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労働基準法(7)-11

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第2節  制裁規定の制限

 

1  制裁規定の制限 (法91条)                           重要度 ●●●

 

条文

 


就業規則*1で、労働者に対して減給の制裁*2を定める場合においては、その減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない。

(平4択)(平6択)(平20択)(平7記)

 

 

ここをチェック

 

□*1 本条の「就業規則」とは、法89条、法90条と異なり、「就業規則一般」をいう。


↓ したがって…


常時10人未満の労働者を使用する使用者が作成した社内規定等についても、本条は適用される。(平2択)(平16択)

 

□*2「減給の制裁」とは、労働者に対する懲戒処分(戒告、減給、出勤停止、懲戒解雇etc.)のうち、制裁として、本来であればその労働者が受けるべき賃金の額から一定額を差し引くことをいう。

 

◆減給の範囲 (昭23.9.20基収1789号)

 


□「1回の額が平均賃金の1日分の半額」とは?

 

 

1回の事案に対する減給総額が、平均賃金の1日分の半額以内でなければならないということである。(平2択)

 

 

□「総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1」とは?

 

 

1賃金支払期に発生した数事案に対する減給総額が、当該賃金支払期における賃金総額の10分の1以内でなければならないということである。

(平2択)(平14択)(平16択)


↓ なお…


この場合の「賃金の総額」とは、「当該賃金支払期について現実に支払われる賃金の総額」をいう(昭25.9.8基収1338号)。(平5択)

 


(例)1賃金支払期における賃金の総額が、欠勤等のために少額となったときは、その少額となった賃金の総額を基礎として計算する。

 

      

  ↓ また…

 

10分の1を超えて減給の制裁を行う必要が生じた場合は、その部分の減給については、次期の賃金支払期に延ばして行うこととなる。(平16択)

 

 

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ちょっとアドバイス

 

□減給の制裁に該当するか否かは、次のとおりである。

 


該当する

 

遅刻、早退の時間に対する賃金額を超える減給は制裁とみなされ、制裁に関する規定の適用を受ける(昭63.3.14基発150号)。

(平2択)(平14択)


□「賞与」も賃金であるから、制裁として賞与から減額することは、減給の制裁に当たる(昭63.3.14基発150号)。


□制裁による「降給」の処分が、従前の職務に従事せしめつつ賃金額のみを減ずるものであるときは、通常の労働の対価としての賃金を継続的に一定額減給するものであるから、減給の制裁に当たる

(昭37.9.6基発917号)。

 

該当しない

 

□遅刻、早退又は欠勤に対して労働の提供のなかった時間に相当する賃金だけを差し引くことは、そのような賃金制度のもとにおけるひとつの賃金計算方法であって、制裁としての減給には当たらない。


□就業規則において「懲戒処分を受けた場合には昇給させない」という昇給の欠格条項を定めた場合であっても、減給の制裁には当たらない

(昭26.3.31基収938号)。(平2択)


□制裁としての「出勤停止」により、その出勤停止中の賃金の支払を受けることができないことは、制裁としての当然の結果であって、通常の額以下の賃金を支給することを定める本条の減給の制裁には当たらない(昭23.7.3基収2177号)。 (平11択)(平16択)