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労災保険法(3)-6

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テキスト本文の開始

 

 

 

ここで具体例!

 

◆「賃金を受けない日」と休業補償給付の額

 


【事例1】給付基礎日額8,000円(日給10,000円程度)の労働者の場合
*なお、「休業特別支給金」とは、社会復帰促進等事業のうち被災労働者等援護事業として保険給付額に加算して支給されるものである。

 

 

(1) 全部労働不能の場合

 


a) 事業主補償を受けていないとき
8,000円×0.6=4,800円(休業補償給付)
8,000円×0.2=1,600円(休業特別支給金) ∴4,800円+1,600円=6,400円

 

b) 仮に、4,000円の事業主補償を受けたとき
休業補償額(4,000円)が給付基礎日額(8,000円)の60%未満であるから、この日は「賃金を受けない日」となる →保険給付の対象となる!
8,000円×0.6=4,800円
8,000円×0.2=1,600円  ∴4,800円+1,600円+4,000円=10,400円

 

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c) 仮に、5,000円の事業主補償を受けたとき
休業補償額(5,000円)が給付基礎日額(8,000円)の60%以上であるから、この日は「賃金を受けない日」とはならない →保険給付の対象とはならない!

 


*実務的にいえば、b)の水準による事業主補償が行われることは極めて稀なケースであって、一般的には、給付基礎日額(8,000円)-給付額(6,400円)=「1,600円」を企業内労災補償額等として支給することで、所得を完全てん補するケースが多い。

 

 

(2) 一部労働不能の場合

 


【事例2】

(1)の労働者が、午前中のみ就労し、日給の半額(5,000円)の賃金を受けた場合

 

 

a) 午後からの不就労部分につき、事業主補償を受けていないとき
8,000円-5,000円=3,000円
3,000円×0.6=1,800円
3,000円×0.2=600円  ∴1,800円+600円=2,400円+(就労分5,000円)


b) 午後からの不就労部分につき、仮に、1,500円の事業主補償を受けたとき
休業補償額(1,500円)が差額(3,000円)の60%未満であるから、不就労部分について「賃金を受けない日」となる →保険給付の対象となる!
3,000円×0.6=1,800円
3,000円×0.2=600円  ∴1,800円+600円+1,500円=3,900円+(5,000円)


c) (1)のc)と同様、差額(3,000円)の60%以上の金額が休業補償されると「賃金を受けない日」とはならない →保険給付の対象とはならない!

 

 

4  休業補償給付-3 (支給制限・法14条の2)              重要度 ●    

   

条文

 

 

労働者が次のイ、ロのいずれかに該当する場合(厚生労働省令で定める場合に限る*1)には、休業補償給付は、行わない。 

 

 

イ) 刑事施設、労役場その他これらに準ずる施設に拘禁されている場合 

 

ロ) 少年院その他これに準ずる施設に収容されている場合

 

 

advance

 

□*1「厚生労働省令で定める場合」とは、次の場合である(則12条の4)。

 


a) 懲役、禁錮若しくは拘留の刑の執行のため若しくは死刑の言渡しを受けて刑事施設(少年院において刑を執行する場合における当該少年院を含む)に拘置されている場合


b) 留置施設に留置されて懲役、禁錮若しくは拘留の刑の執行を受けている場合


c) 労役場留置の言渡しを受けて労役場に留置されている場合


d) 監置の裁判の執行のため監置場に留置されている場合(平1択)


e) 少年法24条の規定による保護処分として少年院若しくは児童自立支援施設に送致され、収容されている場合(平3択)


f) 売春防止法17条の規定による補導処分として婦人補導院に収容されている場合

 

 

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□本規定は、休業給付(通勤災害)について準用される(法22条の2第2項)。(平11択)