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厚生年金保険法(2)-3

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テキスト本文の開始

 

 

 

2  3歳に満たない子を養育する被保険者等の標準報酬月額の特例
(法26条1項)                                              重要度 ●   

 

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【制度の趣旨】


育児休業期間中の標準報酬月額は、休業開始直前の水準で適用される(法24条1項ほか)。(ちなみに、事業主が厚生労働大臣に申し出ることにより、その期間中の保険料は免除される


↓ そんな中…


育児休業が終了し職場復帰はしたものの、「所定労働時間の短縮」や「時間外労働の制限請求」等により、固定的賃金(基本給等)の変動がなくても、その収入総額は休業開始前の報酬額に比べて低下することがある。


↓ そこで…


被保険者が厚生労働大臣に申し出ることにより、職場復帰月から4箇月目以降の標準報酬月額を改定できる制度が導入されている(法23条の2)。


↓ ところが…


厚生年金保険の年金給付額は、過去における被保険者の標準報酬月額等を計算の基礎とすることから、保険料が低下する分、将来に受給する年金額にもそれが反映されるのであれば、この改定申出の制度は、被保険者にとって必ずしも有意義な制度であるとはいえない。

 


子が3歳に達するまで育児休業をしたAさん】


休業開始直前の標準報酬月額の水準を維持したまま保険料が免除される。したがって、標準報酬月額は低下しないので、将来の年金額に不利は生じない!

 

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【子が1歳に達した時点で早々に職場復帰したBさん】


「育児休業等終了時改定」の申出を行ったため保険料は引き下げられたが、標準報酬月額の低下が、同時に、将来に受け取れる年金額の低下につながるのはひどい!

 

 

↓ そこで…


被保険者が厚生労働大臣に申し出ることにより、一定期間内においては「従前標準報酬月額」のみなし適用期間とし、年金額の支給水準が低下しないような措置が受けられる。

 

条文

 


3歳に満たない子を養育し、又は養育していた被保険者又は被保険者であった者が、厚生労働省令で定めるところにより厚生労働大臣に申出をしたときは、当該子を養育することとなった日の属する月*1から次のイ~ホのいずれかに該当するに至った日の翌日の属する月の前月までの各月のうち、その標準報酬月額が当該子を養育することとなった日の属する月の前月(以下「基準月」*2という)の標準報酬月額*3(以下「従前標準報酬月額」という)を下回る月*4については、従前標準報酬月額を当該下回る月の平均標準報酬額(第43条第1項)の計算の基礎となる標準報酬月額とみなす。(平17択)

 


イ) 当該子が3歳に達したとき

 

 

ロ) 被保険者の資格喪失の事由のいずれかに該当するに至ったとき

 

 

ハ) 当該子以外の子についてこの条の規定の適用を受ける場合における当該子以外の子を養育することとなったときその他これに準ずる事実として厚生労働省令で定めるものが生じたとき

 

 

ニ) 当該子が死亡したときその他当該被保険者が当該子を養育しないこととなったとき

 

 

ホ) 当該被保険者に係る第81条の2(育児休業期間中の保険料の免除)の規定の適用を受ける育児休業等を開始したとき

 

 

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□「申出」は、被保険者にあっては、その使用される事業所の事業主を経由して行うものとする。なお、当該申出が当該被保険者の使用される事業所の事業主に受理されたときは、その受理されたときに厚生労働大臣に申出があったものとみなす(令3条の2第2項)。

 

□*1「子の養育以外の当該特例の開始事由」として厚生労働省令で定める事実は、次に掲げる事実とする(則10条の3)。

 


a) 3歳に満たない子を養育する者が新たに被保険者の資格を取得したこと。


b) 育児休業期間中の保険料の免除の適用を受ける育児休業等を終了した日の翌日が属する月の初日が到来したこと。


c) 当該子以外の子に係る法26条1項の規定の適用を受ける期間の最後の月の翌月の初日が到来したこと。

 

 

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□*2「基準月」について、当該子を養育することとなった日の属する月の前月において被保険者でない場合にあっては、当該月前1年以内における被保険者であった月のうち直近の月をいう。

 


(例)「子を養育することとなった月の前月において被保険者でない」場合とは?

 

 

原則として、子の養育開始月の前月の標準報酬月額が「従前標準報酬月額」となる。


↓ ところが…


上記の場合は、子を養育することとなった日の属する月の前月において被保険者でないため、直前の1年間のうちの直近の月の標準報酬月額が、従前標準報酬月額となる。


↓ なお…


仮に、直前の1年間に被保険者期間がない(つまり、厚生年金保険に加入していなかった)場合は、この特例制度そのものが受けられないことになる。

 

 

□*3 当該子以外の子に係る基準月の標準報酬月額が標準報酬月額とみなされている場合にあっては、当該みなされた基準月の標準報酬月額を当該「標準報酬月額」とする。

 

□*4「特例が適用される月」については、当該申出が行われた日の属する月前の月にあっては、当該申出が行われた日の属する月の前月までの2年間のうちにあるものに限られる。

 


(例)「前月までの2年間のうちにあるものに限る」とは?

 

 

原則として、子を養育することとなった月から適用するべきところ、特例の申出がかなり遅れて行われた場合、申出月前の期間について、標準報酬月額をどこまで遡及して従前標準報酬月額とみなすのかが問題となる。


↓ そこで…


遡及できる期間は、「申出月の前月までの2年間」のうちにある養育開始月以降の期間について認めることとされている。

 

 

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※テキスト45ページ~52ページは、過去問掲載ページです。WEB上での掲載はございません