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労災保険法(6)-7

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第 9 章

特 別 加 入

第1節  特別加入制度の概要    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・204
第2節  特別加入の適用    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・208

 

 

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第1節  特別加入制度の概要

 

1  特別加入制度の種類 (法33条)                       重要度 ●●

 

  (1) 中小事業主等 (1号・2号(「第1種特別加入者」という))

 

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労災保険法上の事業主の取扱いについて、労働保険事務組合(以下、解説においては「事務組合」とする)という組織に労働保険の事務処理を委託するすべての事業所に関し、その受託元事務組合を事業主とみなす制度である。


↓ したがって…


保険法上、委託事業所で働く者は、経営者を含めてすべてその事務組合所属の従業員とみなされて、一般労働者はもちろん「経営者」に対する労災保険の適用を可能とする。


↓ ちなみに…


「労働保険事務組合」とは?(詳細は、労働保険徴収法において学習する)

 


a) 受託事業主に係る労働保険の事務処理の円滑化を図るために設けられた制度である。


b) 都道府県労働局長の認可を受けた民間の任意組織である。


c) 一般的には、商工会議所や協同組合、社労士事務所等が運営 主体となっている。

 

 

条文

 


1) 厚生労働省令で定める数以下の労働者を使用する事業*1(厚生労働省令で定める事業を除く。第7号において「特定事業」という)の事業主で労働保険事務組合に労働保険事務の処理を委託するものである者(事業主が法人その他の団体であるときは、代表者)(平11記)


2) 前号の事業主が行う事業に従事する者*2

 

 

ここをチェック

 

□*1「厚生労働省令で定める数以下の労働者を使用する事業の事業主」とは、次のとおりである(則46条の16)。(平2択)(平22択)

 


事業の種類

 

労働者の規模

 

a) 原則(平11記)

 

常時300人以下

 

b) 卸売業又はサービス業が主たる事業

 

常時100人以下

 

c) 金融業、保険業、不動産業又は小売業が主たる事業

(平11記)

 

常時 50人以下

 

□*2「事業主が行う事業に従事する者」とは、労働者となる者を除く家族従事者や事業主が法人である場合の代表者以外の役員等をいう。

 

ちょっとアドバイス

 

□労働保険事務組合に労働保険事務の処理を委託する場合に限って、当該中小事業主等の特別加入は認められる。(平3択)(平6択)

 

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↓ なお…


特別加入をしようとする事業主が労働保険事務組合に労働保険事務の処理を委託する時期は、必ずしも特別加入の申請前である必要はなく、これと同時であってもよい(昭40.11.1基発1454号)。

 

□2以上の事業を行っている中小事業主が、これらすべての事業につき特別加入しようとするときは、それぞれの事業ごとに、それぞれの事業について成立している保険関係に基づいて、特別加入しなければならない

(昭40.11.1基発1454号)。

 

advance

 

□数次の請負による建設の事業の場合、保険関係が一括されて元請負人のみが事業主となるが、このような場合の下請負人(下請負事業の事業主)も、本条にいう事業主として特別加入の対象となる(昭40.11.15基発18号)。(平9択)

 

船員を雇用している事業の代表者及びその事業に従事する者についても、加入要件を満たすことにより、特別加入することができる。

(2) 一人親方等 (3号~5号(「第2種特別加入者」という))

 

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同種同業者団体そのものを労災保険の「適用事業所」かつ「事業主」とみなす制度であり、具体的には、各地方にある個人タクシー協会や建築労働者協同組合、農協等の団体が該当する。


↓ 本来…


個人経営者が加入単位となって組織するこのような事業主団体は、一般労働者が加入しない団体であるから労災保険法の適用の余地はない


↓ しかし…


一般労働者となんら変わらない就労環境にあることから、こうした団体に加入する個人経営者をすべて「労働者」とみなし、一般労働者と同じように労災保険法を適用することとした。(なお、この特別加入制度は、一定の業種に限って認められるため、例えば、「都道府県社労士会」は対象となっていない)

 

 

条文

 


3) 厚生労働省令で定める種類の事業*1を労働者を使用しないで行うことを常態とする者*2


4) 前号の者が行う事業に従事する者*3


5) 厚生労働省令で定める種類の作業*4に従事する者

 

 

ここをチェック

 

□*2「労働者を使用しないで事業を行うことを常態とする者」とは、一人親方その他の自営業者をいう。

 

□*3「事業に従事する者」とは、労働者となる者を除く家族従事者をいう。

 

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ちょっとアドバイス

 

□*1「厚生労働省令で定める種類の事業」とは、次のとおりである

(則46条の17)。

 


a) 自動車を使用して行う旅客又は貨物の運送の事業


b) 土木、建築その他の工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体又はその準備の事業


c) 漁船による水産動植物の採捕の事業(gに掲げる事業を除く)


d) 林業の事業


e) 医薬品の配置販売の事業


f) 再生利用の目的となる廃棄物等の収集、運搬、選別、解体等の事業


g) 船員法1条に規定する船員が行う事業

 

 

□*4「厚生労働省令で定める種類の作業(特定作業)」とは、次のとおりである(則46条の18)。

 


a) 農業(畜産及び養蚕の事業を含む)における作業のうち、一定の規模の事業場におけるもの(特定農作業)又は一定の種類の機械を使用するもの(指定農業機械作業)


b) 国又は地方公共団体が実施する訓練として行われる作業のうち、求職者を作業環境に適応させるための訓練として行われるもの又は求職者の就職を容易にするために必要な技能を習得させるための職業訓練であって事業主又はその団体に委託されるもの


c) 家内労働者又はその補助者が行う作業のうち、危険な一定の機械器具を使用して行うもの又は有害な一定の化学物質を使用して行うもの


d) 労働組合等の常勤の役員が行う集会の運営、団体交渉その他の当該労働組合等の活動に係る作業であって、当該労働組合等の事務所、事業場、集会場又は道路、公園その他の公共の用に供する施設におけるもの


e) 介護関係業務に係る作業であって、入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話、機能訓練又は看護に係るもの