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労働基準法(6)-7

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第8節  年次有給休暇

 

1  年次有給休暇の付与要件 (法39条1項)               重要度●●●

 

条文

 


使用者は、その雇入れの日から起算して6箇月間継続勤務し*1全労働日*2の8割以上出勤した労働者*3に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない。

 

 

ここをチェック

 

□「休暇」とは、労働義務のある日について、労働者が一定の手続きをすることにより、その労働義務が免除されることをいう。(*「休日」とは、労働契約上あらかじめ労働義務がないものとされている日のことをいう)

 

□*1「継続勤務」とは、「出勤」の意味ではなく、休職期間や欠勤期間を含んだ労働契約上の在籍期間のことで、継続勤務であるか否かの判断は、その勤務の実態を実質的に判断する。(平1択)(平20択)

 

↓ 具体的には…

 


該当する

 

□在籍出向者の出向元における勤務期間と出向先における勤務期間

 

□定年退職者を嘱託社員等として引き続き再雇用している場合(退職手当の支給の有無を問わない)

 

□有期労働契約者との雇用契約を更新し、又はパートタイマ一等を正社員として、引き続き使用する場合

 

□臨時雇いの者が一定月ごとに労働契約を更新し6月以上に至って引き続き使用されていると認められる期間

 

□全員を解雇し退職手当を支給したが、その後改めてその一部を採用し、従前とほとんど変わらず事業を継続している場合

 

該当

しない

 

□移籍出向者の出向元の勤務期間と出向先の勤務期間

 

□紹介予定派遣の派遣労働者が、紹介により派遣先に雇用された場合における派遣元の勤務期間と派遣先に雇用された後の勤務期間(平18択)

 


いずれの場合も、年次有給休暇を付与すべき使用者に、その雇用期間を通して使用されていないからである。

 

 

□*2「全労働日」とは、労働協約、就業規則等において、労働者の出勤が予定され就業すべきものと定められている日であって、労働契約上「労働義務のある日」のことである(昭63.3.14基発150号)。

 

↓ 具体的には…

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該当する

 

□一般には、6箇月(又は1年ごとに区分した各期間)の総暦日から所定の休日を除いた日のこと(平19択)

 

該当しない

 

所定休日に労働した日(平4択)(平14択)

 

使用者の責に帰すべき事由による休業日(平14択)(平17択)

 

正当な争議行為により労務の提供が全くなされなかった日

(平5択)

 

□法37条3項による代替休暇を取得して終日出勤しなかった日

 

 

□*3「8割以上出勤」とは、出勤率によって判断する。

 


□継続勤務した直近の6箇月間(それを超えると1年間)の労働日数に対する出勤した日数の割合である。

 

     

   ↓ なお…

 

「出勤したものとみなされる日」とは、次のとおりである(法39条8項)。

(平12択)(平17択)(平19択)

 

 

a) 業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業した期間

 

b) 育児介護休業法の規定による育児休業又は介護休業をした期間(平8択)

 

c) 産前産後の女性が法65条の規定によって休業した期間(実際の出産日が出産予定日より遅れたことにより産前6週間を超えた期間も含まれる)

(平4択)(平6択)(平18択)

 

d) 年次有給休暇を取得した日(昭22.9.13発基17号)

 

 

判例チェック

 

◇年休権vs請求行為◇

 


「与えなければならない」とは、その実際は、労働者自身が休暇をとることによってはじめて、休暇の付与が実現されることになるのであって、たとえば有体物の給付のように、債務者自身の積極的行為が「与える」行為に該当するわけではなく、休暇の付与義務者たる使用者に要求されるのは、労働者がその権利として有する有給休暇を享受することを妨げてはならないという不作為を基本的内容とする義務にほかならない。

 

↓ なお…

 


年次有給休暇の権利は、法定要件が充足されることによって法律上当然に労働者に生ずる権利であって、労働者の請求をまってはじめて生ずるものではない(白石営林署事件・昭48.3.2最高裁第2小)。(平20択)(平22択)