前のページへ | 次のページへ | 目次へ

労災保険法(3)-9

仮画像

テキスト本文の開始

 

 

-----------------(94ページ目ここから)------------------

第2節  障害に関する保険給付

 

1  障害補償給付-1 (原則要件・法15条)                  重要度 ●    

   

条文

 

 

1) 障害補償給付は、厚生労働省令で定める障害等級に応じ、障害補償年金又は障害補償一時金とする。

 

2) 障害補償年金又は障害補償一時金の額は、それぞれ、別表第1又は別表第2に規定する額とする。

 

 

ちょっとアドバイス

 

□「障害補償給付」は、傷病が治った場合であって、身体に一定の障害が残ったときに支給されるものであり、障害補償年金と障害補償一時金の2種類がある。 (平2択)(平18択)

 

        ↓ 具体的には…


障害補償給付の額は、次のように決定される(則14条)。

 


【原則】障害補償給付を支給すべき身体障害の障害等級は、別表第1(障害等級表)に定めるところによる(1項)。

 

 

【例外】別表第1に掲げるもの以外の身体障害については、その障害の程度に応じ、同表に掲げる身体障害に準じてその障害等級(別表第2)を定める(4項)。

(平21択)


↓ なお…


障害等級表に定めのない障害状態であっても、定めのある類似の障害に準じて決定される。

 

障害補償年金の額(法別表第1)

 

障害補償一時金の額(法別表第2)

 

障害等級

 

支給額

 

第1級

 

313日分

 

第2級

 

277日分

 

第3級

 

245日分

 

第4級

 

213日分

 

第5級

 

184日分

 

第6級

 

156日分

 

第7級

 

131日分

 

障害等級

 

支給額

 

第 8級

 

503日分

 

第 9級

 

391日分

 

第10級

 

302日分

 

第11級

 

223日分

 

第12級

 

156日分

 

第13級

 

101日分

 

第14級

 

56日分

 

 

【支給額(年額)】=給付基礎日額×支給日数分(平2記)

 

 

advance

 

◆身体障害等級表 (労働基準法施行規則別表第2)

 


等級

 

身体障害(年金)

 

1級

 

1 両眼が失明したもの


2 咀嚼及び言語の機能を廃したもの


3 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し常に介護を要するもの

 

-----------------(95ページ目ここから)------------------

 

4 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し常に介護を要するもの


6 両上肢を肘関節以上で失ったもの


7 両上肢の用を全廃したもの


8 両下肢を膝関節以上で失ったもの


9 両下肢の用を全廃したもの   *注:5号は削除

 

2級

 

1 一眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になったもの


2 両眼の視力が0.02以下になったもの


2の2 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの


2の3 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの


3 両上肢を手関節以上で失ったもの


4 両下肢を足関節以上で失ったもの

 

3級

 

1 一眼が失明し他眼の視力が0.06以下になったもの


2 咀嚼又は言語の機能を廃したもの


3 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し終身労務に服することができないもの


4 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し終身労務に服することができないもの


5 十指を失ったもの

 

4級

 

1 両眼の視力が0.06以下になったもの


2 咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの


3 両耳を全く聾したもの


4 一上肢を肘関節以上で失ったもの


5 一下肢を膝関節以上で失ったもの


6 十指の用を廃したもの


7 両足をリスフラン関節以上で失ったもの

 

5級

 

1 一眼が失明し他眼の視力が0.1以下になったもの


1の2 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し特に軽易な労務の外服することができないもの


1の3 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し特に軽易な労務の外服することができないもの


2 一上肢を腕関節以上で失ったもの


3 一下肢を足関節以上で失ったもの


4 一上肢の用を全廃したもの


5 一下肢の用を全廃したもの


6 十趾を失ったもの

 

6級

 

1 両眼の視力が0.1以下になったもの


2 咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの


3 両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの


3の2 一耳を全く聾し他耳の聴力が40cm以上の距離では尋常の話声を解することができない程度になったもの


4 脊柱に著しい畸形又は運動障害を残すもの

 

-----------------(96ページ目ここから)------------------

 

5 一上肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの


6 一下肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの


7 一手の五指又は拇指を併せ四指を失ったもの

 

7級

 

1 一眼が失明し他眼の視力が0.6以下になったもの


2 両耳の聴力が40cm以上の距離では尋常の話声を解することができない程度になったもの


2の2 一耳を全く聾し他耳の聴力が1m以上の距離では尋常の話声を解することができない程度になったもの


3 神経系統の機能又は精神に障害を残し軽易な労務の外服することができないもの


5 胸腹部臓器の機能に障害を残し軽易な労務の外服することができないもの


6 一手の拇指を併せ三指又は拇指以外の四指を失ったもの


7 一手の五指又は拇指を併せ四指の用を廃したもの
8 一足をリスフラン関節以上で失ったもの


9 一上肢に仮関節を残し著しい障害を残すもの


10 一下肢に仮関節を残し著しい障害を残すもの


11 十趾の用を廃したもの


12 外貌に著しい醜状を残すもの


13 両側の睾丸を失ったもの   *注:4号は削除

 

 

等級

 

身体障害(一時金)

 

8級

 

1 一眼が失明し又は一眼の視力が0.02以下になったもの


2 脊柱に運動障害を残すもの


3 一手の拇指を併せ二指又は拇指以外の三指を失ったもの


4 一手の拇指を併せ三指又は拇指以外の四指の用を廃したもの


5 一下肢を5cm以上短縮したもの


6 一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの


7 一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの


8 一上肢に仮関節を残すもの


9 一下肢に仮関節を残すもの


10 一足の五趾を失ったもの

 

9級

 

1 両眼の視力が0.6以下になったもの


2 一眼の視力が0.06以下になったもの


3 両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの


4 両眼の眼瞼に著しい欠損を残すもの


5 鼻を欠損しその機能に著しい障害を残すもの


6 咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの


6の2 両耳の聴力が1m以上の距離では尋常の話声を解することができない程度になったもの


6の3 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり他耳の聴力が1m以上の距離では尋常の話声を解することが困難である程度になったもの


7 一耳を全く聾したもの

 

-----------------(97ページ目ここから)------------------

 

7の2 神経系統の機能又は精神に障害を残し服することができる労務が相当な程度に制限されるもの


7の3 胸腹部臓器の機能に障害を残し服することができる労務が相当な程度に制限されるもの


8 一手の拇指又は拇指以外の二指を失ったもの


9 一手の拇指を併せ二指又は拇指以外の三指の用を廃したもの


10 一足の第一趾を併せ二趾以上を失ったもの


11 一足の五趾の用を廃したもの


11の2 外貌に相当程度の醜状を残すもの(平23選)


12 生殖器に著しい障害を残すもの

 

10級

 

1 一眼の視力が0.1以下になったもの


1の2 正面視で複視を残すもの


2 咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの


3 十四歯以上に対し歯科補綴を加えたもの


3の2 両耳の聴力が1m以上の距離では尋常の話声を解することが困難である程度になったもの


4 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの


6 一手の拇指又は拇指以外の二指の用を廃したもの


7 一下肢を3cm以上短縮したもの


8 一足の第一趾又は他の四趾を失ったもの


9 一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの


10 一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの  

*注:5号は削除

 

11級

 

1 両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの


2 両眼の眼瞼に著しい運動障害を残すもの


3 一眼の眼瞼に著しい欠損を残すもの


3の2 十歯以上に対し歯科補てつを加えたもの


3の3 両耳の聴力が1m以上の距離では小声を解することができない程度になったもの


4 一耳の聴力が40cm以上の距離では尋常の話声を解することができない程度になったもの


5 脊柱に畸形を残すもの


6 一手の示指、中指又は環指を失ったもの


8 一足の第一趾を併せ二趾以上の用を廃したもの   *注:7号は削除


9 胸腹部臓器の機能に障害を残し労務の遂行に相当な程度の支障があるもの

 

12級

 

1 一眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの


2 一眼の眼瞼に著しい運動障害を残すもの


3 七歯以上に対し歯科補綴を加えたもの


4 一耳の耳殻の大部分を欠損したもの


5 鎖骨、胸骨、肋骨、肩胛骨又は骨盤骨に著しい畸形を残すもの


6 一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの


7 一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの


8 長管骨に畸形を残すもの

 

-----------------(98ページ目ここから)------------------

 

8の2 一手の小指を失ったもの


9 一手の示指、中指又は環指の用を廃したもの


10 一足の第二趾を失ったもの、第二趾を併せ二趾を失ったもの又は第三趾以下の三趾を失ったもの


11 一足の第一趾又は他の四趾の用を廃したもの


12 局部に頑固な神経症状を残すもの


14 外貌に醜状を残すもの   *注:13号は削除

 

13級

 

1 一眼の視力が0.6以下になったもの


2 一眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの


2の2 正面視以外で複視を残すもの


3 両眼の眼瞼の一部に欠損を残し又は睫毛禿を残すもの


3の2 五歯以上に対し歯科補てつを加えたもの


3の3 胸腹部臓器の機能に障害を残すもの


4 一手の小指の用を廃したもの


5 一手の拇指の指骨の一部を失ったもの


8 一下肢を1cm以上短縮したもの


9 一足の第三趾以下の一趾又は二趾を失ったもの


10 一足の第二趾の用を廃したもの、第二趾を併せ二趾の用を廃したもの又は第三趾以下の三趾の用を廃したもの   *注:6号・7号は削除

 

14級

 

1 一眼の眼瞼の一部に欠損を残し又は睫毛禿を残すもの


2 三歯以上に対し歯科補綴を加えたもの


2の2 一耳の聴力が1m以上の距離では小声を解することができない程度になったもの


3 上肢の露出面に手掌面大の醜痕を残すもの


4 下肢の露出面に手掌面大の醜痕を残すもの


6 一手の拇指以外の指骨の一部を失ったもの


7 一手の拇指以外の指の末関節を屈伸することができなくなったもの


8 一足の第三趾以下の一趾又は二趾の用を廃したもの


9 局部に神経症状を残すもの   *注:5号は削除

 

 

【備考】


1 視力の測定は万国式試視力表による。屈折異常のあるものについては矯正視力について測定する。


2 指を失ったものとは拇指は指関節、その他の指は第一指関節以上を失ったものをいう。


3 指の用を廃したものとは、指の末節の半分以上を失い又は掌指関節若しくは第一指関節(拇指にあっては指関節)に著しい運動障害を残すものをいう。


4 趾を失ったものとはその全部を失ったものをいう。


5 趾の用を廃したものとは第一趾は末節の半分以上、その他の趾は末関節以上を失ったもの又は蹠趾関節若しくは第一趾関節(第一趾にあっては趾関節)に著しい運動障害を残すものをいう。

 

 

-----------------(99ページ目ここから)------------------

 

 

2  障害補償給付-2 (併合・則14条2項・3項)            重要度 ●●    

 

outline

 


労働災害における障害状態は、例えば、爆発事故の場合、外部損傷だけでなく内臓破裂などの負傷も重なり、その事故の規模が大きいほど重篤なものとなる。


↓ そこで…


「同一の事故」に関して複数の身体障害を残した場合の障害等級の決定方法を規定しておく必要があり、この仕組みが、併合(2項)及び併合繰上げ(3項)である。

 

 

条文

 

 

2) 別表第1に掲げる身体障害が2以上ある場合には、重い方の身体障害の該当する障害等級による。(平4択)

 

3) 次に掲げる場合には、原則の障害等級をそれぞれの等級だけ繰り上げた障害等級による。(平1択)(平10択)(平12択)(平15択)

 

 

イ) 第13級以上に該当する身体障害が2以上あるときは、1級

 

ロ) 第 8 級以上に該当する身体障害が2以上あるときは、2級(平8記)

 

ハ) 第 5 級以上に該当する身体障害が2以上あるときは、3級(平20択)

 

 

ここで具体例!

 

◆併合及び併合繰上げ(平21択)

 


【原則】2以上の身体障害のうち、重い方の身体障害の障害等級による。

 

 

【繰上げ】第13級以上の身体障害を2以上残した場合は、「重い方」をそれぞれ1級から3級の間で繰り上げる。


↓ 具体的には…

 


a) 第8級、第11級及び第13級の3障害がある場合:第7級(1級繰上げ)


b) 第6級及び第8級の2障害がある場合:第4級(2級繰上げ)


c) 第4級、第5級、第9級及び第12級の4障害がある場合:第1級(3級繰上げ)

 

 

advance

 


上記の規定による障害等級が第8級以下である場合において、各々の身体障害の該当する障害等級に応ずる障害補償給付の額の合算額が上記の規定(併合繰上げ)による障害等級に応ずる障害補償給付の額に満たないときは、その者に支給する障害補償給付は、当該合算額による(3項ただし書)。

 

 

(例)第9級(391日分)及び第13級(101日分)の2障害がある場合、本来ならば第8級(1級繰上げて503日分)となるところ、各々の合算額(391日分+101日分=492日分)が繰上げ後の支給額(503日分)に満たないことから、例外的に当該合算額(492日分)を支給する。 (平5択)