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国民年金法(6)-5

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6  給付水準の下限 (平16法附則2条)                    重要度 ●    

    

条文

 


1) 国民年金法による年金たる給付及び厚生年金保険法による年金たる保険給付については、所得代替率が100分の50を上回ることとなるような給付水準を将来にわたり確保するものとする。


2) 政府は、国民年金事業に関する財政の現況及び見通し又は厚生年金保険事業に関する財政の現況及び見通しの作成に当たり、次の財政の現況及び見通しが作成されるまでの間に所得代替率が100分の50を下回ることが見込まれる場合には、調整期間の終了について検討を行い、その結果に基づいて調整期間の終了その他の措置を講ずるものとする。


3) 政府は、前項の措置を講ずる場合には、給付及び費用負担の在り方について検討を行い、所要の措置を講ずるものとする。

 

 

advance

 

□「所得代替率」とは、次のイの額とロの額とを合算して得た額のハに掲げる額に対する比率をいう。

 


イ) 当該年度における国民年金法による老齢基礎年金の額(当該年度において65歳に達し、かつ、保険料納付済期間の月数が480である受給権者について計算される額とする)を当該年度の前年度までの標準報酬額等平均額の推移を勘案して調整した額を12で除して得た額に2を乗じて得た額に相当する額。

 

 

ロ) 当該年度における厚生年金保険法による老齢厚生年金の額(当該年度の前年度における男子被保険者の平均的な標準報酬額(標準報酬月額と標準賞与額の総額を12で除して得た額とを合算して得た額をいう)に相当する額に当該年度の前年度に属する月の標準報酬月額又は標準賞与額に係る再評価率を乗じて得た額を平均標準報酬額とし、被保険者期間の月数を480として計算した額とする)を12で除して得た額に相当する額。

 

 

ハ) 当該年度の前年度における男子被保険者の平均的な標準報酬額に相当する額から当該額に係る公租公課の額を控除して得た額に相当する額。

 

     

   ↓ 簡単にいえば…

 


新規裁定により年金受給を始める時点において、その「世帯に支給される一般標準的な年金月額」の「現役の男子被保険者の手取り賃金月額」に対する比率のことである。


↓ この規定により…


物価水準や賃金水準が下降し続けた場合であっても、年金の給付水準が急低下することを抑制するための措置を講ずることとなる。

 

 

 

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7  国民年金法による年金たる給付等の額の計算に関する経過措置
(物価スライド特例措置・平16法附則7条)                    重要度 ●    

   

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◆物価スライド特例措置とは?

 


「基礎年金の法定額」は、5年ごとに見直しする改正前の規定に基づき、本来、次のように改定されるべきであった。

 


イ) 平成 7年度法定額

 

「780,000円」…(a)

 

ロ) 平成12年度法定額

 

(a)×1.031=「804,200円」…(b)
*1.031=平成6年から平成10年の間における物価変動値

 

ハ) 平成17年度法定額

 

(b)×0.971=「780,900円」…(c)
*0.971=平成11年から平成15年の間における物価変動値

 

 

↓ ところが…


平成12年度から平成14年度までの間、本来の物価下落率(▲1.7%)を年金額に反映しないとする政策上の決定がなされ、年金額は下降スライドされることなく据え置かれた。(平22選)


↓ その後…


□平成16年度年金額は、平成14年及び平成15年の物価下落分(▲1.2%)のみ反映した(b)×0.988≒「794,500円」とされた。


□平成18年度年金額は、平成17年の物価下落分(▲0.3%)を反映した(b)×0.985≒「792,100円」とされた。


↓ そして…

 


【平成23年度の適用特例率:0.981】→(b)×0.981≒「788,900円」
*「0.981」とは、直近の年金額改定が行われた平成18年度改定率0.985に今回の物価変動率0.996(平成17年の物価水準に対し▲0.4%)を乗じて得た率である(この特例率は、上昇改定されない)。

 

    

    ↓ こうした経緯から…


平成17年度以降は、年金受給額を保障するため、(c):改正後の年金額(780,900円)をすぐには適用せず、(b):12年度法定額を支給基準とする特例措置が行われている。そして、現在においてもこの規定が適用されており、「改定率の改定等」の仕組みによる年金額が物価スライド特例額を上回らない限り、物価スライド特例額がその年度における年金額となる(上回った時点でこの特例措置は終了)。(平22択)


↓ なお…


特例水準の年金額は、物価が上昇しても据え置く一方で、物価が直近の年金額改定の基となる物価水準(現在は、平成22年の水準)を下回った場合に、その分だけ引き下げて、翌年の4月以降に下降改定される

 

 

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(1) 平成23年度の年金額

 

年金の種類

 

本来の額

 

物価スライド特例額

老齢基礎年金

(満額)

 

780,900円×改定率 (769,200円)

 

788,900円

障害基礎年金

第1級

 

第2級×1.25 (961,500円)

 

986,100円

 

第2級

 

780,900円×改定率 (769,200円)

788,900円

遺族基礎年金

(基本額)

 

780,900円×改定率 (769,200円)

 

788,900円

子の加算

 

第2子まで

 

224,700円×改定率 (221,300円)

227,000円

 

第3子から

 

 74,900円×改定率 ( 73,800円)

 75,600円

 

振替加算の基準額

 

224,700円×改定率 (221,300円)

227,000円

 

*(据置額)804,200円×0.981≒788,900円、同231,400円×0.981≒227,000円、同77,100円×0.981≒75,600円
*本来の額の改定率は「0.985」である。