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労災保険法(2)-2

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テキスト本文の開始

 

 


□労災保険法の保険給付のうち、金銭補償をすべき場合の支給額の算定基礎に用いられるのが「給付基礎日額」である。


↓ そして…


給付基礎日額は、原則として、「労働基準法の平均賃金」とされる。
(なぜならば、労基法上の使用者責任に係る補償額の基準が「平均賃金」だからである)


↓ つまり…


給付基礎日額とは、労働基準法上の「補償の基準」に相当する(又は対応する)額のことで、基本的な値は平均賃金に等しく、この補償基準額が原則的な「支給の基準」となる額といえる。


↓ 一方で…


□保険法としての実効性(内容)をより高める必要性から、労災保険法独自の算定方法がある(この場合は、平均賃金と給付基礎日額が一致しないことになる)。


↓ 具体的には…

 


a) 所轄労働基準監督署長による算定特例がある。


b) 最低保障額(「自動変更対象額」という)の適用がある。


c) 世間の賃金水準の変動に伴うスライド制の適用がある。


d) 年齢階層別における最低・最高限度額の適用がある。

 

 

◆学習のカテゴリー

 


イ) 給付基礎日額の原則:給付基礎日額の原則的な算定方法


ロ) 休業給付基礎日額:休業(補償)給付の額の算定に用いる基準額のこと


ハ) 年金給付基礎日額:年金たる保険給付の額の算定に用いる基準額のこと


ニ) 一時金の給付基礎日額:一時金たる保険給付の額の算定に用いる基準額のこと
*ロ、ハは、労災保険法上の「支給の基準」となる額のことで、原則的には給付基礎日額を基本とするが、上記a)~d)に従って見直しされ修正が図られる

 

 

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2  給付基礎日額の原則 (法8条)                         重要度 ●●●    


条文

 

 

1) 給付基礎日額は、労働基準法第12条の平均賃金に相当する額*1とする。この場合において、平均賃金を算定すべき事由の発生した日は、負傷若しくは死亡の原因である事故が発生した日又は診断によって疾病の発生が確定した日(以下「算定事由発生日」という)とする。

(平1択)(平8択)(平15択)(平19択)(平21択)

 

2) 労働基準法第12条の平均賃金に相当する額を給付基礎日額とすることが適当でないと認められるときは、前項の規定にかかわらず、厚生労働省令で定めるところによって政府が算定する額*2を給付基礎日額とする。(平12択)

 

 

ここをチェック

 

□*1「平均賃金に相当する額(原則額)」は、次の計算により求められる。

 

 

↓なお…

 

次の場合、労働基準法と同様の例外規定が適用される。(平11択)

 


a) 算定事由発生日以前3箇月間に、業務上の傷病による休業期間や産前産後の休業期間等(労働基準法12条3項各号)に該当する期間がある場合は、算定期間中の総日数及び賃金総額について一部除外する規定。


b) 日給、時間給、出来高払制の場合の算定方法(賃金総額を労働日数で除する方法)の規定。

 

 

□*2「政府が算定する額」とは、具体的には、所轄労働基準監督署長が次に定める方法によって算定する(則9条1項1号~5号)。(平15択)(平21択)

 


イ) 平均賃金(労働基準法12条)の算定期間中に「業務外の事由」による負傷又は疾病の療養のために休業した労働者の平均賃金相当額が、当該休業した期間を「業務上の事由」による休業期間とみなして算定することとした場合における平均賃金相当額に満たない場合には、その算定することとした場合における平均賃金相当額とする。(平1択)
(つまり、原則額か、業務外の事由による休業期間を考慮したときの平均賃金相当額かのいずれか高い方の額が、給付基礎日額となる)

 

 

ロ) じん肺にかかったことにより保険給付を受けることとなった労働者の平均賃金相当額が、じん肺にかかったため「粉じん作業以外」の作業に常時従事することとなった日を平均賃金の算定事由発生日とみなして算定することとした場合における平均賃金相当額に満たない場合には、その算定することとした場合における平均賃金相当額とする。
(つまり、原則額か、配置転換によって粉じん作業以外の作業に従事することとなった際の平均賃金相当額かのいずれか高い方の額が、給付基礎日額となる)