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労災保険法(5)-7

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3  第三者行為災害-1 (求償・法12条の4第1項)         重要度 ●●
 

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□本来、労災保険制度は、事業主の過失責任の有無を問わずに保険給付を行い、被災労働者の治療やその家族(遺族)を含めた生活の安定を補償することが目的である。


↓ だとするならば…


保険制度の当事者(事業主と労働者)以外の者(第三者)によって引き起こされた事故について、補償対象として保険財源を用いることは妥当でない。
(この場合、労働者は、第三者からの損害賠償によって保護されるべきである)

 

↓ しかし…


□「保険給付」が先行して行われることがある。

 

↓ そこで、政府は…


その支給した給付の価額の限度で、受給権者が有する損害賠償請求権を代位取得し、第三者に対して当該額を請求することとされている

(これを「求償」という)。


↓ 一方で…


□「損害賠償」が先行して行われることもある。


↓ そこで、政府は…


その損害賠償の価額の限度で保険給付をしないことができ(これを「控除」という)。

 

 

↓ なお、いずれの場合も…

 


a)「慰謝料の額」や「物的損害に対する損害賠償の額」は除かれる。


b) 転給の規定による遺族補償年金の受給権者(以下「転給による受給権者」という)に対し、当該年金の給付を行った場合においては、当該転給による受給権者が第三者に対して請求しうる損害賠償額の範囲内において求償が行われる。


c) 転給による受給権者が第三者から損害賠償を受けた場合には、その受けた損害賠償額に相当する額を限度として年金の支給調整が行われる(昭41.6.17基発610号)。

 


条文

 

 

政府は、保険給付の原因である事故が第三者の行為によって生じた場合において、保険給付をしたときは、その給付の価額の限度で、保険給付を受けた者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する。

(平2択)(平12択)(平18択)

 

 

ちょっとアドバイス

 

□「求償期間」は、受給権者が保険給付と同一の事由につき第三者に対して請求しうる損害賠償の額の範囲内において、災害発生後3年以内に支給すべき年金等についてその支払の都度行うこととされている。

 

↓ なお…

 

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災害発生後3年を経過したときは、求償の合計額が損害賠償額に満たない場合であっても、求償は打ち切られる(昭41.6.17基発610号)。(平14択)(平20択)

□次のa)~d)に該当する業務災害については、政府は、代位取得した損害賠償請求権の全部又は一部の行使を差し控えることとされている。

 


a) 同僚労働者の加害行為による災害(平6択)


b) 同一事業主の事業場を異にする労働者の加害行為による災害


c) 同一の作業場内において同時に作業する使用者を異にする労働者の加害行為による災害


d) 下請人の加害行為による災害