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労働基準法(3)-9

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第 3 章

賃  金

第1節  賃金の支払    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・82
第2節  休業手当及び賃金額の保障    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・96

 

 

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第1節  賃金の支払

 

1  賃金支払の5原則-1 (通貨・直接・全額:法24条1項) 重要度●●●

 

条文

 


賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。

 

 

(1)「通貨払の原則」について

 

ここをチェック

 

原則

 

賃金は、「通貨」で支払わなければならない。

 

例外

 

イ) 法令に別段の定めがある場合(現在、特段の定めなし)

 

ロ) 労働協約*1に別段の定めがある場合

(平3択)(平4択)(平6択)(平14択)(平20択)(平21択)

 

 

(例)通勤定期券(昭33.2.13基発90号)(平2択)、住宅供与などの利益 etc.

 

 

ハ) 厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合(則7条の2)

 

↓ 具体的には…

 

労働者の同意を得た場合*2には、賃金の支払について次の方法によることができる。(平6択)

 

 

<通常の賃金(退職手当を含む)>


□労働者が指定する銀行その他の金融機関に対する当該労働者の預金又は貯金への振込み*3(平2択)(平5択)(平13択)(平20択)

 

□労働者が指定する金融商品取引業者に対する当該労働者の預り金

(一定のものに限る)への払込み(平11択)

 

 

<退職手当のみ>

 

□金融機関を支払人とする小切手の交付、金融機関が支払保証した小切手の交付

 

□郵便為替の交付

 

 

 

ちょっとアドバイス

 

□*1 労働協約の定めによって通貨以外のもので支払うことが許されるのは、その労働協約の適用を受ける労働者に限られる(昭63.3.14基発150号)。

(平12択)

 

 

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□*2「労働者の同意」については、必ず個々の労働者の同意を得なければならない。

 

↓ なお…

 

同意の確認方法については、労働者の意思に基づくものである限り、その形式を問わない(昭63.1.1基発1号)。(平9択)

 

□*3「指定する金融機関に対する振込み」については、次のとおりである

(昭63.1.1基発1号)。

 


a)「指定」とは、労働者が賃金の振込み対象として銀行その他の金融機関に対する当該労働者本人名義の預貯金口座を指定するとの意味であって、この指定が行われれば特段の事情のない限り労働者の同意が得られているものと解される。

 

b)「振込み」とは、振り込まれた賃金の全額が所定の賃金支払日に払い出し得るように行われることを要する。

 

 

(2)「直接払の原則」について

 

ここをチェック

 

原則

 

賃金は、「直接」労働者に支払わなければならない。

 

例外

 

イ) 通貨払の例外ハ)の場合(平5択)(平6択)

 

ロ) 使者に対して支払う場合*4

 


□労働者の親権者その他の法定代理人に支払うこと、労働者の委任を受けた任意代理人に支払うことは、いずれも法24条違反となり、労働者が第三者に賃金受領権限を与えようとする委任、代理等の法律行為は無効である(昭63.3.14基発150号)。
(平9択)(平20択)(平21択)

 

 

ハ) 国税徴収法又は民事執行法に基づいて差し押さえられた場合、法律の範囲内(賃金債権の1/4が限度とされる)で労働者以外の者に支払うことは禁止されていない。