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労働基準法(4)-6

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テキスト本文の開始

 

 

 

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(2) 導入の効果について

 

ちょっとアドバイス

 

◆36協定の範囲

 

□フレックスタイム制を採用した場合に時間外労働となるのは、清算期間における法定労働時間の総枠を超えた時間である。

 

↓ したがって…

 

36協定についても、1日について延長することができる時間を協定する必要はなく、清算期間を通算して時間外労働をすることができる時間を協定すればよい(平11.3.31基発168号)。(平11択)

 

↓ なお…

 

□使用者は、フレックスタイム制の下であっても、各労働日における労働時間を把握しなければならない。(平17択)

 

advance

 

◆貸時間と借時間

 

□フレックスタイム制の下で、実際に労働した時間が清算期間における総労働時間として定められた時間に比べて過不足が生じた場合において、労働時間及び賃金の清算を次の清算期間に繰り越すことの可否については、次のように解される(昭63.1.1基発1号)。

 


a) 清算期間における実際の労働時間に過剰があった場合において、総労働時間として定められた時間分はその期間の賃金支払日に支払うが、それを超えて労働した時間分を次の清算期間中の総労働時間の一部に充当することは、その清算期間内における労働の対価の一部がその期間の賃金支払日に支払われないこととなり、法24条の賃金の全額払の原則に違反し、許されない。 (平7択)

 

 

b) 清算期間における実際の労働時間に不足があった場合において、総労働時間として定められた時間分の賃金はその期間の賃金支払日に支払うが、それに達しない時間分を次の清算期間中の総労働時間に上積みして労働させることは、法定労働時間の総枠の範囲内である限り、その清算期間においては実際の労働時間に対する賃金よりも多く賃金を支払い、次の清算期間でその分の賃金の過払を清算するものと考えられ、法24条に違反するものではない。

 

      

  ↓ 具体的には…

 


清算期間中の総労働時間

 

実際の労働時間

貸借関係

 

3月の労働時間
(所定170時間)

可否

160時間
(2月)

Aさん:165時間

超過分5時間を
翌月に充当

 

【貸時間】
最終的に165時間労働

 

×

Bさん:155時間

不足分5時間を
翌月に上積み

 

【借時間】
最終的に175時間労働

 

暦日数31日の月の法定総労働時間の限度:40h×31/7≒177.1h

 

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4  1年単位の変形労働時間制 (法32条の4第1項)       重要度●●  

 

条文

 


使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定*1により、次に掲げる事項を定めたときは、第32条の規定にかかわらず、その協定でロ)の対象期間として定められた期間を平均し1週間当たりの労働時間が40時間を超えない範囲内において、当該協定で定めるところにより、特定された週において同条第1項の労働時間(40時間)又は特定された日において同条第2項の労働時間(8時間)を超えて、労働させることができる。

 


イ) この条の規定による労働時間により労働させることができることとされる労働者の範囲

 

ロ) 対象期間(その期間を平均し1週間当たりの労働時間が40時間を超えない範囲内において労働させる期間をいい、1箇月を超え1年以内の期間に限るものとする)

 

ハ) 特定期間*2(対象期間中の特に業務が繁忙な期間をいう)

 

ニ) 対象期間における労働日及び当該労働日ごとの労働時間(対象期間を1箇月以上の期間ごとに区分することとした場合*3においては、当該区分による各期間のうち当該対象期間の初日の属する期間(以下「最初の期間」という)における労働日及び当該労働日ごとの労働時間並びに当該最初の期間を除く各期間における労働日数及び総労働時間)

 

ホ) その他厚生労働省令で定める事項

 

 

 

ここで具体例!

 

◆1年単位変形制をイメージしよう!

 


(例)4月から翌年3月までの1年間を対象期間とする

 

 

□原則として、あらかじめ、労働日及び当該労働日ごとの労働時間を決定するが、例外として、第1四半期のみそれを決定し、第2四半期以降については各期間における労働日数及び総労働時間だけを協定しておき、その後、所定の手続きを経て「労働日及び当該労働日ごとの労働時間」を順次決定するという方法も認められる。

 

↓ なお…

 

□「対象期間」を1年間とした場合

 


a) 労働日数は、年間280日が限度となる。

 

b) 総労働時間は、通算2,085.7時間(40h×365/7≒2,085.7h)が限度となる。