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労働基準法(7)-13

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◇使用者の利益vs労働者の不利益◇

 


「就業規則の条項が合理的なもの」であるとは、当該就業規則の作成又は変更が、その必要性及び内容の両面からみて、それによって労働者が被ることになる不利益の程度を考慮しても、なお当該労使関係における当該就業規則の条項の法的規範性を是認することができるだけの合理性を有するものであることをいい、特に、賃金、退職金など労働者にとって重要な権利、労働条件に関し実質的な不利益を及ぼす就業規則の作成又は変更については、当該条項が、そのような不利益を労働者に法的に受忍させることを許容することができるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものである場合において、その効力を生ずるものというべきである。


↓ そして…


この「合理性の有無」は、具体的には、就業規則の変更によって労働者が被る不利益の程度、使用者側の変更の必要性の内容・程度、変更後の就業規則の内容自体の相当性、代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況、労働組合等との交渉の経緯、他の労働組合又は他の従業員の対応、同種事項に関するわが国社会における一般的状況等を総合考慮して判断すべきである(第四銀行事件・平9.2.28最高裁第2小、大曲市農業協同組合事件・昭63.2.16最高裁第3小ほか)。

 

 

◇合理的内容vs個別的同意◇

 


労働条件を定型的に定めた就業規則は、一種の社会的規範としての性質を有するだけでなく、その定めが合理的なものである限り、個別的労働契約における労働条件の決定は、その就業規則によるという事実たる慣習が成立しているものとして、法的規範としての性質を認められるに至っており、当該事業場の労働者は、就業規則の存在及び内容を現実に知っていると否とにかかわらず、また、これに対して個別的に同意を与えたかどうかを問わず、当然にその適用を受けるというべきであるから、使用者が当該具体的労働契約上いかなる事項について業務命令を発することができるかという点についても、関連する就業規則の規定内容が合理的なものである限りにおいてそれが当該労働契約の内容となっているということを前提として検討すべきこととなる。


↓ 換言すれば…


就業規則が労働者に対し、一定の事項につき使用者の業務命令に服従すべき旨を定めているときは、そのような就業規則の規定内容が合理的なものである限りにおいて当該具体的労働契約の内容をなしているものということができる(電電公社帯広局事件・昭61.3.13最高裁第1小)。(平17択)

 

 

◇法的規範vs周知義務◇

 


就業規則が法的規範としての性質を有するものとして、拘束力を生ずるためには、その内容を適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていることを要するものというべきである(フジ興産事件・平15.10.10最高裁第2小)。

(平17択)

 

 

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◇就業規則vs 36協定◇

 


時間外労働につき、使用者が、いわゆる36協定を締結し、これを所轄労働基準監督署長に届け出た場合において、使用者が当該事業場に適用される就業規則に当該36協定の範囲内で一定の業務上の事由があれば労働契約に定める労働時間を延長して労働者を労働させることかできる旨定めているとき。


↓ 当該就業規則の効力は…


その内容が合理的なものである限り、それが具体的労働契約の内容をなすから、当該就業規則の規定の適用を受ける労働者は、その定めるところに従い、労働契約に定める労働時間を超えて労働をする義務を負うものと解するのを相当とする(日立製作所武蔵工場事件・平3.11.28最高裁第1小)。

(平18択)(平20選)