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労働基準法(6)-1

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3  みなし労働時間制-2 (事業場外労働・法38条の2)     重要度●●  

 

条文

 


1) 労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす*1。ただし、当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合においては、当該業務に関しては、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす*2。(平2択)(平3択)(平5択)(平18択)(平12選)


2) 前項ただし書の場合において、当該業務に関し、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定*3があるときは、その協定で定める時間を同項ただし書の当該業務の遂行に通常必要とされる時間とする。(平18択)

 

 

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【原則】A社において、例えば「出張業務」の遂行は、通常、所定労働時間を超えない業務であると考えられているとする。

 

↓ この場合…

 

当該業務は、所定労働時間労働したものとみなす(1項本文)。

 

↓ ところが…

 

【例外】A社において、例えば「セールス業務」の遂行は、通常、所定労働時間を超える業務であると考えられているとする。

 

↓ この場合は…

 

特約により、通常必要とされる時間労働したものとみなす(1項但し書)。

 

↓ なお…

 

□原則の「所定労働時間」や例外の「通常必要とされる時間」は、あらかじめ、使用者が就業規則等に定めておくこととなるが…。

 

↓ あえて…

 

この労働時間数を労使間協議において取り決めた場合は、当該労使協定に定めた時間労働したものとみなす(2項)。

 

 

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ここをチェック

 

(1) 所定労働時間労働したものとみなす (1項本文)


□*1「みなし労働時間」の適否は、次のとおりである(昭63.1.1基発1号)。

 


適用される

 

□労働時間の一部について事業場外で業務に従事し、事業場外における労働時間の算定が困難な場合には、その日は事業場内で業務に従事した時間を含めて、全体として所定労働時間労働したものとみなされる

 

 

□原則として、次に掲げる要件を満たす形態で行われるような在宅勤務(労働者が自宅で情報通信機器を用いて行う勤務形態をいう)(平20.7.28基発0728002号)(平22択)

 


a) 当該業務が、起居寝食等私生活を営む自宅で行われること。

 

b) 当該情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと。

 

c) 当該業務が、随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていないこと。

 

適用されない

 

□事業場外で業務に従事する場合であっても、使用者の具体的な指揮監督が及んでいる場合(労働時間の算定が可能であるため

 


a) 事業場外労働に従事するメンバ一の中に労働時間を管理する者がいる場合。

 

b) 無線等により随時使用者の指示を受けながら労働している場合。


c) 事業場において、当日の業務の具体的指示を受けたのち、事業場外で指示通りに業務に従事し、その後事業場に戻る場合。

 

 

(2) 通常必要とされる時間労働したものとみなす (1項但し書)

 

□*2 労働時間の一部について事業場外で業務に従事した場合には、事業場外における業務に関してのみ、みなし労働時間制の適用があることから、事業場内で業務に従事した時間は別途把握しなければならない

 

↓ したがって…

 


その日は、「事業場内の労働時間」と事業場外で従事した業務に係る「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」とを加えた時間労働したこととなる

(昭63.3.14基発150号)。

 

 

(3) 労使協定に定めた時間労働したものとみなす (2項)

 

□*3「労使協定」において定めるのは事業場外で従事した業務に係る「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」であり、労働時間の一部について事業場外で業務に従事した場合には、「事業場内の労働時間」と事業場外で従事した業務に係る「労使協定で定める時間」とを加えた時間労働したこととなる

(昭63.3.14基発150号)。(平6択)

 

↓ なお…

 

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□労使協定は、当該協定で定める時間が法定労働時間を超える場合には、行政官庁(所轄労働基準監督署長)に届け出なければならない(則24条の2第3項)。

(平11択)

 

↓ また…

 

□当該協定については、労働協約である場合を除き、有効期間を定めることとされている(則24条の2第2項)。(平8択)

 

ちょっとアドバイス

 

□派遣労働者を派遣先において事業場外のみなし労働時間制の下で労働させる場合であって、当該業務の遂行に通常必要とされる時間を労使協定で定めるときは、派遣元事業場の使用者が、労使協定により所要の事項を定める必要がある(労働者派遣法44条2項)。