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健康保険法(6)-13

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テキスト本文の開始

 

 

 

4  任意継続被保険者の保険料の前納 (法165条)          重要度 ●● 

 

条文

 


1) 任意継続被保険者は、将来の一定期間*1の保険料を前納することができる。
(平4択)(平9択)


2) 前項の場合において前納すべき額は、当該期間の各月の保険料の額から政令で定める額を控除した額とする。


3) 前納された保険料については、前納に係る期間の各月の初日が到来したときに、それぞれその月の保険料が納付されたものとみなす。(平9択)(平22選)


4) 前3項に定めるもののほか、保険料の前納の手続、前納された保険料の還付その他保険料の前納に関して必要な事項は、政令で定める*2。

 

 

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ここをチェック

 

(1)*1 保険料の前納期間 (令48条)

 


「保険料の前納期間」は、4月から9月まで若しくは10月から翌年3月までの6月間又は4月から翌年3月までの12月間を単位として行うものとする。

(平13択)(平19択)
ただし、当該6月又は12月の間において、任意継続被保険者の資格を取得した者又はその資格を喪失することが明らかである者については、当該6月間又は12月間のうち、その資格を取得した日の属する月の翌月以降の期間又はその資格を喪失する日の属する月の前月までの期間の保険料について前納を行うことができる。(平22選)

 

 

(2) 前納の時期 (則139条1項)


□任意継続被保険者は、保険料を前納しようとするときは、前納しようとする額を前納に係る期間の初月の前月末日までに払い込まなければならない。
(平13択)(平17択)(平22選)


↓ なお…

 


任意継続被保険者は、保険料が前納された後、前納に係る期間の経過前において任意継続被保険者に係る保険料の額の引上げが行われることとなった場合においては、当該保険料の額の引上げが行われることとなった後の期間に係る保険料に不足する額を、前納された保険料のうち当該保険料の額の引上げが行われることとなった後の期間に係るものが令50条(前納保険料の充当)の規定により当該期間の各月につき納付すべきこととなる保険料に順次充当されてもなお保険料に不足を生ずる月の10日までに払い込まなければならない(同2項)。

 

 

advance

 

(1) 前納の際の控除額 (令49条)

 


前納の際に控除する「政令で定める額」は、前納に係る期間の各月の保険料の合計額から、その期間の各月の保険料の額を年4分の利率による複利現価法によって前納に係る期間の最初の月から当該各月までのそれぞれの期間に応じて割り引いた額の合計額(この額に1円未満の端数がある場合において、その端数金額が50銭未満であるときは、これを切り捨て、その端数金額が50銭以上であるときは、これを1円として計算する)を控除した額とする。(平22選)

 

 

(2)*2 前納保険料の充当及び還付

 


充当 (令50条)

 

還付 (令51条)

 

 

保険料が前納された後、前納に係る期間の経過前において任意継続被保険者に係る保険料の額の引上げが行われることとなった場合においては、前納された保険料のうち当該保険料の額の引上げが行われることとなった後の期間に係るものは、当該期間の各月につき納付すべきこととなる保険料に、先に到来する月の分から順次充当するものとする。

 

1) 保険料を前納した後、前納に係る期間の経過前において任意継続被保険者がその資格を喪失した場合においては、その者(死亡した場合においては、その者の相続人)の請求に基づき、前納した保険料のうち未経過期間に係るものを還付する。


2) 前項に規定する未経過期間に係る還付額は、任意継続被保険者の資格を喪失した時において当該未経過期間につき保険料を前納するものとした場合におけるその前納すべき額に相当する額とする。

 

 

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5  保険料の源泉控除 (法167条)                        重要度 ●● 

 

条文

 


1) 事業主は、被保険者に対して通貨をもって報酬を支払う場合においては、被保険者の負担すべき前月の標準報酬月額に係る保険料(被保険者がその事業所に使用されなくなった場合においては、前月及びその月の標準報酬月額に係る保険料)を報酬から控除することができる。
(平2択)(平4択)(平8択)(平9択)(平13択)(平19択)(平23択)


2) 事業主は、被保険者に対して通貨をもって賞与を支払う場合においては、被保険者の負担すべき標準賞与額に係る保険料に相当する額を当該賞与から控除することができる。(平20択)


3) 事業主は、前2項の規定によって保険料を控除したときは、保険料の控除に関する計算書を作成し、その控除額を被保険者に通知しなければならない。

 

 

ここで具体例!

 

◆保険料控除と納期限の仕組み

 


<事例1> 4月分の保険料 →5月支給の給料日に控除 →5月末日納期限


a) 5月に支給する報酬から「前月分」として控除できる。


b) 4月分の保険料からみて「翌月末日」である5月31日までに納付しなければならない。
*実務的には、毎月20日以降に「保険料納入告知額(兼領収済額)」の通知が郵送されてくる(原則的には、口座振替による納付の方法が採られている)。

 

 

<事例2> 賃金締切日と賃金支払日が毎月末(同日)であるとき


a) 資格取得月(雇入れ1月目)の報酬からは、保険料は控除しない(雇入れ2月目の報酬から前月分の保険料として控除する)。


b) この事例において退職日が月末である場合、その月の保険料も徴収されるため、最後の報酬から「前月及びその月」の保険料を控除することとなる。

 

 

ここをチェック

 

□「前月及びその月」に係る保険料の控除は、被保険者がその事業所に使用されなくなった場合に限り行うことができる。(平6択)

 

□事業主が被保険者の報酬又は賞与から保険料を控除するに当たっては、被保険者の同意は不要である。(平1択)

 

□保険料を控除できるのは、あくまでも報酬又は賞与からであり、被保険者に支給されている「傷病手当金又は出産手当金」から保険料を控除する取扱いはできない。 (平5択)(平8択)(平10択)

 

 

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ちょっとアドバイス

 

◆通達による判断基準 (昭27.7.14保文発3917号)

 


資格を取得した月に資格を喪失した場合(同一月内得喪)であっても、その月分の保険料を控除することができる。

 

 

その月分の保険料とは、その月に得喪があった場合の保険料であって、前月から引き続き被保険者である者が資格を喪失したときには、その月分の保険料は徴収されないためその月分の保険料の控除も行われない

 

 

6  保険料の繰上徴収 (法172条)                        重要度 ●● 

 

条文

 


保険料は、次に掲げる場合においては、納期前であっても、すべて徴収することができる。

 


イ) 納付義務者が、次のいずれかに該当する場合

 


a) 国税、地方税その他の公課の滞納によって、滞納処分を受けるとき。
(平7択)(平10択)

 

 

b) 強制執行を受けるとき。(平7択)

 

 

c) 破産手続開始の決定を受けたとき。
(平4択)(平5択)(平7択)(平13択)(平17択)

 

 

d) 企業担保権の実行手続の開始があったとき。

 

 

e) 競売の開始があったとき。

 

 

ロ) 法人である納付義務者が、解散をした場合

 

 

ハ) 被保険者の使用される事業所が、廃止された場合(平23択)

 

 

ちょっとアドバイス

 

□任意適用事業所が「任意包括脱退により適用事業所でなくなるとき」は、保険料の繰上徴収の事由に該当しないため、この規定は適用されない。(平7択)

 

□「事業所の譲渡」によって事業主に変更があったときは、被保険者の使用される事業所が廃止された場合に該当するものとして、事業主が変更する前の保険料について繰上徴収の事由に該当する(昭5.11.5保理513号)。(平14択)

 

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7  保険料等の督促及び滞納処分 (法180条)              重要度 ●● 

 

条文

 


1) 保険料その他この法律の規定による徴収金(法204条の2第1項(財務大臣への権限の委任)及び法204条の6第1項(機構が行う収納)を除き、以下「保険料等」という)を滞納する者(以下「滞納者」という)があるときは、保険者等は、期限を指定して、これを督促しなければならない。(平17択)
ただし、法172条(保険料の繰上徴収)の規定により保険料を徴収するときは、この限りでない。(平7択)(平10択)(平22択)


2) 前項の規定によって督促をしようとするときは、保険者等は、納付義務者に対して、督促状を発する。


3) 前項の督促状により指定する期限は、督促状を発する日から起算して10日以上を経過した日でなければならない。(平22択)
ただし、法172条各号(保険料の繰上徴収)のいずれかに該当する場合は、この限りでない。


4) 保険者等は、納付義務者が次のいずれかに該当する場合においては、国税滞納処分の例によってこれを処分し、又は納付義務者の居住地若しくはその者の財産所在地の市町村(特別区を含むものとし、地方自治法第252条の19第1項の指定都市にあっては、区とする、第6項において同じ)に対して、その処分を請求することができる。 (平3択)(平11択)

 


a) 第1項の規定による督促を受けた者がその指定の期限までに保険料等を納付しないとき。

 

 

b) 法172条各号のいずれかに該当したことにより納期を繰り上げて保険料納入の告知を受けた者がその指定の期限までに保険料を納付しないとき。

 

 

5) 前項の規定により協会又は健康保険組合が国税滞納処分の例により処分を行う場合においては、厚生労働大臣の認可を受けなければならない。
(平7択)(平10択)(平13択)(平15択)(平23択)


6) 市町村は、第4項の規定による処分の請求を受けたときは、市町村税の例によってこれを処分することができる。この場合においては、保険者は、徴収金の100分の4に相当する額を当該市町村に交付しなければならない

 

 

advance

 

前年改正

 

◆保険者等 (1項かっこ書き)

 


「保険者等」とは、被保険者が協会が管掌する健康保険の任意継続被保険者である場合、協会が管掌する健康保険の被保険者若しくは日雇特例被保険者であって法58条(不正利得の徴収等)、法74条2項(一部負担金の徴収)等(法149条(日雇特例被保険者への準用)においてこれらの規定を準用する場合を含む)の規定による徴収金を納付しなければならない場合又は解散により消滅した健康保険組合の権利を法26条4項の規定により承継した場合であって当該健康保険組合の保険料等で未収のものに係るものがあるときは協会、被保険者が健康保険組合が管掌する健康保険の被保険者である場合は当該健康保険組合、これら以外の場合は厚生労働大臣をいう(以下、この条及び法181条1項において同じ)。(*滞納処分及び延滞金の徴収についても同様)

 

 

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□第三者行為災害に係る損害賠償請求権は、滞納処分の対象とならない(滞納処分をすることはできない)。(平3択)

 

8  延滞金 (法181条)                                  重要度 ●● 

 

条文

 


1) 前条第1項の規定によって督促をしたときは、保険者等は、徴収金額に、納期限の翌日から徴収金完納又は財産差押えの日の前日までの期間の日数に応じ、年14.6%(当該督促が保険料に係るものであるときは、当該納期限の翌日から3月を経過する日までの期間については、年7.3%(当分の間軽減措置あり*1))の割合を乗じて計算した延滞金を徴収する。
(平4択)(平5択)(平8択)(平9択)(平15択)(平19択)(平17選)

 

 

ここをチェック

 

□延滞金の計算については、次のとおりとなる。

 


イ) 次のいずれかに該当する場合(1項ただし書き、4項)

 


a) 徴収金額が1,000円未満であるとき


b) 納期を繰り上げて徴収するとき


c) 納付義務者の住所若しくは居所が国内にないため、又はその住所及び居所がいずれも明らかでないため、公示送達の方法によって督促をしたとき


d) 滞納につきやむを得ない事情があると認められるとき


e) 督促状に指定した期限までに徴収金を完納したとき


f) 延滞金の額が100円未満であるとき

 

徴収しない

 

ロ) 徴収金額の一部につき納付があったときは、その納付の日以後の期間に係る延滞金の計算の基礎となる徴収金について(2項)

 

その納付のあった徴収金額を控除した金額による

 

ハ) 徴収金額に1,000円未満の端数があるとき(3項)
(平10択)(平17選)

 

その端数は、切り捨てる

 

ニ) 延滞金の金額に100円未満の端数があるとき

(5項)(平17選)

 

その端数は、切り捨てる

 

advance

 

□*1 延滞金の割合の特例 (法附則9条)

 


延滞金の年7.3%の割合は、当分の間、各年の特例基準割合(各年の前年の11月30日を経過する時における日本銀行法の規定により定められる商業手形の基準割引率に年4%の割合を加算した割合をいう)が年7.3%の割合に満たない場合には、その年中においては、当該特例基準割合(当該特例基準割合に0.1%未満の端数があるときは、これを切り捨てる)とする。

 


【参考】 平成23年11月30日を経過する時における日本銀行法の基準割引率は0.3%であったことから、平成24年中における特例基準割合は「年4.3%」となる(延滞金軽減法・平23.12.1年管管発1201第1号)。

 

 

-----------------(298ページ目ここから)------------------

 

 

9  協会による広報等 (法181条の2、法181条の3)       重要度 ●   

 

条文

 


【協会による広報及び保険料の納付の勧奨等 (法181条の2)】
協会は、その管掌する健康保険の事業の円滑な運営が図られるよう、当該事業の意義及び内容に関する広報を実施するとともに、保険料の納付の勧奨その他厚生労働大臣の行う保険料の徴収に係る業務に対する適切な協力を行うものとする。

 

 

【協会による保険料の徴収 (法181条の3)】


1) 厚生労働大臣は、協会と協議を行い、効果的な保険料の徴収を行うために必要があると認めるときは、協会に保険料の滞納者に関する情報その他必要な情報を提供するとともに、当該滞納者に係る保険料の徴収を行わせることができる


2) 厚生労働大臣は、前項の規定により協会に滞納者に係る保険料の徴収を行わせることとしたときは、当該滞納者に対し協会が当該滞納者に係る保険料の徴収を行うこととなる旨その他の厚生労働省令で定める事項を通知しなければならない。


3) 協会が保険料の徴収を行う場合においては、協会を保険者等とみなして、第180条及び第181条の規定を適用する。


4) 協会が保険料を徴収したときは、その徴収した額に相当する額については、第155条の2(保険料等の交付)の規定により、政府から協会に対し、交付されたものとみなす

 

 

10  先取特権の順位等 (法182条、法183条)            重要度 ●   

 

条文

 


【先取特権の順位 (法182条)】
保険料等の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。
(平1択)(平8択)(平10択)(平11択)

 

 

【徴収に関する通則 (法183条)】
保険料等は、この法律に別段の規定があるものを除き、国税徴収の例により徴収する。