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労働基準法(3)-12

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判例チェック


◇使用者の債権vs労働者の債権◇

 


労働者がその自由な意思に基づき賃金債権と使用者が労働者に対して有する債権との相殺に同意した場合においては、右同意が労働者の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときは、右同意を得てした相殺は全額払の原則に違反するものとはいえない(日新製鋼事件・平2.11.26最高裁第2小)。(平18択)

 

 

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◇賃金債権vs債権放棄◇

 


退職手当は、その支給条件が就業規則等によって明確にされている限りは賃金であり、法24条の適用があるが、しかし、本条の「全額払の原則は、労働者が退職に際し自ら退職金債権を放棄する旨の意思表示の効力を否定する趣旨ではなく、それが労働者の自由な意思に基づくものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときは、有効である」と解されている(シンガー・ソーイング・メシーン事件・昭48.1.19最高裁第2小)。(平22択)

 

 

◇全額払の原則vs24協定の効力◇

 


□労働基準法24条1項ただし書の要件を具備するチェック・オフ協定の締結は、これにより、右協定に基づく使用者のチェック・オフが同項本文所定の賃金全額払の原則の例外とされ、同法120条1号所定の罰則の適用を受けないという効力を有するに過ぎない

 

↓ したがって…

 

当然に使用者がチェック・オフをする権限を取得するものではないことはもとより、組合員がチェック・オフを受忍すべき義務を負うものではない(エッソ石油事件・平5.3.25最高裁第1小)。(平17択)

 


【解説】 24協定が締結された場合において、チェック・オフ制度(賃金からの労働組合費の控除)の導入は可能となるが、この場合、個々の労働者の同意はいらないのだろうか?(つまり、包括的同意だけでよいのか?)

 

↓ そこで判例は…

 

24協定の締結による効力は、使用者が当然にチェック・オフを行う権限を取得し、労働者がこれを受忍する義務を負うわけではなく、罰則(法120条1号)の適用を排除するにとどまる(免罰的効力を認めるに過ぎない)。したがって、個々の労働者の同意が必要となる!

 

 

◇全額払の原則vs過払い調整◇

 


適正な賃金の額を支払うための手段たる相殺は、労働基準法24条1項ただし書によって除外される場合にあたらなくとも、その行使の時期(前月分を翌月分で調整する程度)、方法(賃金からの控除)、金額(日常生活に支障をきたさない程度)等からみて労働者の経済生活の安定との関係上不当と認められないものであれば同項の禁止するところではない(福島県教組事件・昭44.12.18最高裁第1小ほか)。(平12択)(平17択)(平21選)