない。

 

 

-----------------(225ページ目ここから)------------------

 

advance

 

□*1「異議申立て」とは、違法又は不当な処分によって自己の権利又は利益を侵害されたことを主張して、当該処分をした行政庁(処分庁)に対し、その処分の取消し、変更等を求めるためにする不服申立てのことをいう。

 

参考条文

 

(行政不服審査法6条)

 


行政庁の処分についての異議申立ては、次の場合にすることができる。ただし、a)又はb)の場合において、当該処分について審査請求をすることができるときは、法律に特別の定めがある場合を除くほか、することができない。

 


a) 処分庁に上級行政庁がないとき


b) 処分庁が主任の大臣又は宮内庁長官若しくは外局若しくはこれに置かれる庁の長であるとき


c) a)、b)に該当しない場合であって、法律に異議申立てをすることができる旨の定めがあるとき

 

 

※テキスト226ページ~229ページは、過去問掲載ページです。WEB上での掲載はございません