前のページへ | 次のページへ | 目次へ

労働基準法(7)-10

仮画像

テキスト本文の開始

 

 

 

ちょっとアドバイス

 

□*1「作成する」場合において、事業場の労働者の一部について、別個の就業規則を作成するときは、当該2以上の規則を合わせたものが法89条の就業規則となるのであって、それぞれが単独で同条の就業規則となるものではない

(平11.3.31基発168号)。 (平21択)

 

 

(例)本則規定とは別に「パートタイム就業規則」や「給与規定」を作成したときetc.

 

↓ なお…


就業規則の届出は、使用者は、常時10人以上の労働者を使用するに至った場合においては、遅滞なく、法89条の規定による就業規則の届出を所轄労働基準監督署長にしなければならない(則49条1項)。

 

 

□法41条(労働時間、休憩及び休日に関する適用除外)の規定に該当する者であっても、法89条は適用されるから、これらに該当する者の「始業及び終業の時刻」を記載する必要がある(昭23.12.25基収4281号)。(平6択)

 

□派遣労働者について、労働基準法89条により就業規則の作成義務を負うのは、派遣労働者とそれ以外の労働者とを合わせて常時10人以上の労働者を使用する派遣元使用者である(昭61.6.6基発333号)。(平14択)

 

-----------------(250ページ目ここから)------------------

 

□絶対的必要記載事項の「休暇」には、育児介護休業法に規定する育児休業・介護休業及び子の看護休暇制度が含まれるから、これらの事項については、就業規則に記載する必要がある(平11.3.31基発168号)。(平8択)

 

□退職手当について不支給事由又は減額事由を設ける場合には、これらは退職手当の決定及び計算の方法に関する事項に該当するため、就業規則に記載する必要がある(平11.3.31基発168号)。(平8択)

 

advance

 

□就業規則が、その絶対的必要記載事項の一部又はその事業場が適用を受けるべき相対的必要記載事項を欠くものであっても、その効力の発生についての他の要件を具備する限り有効である。ただし、このような就業規則を作成して届出をしたとすれば、法89条違反の責は免れない(平1.3.31基発168号)。

 


a) 原則的には、届出は受理されない。


b) 使用者は作成義務違反で処罰される。→法120条1号

 

   

 ↓ これは…

 

就業規則の届出義務は、「行政監督的」な目的から設けられたものであり、効力の発生要件ではないからである(届出がなくても無効とはならない)。

 

□確定給付企業年金制度に基づき年金又は一時金が支払われる場合であって、保険会社の事務的理由等によりあらかじめ支払時期を設定することが困難であるときは、その支払時期については確定日とする必要はないが、いつまでに支給されるかについて明確にしておく必要がある(昭63.3.14基発150号)。

 

3  就業規則の作成手続 (法90条)                       重要度 ●   

 

条文

 


1) 使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。(平8択)(平20択)(平21択)


2) 使用者は、前条の規定により届出をなすについて、前項の意見を記した書面*1を添付しなければならない。

 

 

ここをチェック

 

□*1「意見書」は、労働者を代表する者の署名又は記名押印のあるものでなければならない(則49条2項)。(平4択)

 

-----------------(251ページ目ここから)------------------

 

ちょっとアドバイス

 

□同一の事業場において一部の労働者についてのみ適用される別個の就業規則(パートタイム就業規則等)を作成する場合、当該規則もその事業場全体の就業規則の一部分であるから、その作成又は変更に際しては、当該事業場の過半数労働組合又は過半数代表者の意見を聴くことが必要である(昭63.3.14基発150号)。

 

□就業規則に添付した意見書の内容が、当該就業規則に全面的に反対するものであると、特定部分に関して反対するものであるとを問わず、また、その反対理由の如何を問わず、その効力の発生についての他の要件を具備する限り、就業規則の効力には影響がない(昭24.3.28基発373号)。

 

advance

 

◆就業規則の本社一括届出について


□複数の事業場を有する企業等が、複数の事業場において同一の就業規則を適用する場合には、次の要件を満たすことにより、各事業場の就業規則を、本社の使用者が一括して本社の所在地を管轄する労働基準監督署長に届け出ることができる(平15.2.15基発0215001号)。

 


a) 本社を含め事業場の数に対応した必要部数の就業規則を提出すること。


b) 本社の就業規則と各事業場の就業規則が同一内容のものである旨が附記されていること。


c) 各事業場ごとの就業規則に過半数労働組合又は過半数代表者の意見を記した書面の正本が添付されていること。

 

 

判例チェック

 

◇制定権vs意見聴取義務◇

 


□意見聴取の有無は、就業規則の効力とは無関係とされる(通説)。


↓ なぜならば…

 


a) 使用者には就業規則についての一方的制定権が認められるから。


b) 法90条1項は取締規定にすぎないから。

 

 

↓ したがって…


就業規則において、「その作成及び変更には労働組合の同意又は協議を経る」旨の規定がある場合、その規定に違反して作成・変更された就業規則の効力について、就業規則の制定権は事業主にあることから、使用者に協議義務を負担させるにとどまり、就業規則そのものの失効には至らない(三井造船玉野分会事件・昭27.7.4最高裁第2小)。