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労災保険法(5)-14

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(2) 具体的な調整方法

 


【労災保険給付における調整】


a) 休業補償給付、傷病補償年金の場合

 

 

b) 障害補償年金、遺族補償年金の場合

 

 

調整対象期間以外の期間については、仮に、事業主からの損害賠償が行われたとしても調整されることはない。


↓ つまり…


保険給付は行われるということ!(二重の所得保障が生じ得る)

 

 

【民事損害賠償における調整】


「猶予期間中」は賠償債務(災害補償の支払義務)の履行期(支払の実行期)にないということであって、損害賠償の責めを当然に免れるわけではない(法附則64条1項1号)。


↓ とりあえず…


「事業主があわてて賠償しなくてもよい期間」という理解でよい。


↓ そして…


被災労働者が保険給付を請求すると、事業主からの直接の補償に代わって保険給付が行われるため、それ相当額の事業主の賠償債務は、保険給付が支給される都度、消滅していく(法附則64条1項2号)。


↓ この時点で…


その給付相当額が免責となる!(平9択)
(その給付額を損害発生時の評価額に計算し直した額について賠償責任が免除され、当初履行が予定されていた全額に相当する給付が現実に支給されたとき、事業主の賠償債務はなくなる)

 

 

条文

 

 

労働者又はその遺族が、当該労働者を使用している事業主又は使用していた事業主から損害賠償を受けることができる場合であって、保険給付を受けるべきときに、同一の事由について、損害賠償(当該保険給付によっててん補される損害をてん補する部分に限る)を受けたとき*1は、政府は、労働政策審議会の議を経て厚生労働大臣が定める基準*2により、その価額の限度で、保険給付をしないことができる。 (平14択)(平18択)(平20択)

 

 

ちょっとアドバイス

 

□*1 支給調整を行う際に労災保険給付との比較の対象とされる民事損害賠償の額は、受給権者本人の受けた民事損害賠償に係るものに限られる。(平5択)

 

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□*2「厚生労働大臣が定める基準」による調整内容は、次のとおりである(平5.3.26基発29号、平8.3.1基発95号)。

 


支給調整を行う労災保険給付

 

 

支給調整を行わない労災保険給付等

 

a) 療養(補償)給付

 

b) 休業(補償)給付

 

c) 傷病(補償)年金

 

d) 障害(補償)給付

 

e) 遺族(補償)給付

 

f) 介護(補償)給付(平10択)

 

g) 葬祭料(葬祭給付)(平9択)

 

a) 前払一時金給付


b) 前払一時金給付の最高限度額相当額に達するまでの間についての年金給付


c) 障害(補償)年金差額一時金


d) 遺族(補償)年金失権後の不足調整として生ずる遺族(補償)一時金


e) 先順位者が失権した後の後順位者に対する遺族(補償)年金(平9択)


f) 損害項目に対応する保険給付が存しない見舞金、慰謝料等(平5択)

 

 

□調整対象給付期間(労災保険給付の支給調整が行われる期間)は、具体的には、次のイ、ロのうち、いずれか短い期間とされる。(平5択)(平9択)

 


イ) 前払一時金(障害及び遺族)の最高限度額相当期間の終了する月から起算して9年が経過するまでの期間


↓ なお…


休業(補償)給付:災害発生日から起算して9年が経過するまでの期間


傷病(補償)年金:支給事由の発生した月の翌月から起算して9年が経過するまでの期間

 

 

ロ) 就労可能年齢(「67歳」(15歳で被災した場合)を基準として年齢ごとに定められている)を超えるに至ったときは、その超えるに至ったときまでの期間

 

↓ なお…


遺族(補償)年金:死亡労働者を生存と仮定した場合の就労可能年齢