前のページへ | 次のページへ | 目次へ

労災保険法(5)-15

仮画像

テキスト本文の開始

 

 


□その他の「金銭補償」との調整は、次のとおりである(昭56.6.12発基60号)。

 


【企業内災害補償】(平14択)(平18択)(平20択)
一般的には、労災保険給付に上積みして給付する性質のものであるから、その制度を定めた労働協約、就業規則その他の規定の文面上労災保険給付相当分を含むことが明らかである場合を除き、労災保険給付の支給調整は行われない(企業内災害補償の内容が労災保険給付と重複する損害てん補の性質を有することが明らかである場合には、支給調整が行われる)。

 

 

【示談金及び和解金】(平5択)
労災保険給付が将来にわたって支給されることを前提として、これに上積みして支払われるものである場合には、労災保険給付の支給調整は行われない。

 

 

【見舞金】
単なる見舞金等民事損害賠償の性質を有しないものは、労災保険給付の支給調整は行われない。

 

 

 

-----------------(172ページ目ここから)------------------

 

3  事業主による民事損害賠償-2 (事業主側・法附則64条1項)   重要度 ●
   

条文

 

 

労働者又はその遺族が障害(補償)年金若しくは遺族(補償)年金(以下「年金給付」という)を受けるべき場合(当該年金給付を受ける権利を有することとなった時に、当該年金給付に係る障害(補償)年金前払一時金若しくは遺族(補償)年金前払一時金(以下「前払一時金給付」という)を請求することができる場合に限る*1)であって、同一の事由について、当該労働者を使用している事業主又は使用していた事業主から民法その他の法律による損害賠償(以下「損害賠償」といい、当該年金給付によっててん補される損害をてん補する部分に限る)を受けることができるときは、当該損害賠償については、当分の間、次に定めるところによるものとする。

 

 

イ) 事業主は、当該労働者又はその遺族の年金給付を受ける権利が消滅するまでの間、その損害の発生時から当該年金給付に係る前払一時金給付を受けるべき時までの法定利率により計算される額を合算した場合における当該合算した額が当該前払一時金給付の最高限度額に相当する額となるべき額(ロの規定により損害賠償の責めを免れたときは、その免れた額を控除した額)の限度で、その損害賠償の履行をしないことができる*2。

 

ロ) イの規定により損害賠償の履行が猶予されている場合において、年金給付又は前払一時金給付の支給が行われたときは、事業主は、その損害の発生時から当該支給が行われた時までの法定利率により計算される額を合算した場合における当該合算した額が当該年金給付又は前払一時金給付の額となるべき額の限度で、その損害賠償の責めを免れる。

 

 

ちょっとアドバイス

 

□*1「前払一時金給付を請求することができる場合に限る」とは、例えば、遺族(補償)年金について、先順位者が前払一時金を受けて失権した後の後順位者は前払一時金請求ができないため、調整規定は適用されないということである。

(平8択)(平9択)


↓ なお…


□損害賠償を請求し、その賠償額を算定する時点において、前払一時金請求の権利行使期間が徒過したことによって当該請求をすることができない場合であっても、時効により前払一時金請求をすることができないだけであるときは、「年金給付の受給権を有することとなったときに前払一時金を請求することができる場合」に該当し、調整規定が適用される。(平9択)

 

□*2 履行の猶予が行われるのは、事業主側がこの権利の行使を主張した場合に限られる。

 

-----------------(173ページ目ここから)------------------

 

advance

 

◆具体的な算定方法

 


イ) 履行の猶予
【履行猶予額】=前払一時金の最高限度額-損害発生時から前払一時金を受けるべき時までの法定利率(年5分)により計算される額

 

 

ロ) 免責
【免責限度額】=年金給付又は前払一時金の支給額-損害発生時から当該年金給付又は前払一時金の支給が行われた時までの法定利率(年5分)により計算される額

 

 

*試験対策上は、この算定方法を修得する必要はなく、損害発生時の評価額に計算し直した額について賠償責任が免除されることが理解できればよい。

 

※テキスト174ページ~180ページは、過去問掲載ページです。WEB上での掲載はございません