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労災保険法(1)-14

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テキスト本文の開始

 

 

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(4) 合理的な経路 <通常利用することが考えられる経路>

 


OK

 

a) 乗車定期券に表示され、又は、会社に届け出ているような、公共交通機関等の通常利用する経路及び通常これに代替することが考えられる経路。


b) タクシー、マイカーを利用する場合等に、通常利用することが考えられる経路がいくつかあるような場合

(その経路は、いずれも合理的な経路となる)。


c) 通常通勤している経路が、道路工事、デモ行進等の経路に当たっている場合など当日の交通事情により通常の経路を迂回してとる経路。


d) マイカー通勤者が貸切の車庫を経由して通る経路。


e) 他に子供を看護する者がいない共働き労働者などが、託児所、親戚宅等に子供を預けるためにとる経路 etc.

 

NG

 

a) 特段の合理的な理由もなく著しく遠回りとなるような経路をとる場合。


b) 鉄道線路、鉄橋、トンネル等を歩行して通る場合 etc.

 

 

(5) 合理的な方法 <一般的に常識的な方法>

 


OK

 

a) 公共交通機関を利用し、自動車、自転車等を本来の用法に従って使用する場合、徒歩の場合等通常用いられる交通方法(一般に合理的な方法であれば、その労働者が平常利用又は使用している方法であるか否かを問わない)。

 

NG

 

a) 免許を一度も取得したことのない者が自動車を運転(無免許運転)する場合。


b) 自動車、自転車等を泥酔して運転する場合 etc.(平11択)

 

       

↓ ただし…

 

□次のような場合は、必ずしも合理性を欠くものとして取扱う必要はない(ただし、諸事情を勘案し、「給付制限」が行われることはある)。

 


a) 軽い飲酒運転の場合。


b) 単なる免許証不携帯の場合。(平11択)


c) 免許証の更新忘れによる無免許運転の場合 etc.

 

 

(6) 業務の性質を有するもの <業務災害として判断できるもの>

 

□業務災害の「通勤途上」に該当する場合は、「通勤」の要件を満たす移動上で生じた事故であっても、業務災害として保険給付を受けることができるため、当該移動は、通勤の範囲から除かれている。

 

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3  逸脱又は中断 (法7条3項)                           重要度 ●●●    


 

条文

 


労働者が、前項各号に掲げる移動の経路を逸脱し、又は同項各号に掲げる移動を中断した場合においては、当該逸脱又は中断の間及びその後の同項各号に掲げる移動は、第1項2号の通勤としない。ただし、当該逸脱又は中断が、日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるもの*1をやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、当該逸脱又は中断の間を除き、この限りでない。 (平18択)(平1記)(平9記)(平16選)

 

 

outline

 


□通勤途中で「逸脱(本来の合理的な経路からはずれること)」し、又は「中断(通勤の経路上であれ、通勤本来の行為をしないこと)」したときは、その時点において、通勤行為は終了する。
(つまり、逸脱・中断中はもちろん、その後の移動も通勤としない →3項本文)

 

↓ しかし…


□暑い夏の夕暮れ、経路上の自動販売機でジュースを買うこともあれば、木かげでちょっと休憩したいときもある。


↓ そこで…


通勤途中においてありがちなささいな行為*2は、逸脱・中断とはしない。
(つまり、ささいな行為中を含めて通勤となる


↓ また…


□会社帰りに近くのスーパーで晩ご飯を買ったり美容院に立ち寄ったりすることも、日常生活においてはごく自然な行動パターンである。(平13択)


↓ そこで…


日常生活上必要な行為をやむを得ない事由により最小限度の範囲で行う場合には、逸脱・中断の間を除き、通常の経路に戻った後は通勤とする。→3項但し書

(平11択)(平23択)

 

 

ここで具体例!

 


認められる例

 

 

認められない例

 

 

 

 

 

【認められなかった事例】(平6択)


被災労働者は、当日の午後5時までの所定の勤務を終えて、バスで帰宅するため、午後5時10分頃退社する際、親しい同僚と一緒になったので、お互いよく利用している会社の隣りの喫茶店に寄ってコーヒーを飲みながら雑談し、40分程度過ごした後、同僚の乗用車で合理的な経路を自宅まで送られ、車を降りようとした際に、乗用車に追突され負傷した(昭49.11.15基収1867号)。