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労働基準法(6)-12

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6  年次有給休暇の計画的付与 (法39条6項)             重要度●●●

 

条文

 


使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定(「計画年休協定」という)により、第1項から第3項までの規定による有給休暇を与える時季に関する定め*1をしたときは、これらの規定による有給休暇の日数のうち5日を超える部分*2については、前項の規定にかかわらず、その定めにより有給休暇を与えることができる。(平4択)

 

 

ここをチェック

 

□*1「有給休暇を与える時季に関する定め」をすることにより年次有給休暇を与える場合(事業場全体の一斉付与、年間計画表による個人別付与等)は、労使協定で定めるところによって付与されることとなり、この年次有給休暇については、労働者の時季指定権及び使用者の時季変更権ともに行使できない(昭63.3.14基発150号)。(平5択)(平6択)(平8択)(平15択)(平20択)(平22択)

 

□*2「5日を超える部分」とは、年次有給休暇の日数のうち、個人的事由による取得のために留保される「5日」を超える部分について認められる(昭63.1.1基発1号)。

 

↓ また…

 

この部分には、前年度から繰り越された日数がある場合には、当該繰越分も含む(昭63.3.14基発150号)。(平5択)(平17択)

 

↓ なお…

 

年休権を有しない又は5日を超える日数の年休を有さない労働者については、特別に年休権を付与するか、特別の休暇を与えることが望ましいが、これを与えないときは、当該休暇期間中を休業手当によって金銭補償しなければならない。

 

□派遣労働者について、計画年休協定を締結する義務を負うのは、派遣元の使用者である(労働者派遣法44条2項)。

 

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ちょっとアドバイス

 

(1) 民事的拘束力

 

□年次有給休暇の計画的付与に係る労使協定については、免罰的効力のみならず、労働者に対する直接的拘束力が認められる

 

↓ したがって…

 


労働者の「個別同意」や労働協約、就業規則等の「定め」を必要とせず、計画年休自体の民事的効力(労働者の時季指定権及び使用者の時季変更権の行使ができないこととし、労使協定によって年休日の特定をなし得ること)が認められる。(平17択)
なぜならば、計画年休の締結そのものが労働者に対し不利益を与えることは、一般的に考えにくいからである(三菱重工業長崎造船所事件・平6.3.24福岡高裁判決)。

 

 

(2) 育児休業期間中における時季指定権の効力

 

□育児休業申出前に育児休業期間中の日について時季指定や労使協定に基づく計画的付与が行われた場合には、当該日には年次有給休暇を取得したものと解され、当該日に係る賃金支払日については、使用者に所要の賃金支払の義務が生ずる(平3.12.20基発712号)。(平9択)(平17択)

 


【具体例】計画年休協定として、4月1日に締結されていた場合

 

 

↓ この場合…

 

□労働者の時季指定権及び使用者の時季変更権の消滅により、年次休暇の取得(3日間)が確定する(労働義務のない期間であっても年次有給休暇として有効となる)。