前のページへ | 次のページへ | 目次へ

国民年金法(6)-4

仮画像

テキスト本文の開始

 

 

 

 

3  調整期間 (法16条の2)                              重要度 ●    

 

outline

 

◆調整期間の意義

 


社会経済全体の景気が良くなると、一般的には、賃金や物価は概ね上昇し、また、家計に占める可処分所得割合(いわゆる「手取り収入」)も上昇する。
(こうした社会の変化は、数年単位の短期間に起こり得る


↓ 一方で…


社会経済全体を支える人口バランスの変化は、少なくとも数十年の単位に及ぶ。


↓ だとすれば…


現役世代の経済活動が活発となった側面だけを捉えて年金額の改定を行う制度の場合、その財源を支える一人ひとりの負担が過大なものとなってしまう。


↓ そこで…


その時代における社会全体の負担能力を年金額の改定に反映させるシステムが必要であり、具体的には、現役世代人口が社会全体に占める割合被保険者数の減少平均余命の伸びなどを考慮することが必要である。
*このような仕組みを「マクロ経済スライド制」という。

 

 

-----------------(189ページ目ここから)------------------

 

条文

 


1) 政府は、財政の現況及び見通しを作成するに当たり、国民年金事業の財政が、財政均衡期間の終了時に給付の支給に支障が生じないようにするために必要な積立金(年金特別会計の国民年金勘定の積立金をいう)を保有しつつ当該財政均衡期間にわたってその均衡を保つことができないと見込まれる場合には、年金たる給付(付加年金を除く)の額(以下「給付額」という)を調整するものとし、政令で、給付額を調整する期間(以下「調整期間」という)の開始年度を定めるものとする。(平19択)(平23択)(平18選)


2) 財政の現況及び見通しにおいて、前項の調整を行う必要がなくなったと認められるときは、政令で、調整期間の終了年度を定めるものとする。


3) 政府は、調整期間において財政の現況及び見通しを作成するときは、調整期間の終了年度の見通しについても作成し、併せて、これを公表しなければならない。

 

 

ちょっとアドバイス

 

□「調整期間の開始年度」は、平成17年度とする(令4条の2の2)。

 

4  調整期間における改定率の改定の特例-1
(原則・法27条の4第1項)                                  重要度 ●    

   

条文

 


調整期間における改定率の改定については、名目手取り賃金変動率に次のイ及びロに掲げる率を乗じて得た率を基準とする。

 


イ) 当該年度の初日の属する年の5年前の年の4月1日の属する年度における公的年金各法の被保険者等(この法律又は被用者年金各法の被保険者、組合員又は加入者をいう)の総数として政令で定めるところにより算定した数(以下「公的年金被保険者等総数」という)に対する当該年度の前々年度における公的年金被保険者等総数の比率の3乗根となる率(変動率)


ロ) 0.997

 

 

【調整期間における改定率の改定基準】
=名目手取り賃金変動率×調整率(公的年金被保険者等総数の変動率×0.997)

 

 

ただし、当該基準による改定により当該年度の改定率が当該年度の前年度の改定率を下回ることとなるときは、1を基準とする。

 

 

advance

 


2) 次に掲げる場合の調整期間における改定率の改定については、前項の規定にかかわらず、当該定める率を基準とする。

 


イ) 名目手取り賃金変動率が1以上となり、かつ、調整率が1を上回るとき

 

名目手取り賃金変動率

 

ロ) 名目手取り賃金変動率が1を下回り、かつ、物価変動率が名目手取り 金変動率以下となるとき

 

名目手取り賃金変動率

 

-----------------(190ページ目ここから)------------------

 

ハ) 名目手取り賃金変動率が1を下回り、かつ、物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回るとき(ニの場合を除く)

 

 

 

 

 

物価変動率

 

ニ) 名目手取り賃金変動率が1を下回り、かつ、物価変動率が1を上回るとき

 

1

 

↓ なお…


□調整期間において「改定率の改定等(法27条の2)」を適用することにより物価スライド特例措置による年金額の基準を下回る場合にあっては、「調整期間における改定率の改定(法27条の4)」の規定は適用しない(平16法附則12条1項)。

 

5  調整期間における改定率の改定の特例-2
(基準年度以後・法27条の5第1項)                          重要度 ●    

   

条文

 


調整期間における基準年度以後改定率の改定については、物価変動率に調整率を乗じて得た率を基準とする。

 


【調整期間における基準年度以後改定率の改定基準】=物価変動率×調整率

 

 

ただし、当該基準による改定により当該年度の基準年度以後改定率が当該年度の前年度の改定率を下回ることとなるときは、1を基準とする。

 

 

advance

 


次に掲げる場合の調整期間における基準年度以後改定率の改定については、前項の規定にかかわらず、当該定める率を基準とする。

 


イ) 物価変動率が1を下回るとき

 

物価変動率

 

ロ) 物価変動率が名目手取り賃金変動率以下となり、かつ、調整率が1を上回るとき(イの場合を除く)

 

物価変動率

 

ハ) 物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回り、名目手取り賃金変動率が1以上となり、かつ、調整率が1を上回るとき

 

名目手取り賃金変動率

 

ニ) 物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回り、名目手取り賃金変動率が1以上となり、かつ、調整率が1以下となるとき

 

名目手取り賃金変動率に調整率を乗じて得た率

 

ホ) 物価変動率が1を上回り、かつ、名目手取り賃金変動率が1を下回るとき

 

1

      

  ↓ なお…


□調整期間において「基準年度以後改定率の改定等(法27条の3)」を適用することにより物価スライド特例措置による年金額の基準を下回る場合にあっては、「調整期間における基準年度以後改定率の改定(法27条の5)」の規定は適用しない(平16法附則12条1項)。