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労災保険法(5)-11

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テキスト本文の開始

 

 

 

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□*2「労働基準法の規定による災害補償の価額の限度」とは?

 


例えば、平均賃金3,000円の労働者に対する休業補償給付の額は、最低保障額3,960円を適用した休業給付基礎日額を基礎として計算される。
つまり、支給額は、3,960円×60%=2,376円/1日…a)である。


↓ ところが…


本来、労働基準法による休業補償額の基準(労基法76条)は、「平均賃金」の60%であることから、3,000円×60%=1,800円/1日…b)であり、異なる水準が生ずることとなる。


↓ そこで…


事業主からの費用徴収は、あくまでも、本来事業主が負うべき責任の範囲内(つまり、労働基準法上の責任)を基礎として行われることとし、b)が徴収価額となる。

 

 

□*3「全部又は一部」とは、具体的には、次のとおりである

(平17.9.22基発0922001号)。

 


対象事由

 

徴収額

 

 

イ) 保険関係成立届を提出していない期間(認定決定後の期間を除く)中に生じた事故*4

 

「故意」によるとき:支払の都度、その全額

 

 

「重大な過失」によるとき:支払の都度、その額の40%相当額

 

ロ) 概算保険料のうち一般保険料を納付しない期間(督促状に指定する期限後の期間に限る)中に生じた事故

 

事故発生日から一般保険料を完納した日の前日までに支給事由が生じたものにつき、支払の都度、保険給付額に滞納率*5(上限は40)を乗じて得た額

 


なお、天災事変その他やむを得ない事由により保険料を納付できなかったと認められるときは行われない。

 

 

ハ) 故意又は重大な過失により生じさせた業務災害の原因である事故

 

支払の都度、その額の30%相当額


◆費用徴収の対象となる保険給付

 


イ及びロ

 

休業(補償)給付、傷病(補償)年金、障害(補償)給付、遺族(補償)給付
葬祭料(葬祭給付)

 

 

休業補償給付、傷病補償年金、障害補償給付、遺族補償給付、葬祭料

 

       

↓ なお…


□「傷病補償年金」については、労働基準法の規定による休業補償の価額の限度で、事業主からの費用徴収が行われる。


↓ また…


療養(補償)給付、介護(補償)給付及び二次健康診断等給付は、費用徴収の対象とならない。(これらは、「給付基礎日額」を算定の基礎とする保険給付ではなく、したがって、稼得能力のてん補を目的とした保険給付ではないからである)

 

□イ)~ハ)の場合とも、療養を開始した日(即死の場合は事故発生の日)の翌日から起算して3年以内において支給事由の生じた保険給付(年金給付については、この期間に支給事由が生じ、かつ、この期間に支給すべきもの)に限り、費用徴収の対象となる

 

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advance

 

□*4「故意」と「重大な過失」の判断基準は、次のとおりである

(平17.9.22基発0922001号)。

 


【イの「故意」の認定】 保険関係成立届の提出について行政機関からの指導等を受けたことがあるにもかかわらず、その提出を行っていない事業主について行われる。

 

 

【イの「重大な過失」の認定】 原則として、保険関係成立届の提出について行政機関からの指導等を受けたことがない場合であって、保険関係成立以後1年を経過してなお、その提出を行っていない事業主について行われる。

 

 

□*5「滞納率」とは、その年度に納付すべき概算保険料額に対する事故発生時に滞納しているその年度の概算保険料額の割合である。(平11択)