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(2) 掛金の負担及び納付義務 (法139条)
1) 加入員及び加入員を使用する設立事業所の事業主は、それぞれ掛金(前条第5項又は第6項の規定により徴収する掛金を除く、次項において同じ)の半額を負担する。 (平14択)
2) 基金は、前項の規定にかかわらず、政令で定める範囲内において、規約の定めるところにより、設立事業所の事業主の負担すべき掛金の額の負担の割合を増加することができる。(平2択)(平14択)(平20択)
3) 前条第5項及び第6項の規定により徴収する掛金については、事業主が負担するものとする。ただし、加入員は、政令で定める基準に従い規約で定めるところにより、当該掛金の一部を負担することができる。(平16択)(平21択)
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4) 設立事業所の事業主は、その使用する加入員及び自己の負担する掛金を納付する義務を負う。
5) 設立事業所の事業主は、基金の同意があるときは、政令の定めるところにより、掛金を金銭に代えて金融商品取引所に上場されている株式で納付することができる。 (平18択)
6) 加入員が同一の基金の設立事業所の2以上に同時に使用される場合における各事業主の負担すべき掛金の額及び掛金の納付義務については、政令の定めるところによる。
7) 育児休業等をしている加入員を使用する設立事業所の事業主が、厚生労働省令の定めるところにより基金に申出をしたときは、その育児休業等を開始した日の属する月からその育児休業等が終了する日の翌日が属する月の前月までの期間に係る掛金のうち、免除保険料額(当該加入員の標準報酬月額及び標準賞与額にそれぞれ免除保険料率を乗じて得た額をいう)を免除する*1。
(平16択)(平21択)
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□*1 育児休業等期間中の
免除保険料額を超える部分(事業主の全額負担による加算給付掛金部分)については、それぞれの基金の規約による。
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第5節 基金間の移行等
1 合併、分割及び設立事業所の増減(法142条~法144条) 重要度 ●●
(1) 合併 (法142条)
◆「合併」とは、A基金+B基金 → C基金となること。
1) 基金は、合併しようとするときは、代議員会において代議員の定数の4分の3以上の多数により議決し、厚生労働大臣の認可を受けなければならない。
(平4択)(平13択)
2) 合併によって基金を設立するには、各基金がそれぞれ代議員会において役員又は代議員のうちから選任した設立委員が共同して規約をつくり、その他設立に必要な行為をしなければならない。
3) 合併により設立された基金又は合併後存続する基金は、合併により消滅した基金の権利義務を承継する。
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(2) 分割 (法143条)
◆「分割」とは、A基金 → B基金andC基金となること。
1) 基金は、分割しようとするときは、代議員会において代議員の定数の4分の3以上の多数により議決し、厚生労働大臣の認可を受けなければならない。
(平4択)(平13択)
2) 基金の分割は、設立事業所の一部について行なうことはできない。
3) 分割を行う場合においては、分割により設立される基金の加入員となるべき被保険者又は分割後存続する基金の加入員である被保険者の数は、単独基金の場合は、常時1,000人以上、共同基金の場合は、原則として、合算して常時5,000人以上でなければならない。
4) 分割によって基金を設立するには、分割により設立される基金の設立事業所となるべき適用事業所の事業主が規約をつくり、その他設立に必要な行為をしなければならない。
5) 分割により設立された基金は、分割により消滅した基金又は分割後存続する基金の権利義務の一部を承継する。
6) 前項の規定により承継する権利義務の限度は、分割の議決とともに議決し、厚生労働大臣の認可を受けなければならない。
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(3) 設立事業所の増減 (法144条)
◆「増加」とは、A基金に新規加入すること、「減少」とは、A基金の加入事業所が脱退すること。
1) 基金がその設立事業所を増加させ、又は減少させるには、その増加又は減少に係る適用事業所の事業主の全部及びその適用事業所に使用される被保険者の2分の1以上の同意を得なければならない。(平4択)(平15択)
2) 基金がその設立事業所を増加させる場合において、その増加に係る適用事業所に使用される被保険者の3分の1以上で組織する労働組合があるときは、前項の同意のほか、当該労働組合の同意を得なければならない。
(平4択)(平15択)
3) その増加又は減少に係る適用事業所が2以上であるときは、第1項の被保険者の同意又は前項の同意は、各適用事業所について得なければならない。
5) 設立事業所を減少させる場合においては、基金の加入員は、設立事業所を減少させた後においても、単独基金の場合は、常時1,000人以上、共同基金の場合は、原則として、合算して常時5,000人以上でなければならない。
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2 基金間の権利義務の移転等 (法144条の2、法144条の3) 重要度 ●
◆権利義務の「移転」と積立金の「移換」
イ) ここにいう「移転」とは、A基金の加入期間をB基金の加入期間と通算し、A基金において生ずる加入者の権利義務をB基金に移すことである。
ロ) ここにいう「移換」とは、事業主がA基金に対して積み立てた掛金(「年金給付等積立金」という)をB基金に移し換え、移転によって生ずることとなるB基金の責任が金銭的にも引き継がれることとなる(この一連の性質は、「ポータビリティ性」と表現される)。
↓ 一般的には…
「確定給付型企業年金」においては、各制度間における給付水準が異なる等の理由から、ポータビリティ性には消極的であった。例えば、原則として、転職等によってA基金加入事業所からB基金加入事業所へ転職しても、別基金であるならば、それぞれの加入期間の通算は認められなかった(もちろん、同一基金であれば、勤務事業所が異なっても通算することはできる)。
↓ ところが、この仕組みが、平成18年に緩和された!
AB基金間において、「通算することについての取り決め(規約)」があれば、中途脱退者に関するポータビリティを認めることとした。なお、転職先に基金がないとき、又は基金はあっても通算できる取り決めがないときの中途脱退者の権利義務は、企業年金連合会が承継することとなる。
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(1) 基金間の権利義務の移転 (法144条の2)
◆「基金間の移転」とは、A基金の加入事業所が脱退して、B基金に新規加入すること。
1) 甲基金は、乙基金に申し出て、甲基金の設立事業所(政令で定める場合にあっては、設立事業所の一部、以下この条において「脱退事業所」という)に使用される甲基金の加入員又は加入員であった者に係る甲基金の加入員であった期間(企業年金連合会又は他の基金がその支給に関する義務を承継している老齢年金給付の額の計算の基礎となる甲基金の加入員であった期間を除く)に係る年金たる給付及び一時金たる給付の支給に関する権利義務を移転することができる。
2) 甲基金が前項の規定により権利義務の移転を申し出るには、甲基金の代議員会において代議員の定数の4分の3以上の多数により議決した上で、厚生労働大臣の認可を受けなければならない。
3) 乙基金は、第1項の規定により権利義務の移転の申出があったときは、当該年金たる給付及び一時金たる給付の支給に関する権利義務を承継することができる。
4) 乙基金は、権利義務を承継しようとするときは、その代議員会において代議員の定数の4分の3以上の多数により議決し、厚生労働大臣の認可を受けなければならない。
5) 乙基金が権利義務を承継したときは、乙基金に老齢年金給付の支給に関する義務が承継された者の甲基金の加入員であった期間は、乙基金の加入員であった期間とみなす。
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(2) 他の基金への権利義務の移転 (法144条の3第1項~4項)
◆「他の基金への移転」とは、A基金の中途脱退者が、B基金に新規加入すること(転職)。
1) 甲基金の中途脱退者*1は、乙基金の加入員の資格を取得した場合であって、甲基金及び乙基金の規約において、あらかじめ、甲基金から乙基金に甲基金の加入員であった期間に係る老齢年金給付の支給に関する権利義務の移転ができる旨が定められているときは、甲基金に当該権利義務の移転を申し出ることができる。
2) 甲基金は、前項の規定により権利義務の移転の申出があったときは、乙基金に当該老齢年金給付の支給に関する権利義務の移転を申し出るものとする。
3) 乙基金は、前項の規定により権利義務の移転の申出があったときは、当該老齢年金給付の支給に関する権利義務を承継するものとする。
4) 前項の規定により乙基金が当該老齢年金給付の支給に関する権利義務を承継する場合においては、甲基金から乙基金に年金給付等積立金(当該老齢年金給付に充てるべき積立金に限る)を移換するものとする。
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□*1「中途脱退者」とは、当該基金の加入員の資格を喪失した者(当該加入員の資格を喪失した日において
当該基金が支給する老齢年金給付の受給権を有する者を除く)であって、その者の当該基金の加入員であった期間が政令で定める期間(20年)に満たないものをいう(基金令41条の3の3第2項)。