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一般常識(6)-12

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第3節  労働契約法

 

1  総則 (法1条~法5条)                              重要度 ●● 

 

条文

 


【目的 (法1条)】
この法律は、労働者及び使用者の自主的な交渉の下で、労働契約が合意により成立し、又は変更されるという合意の原則その他労働契約に関する基本的事項を定めることにより、合理的な労働条件の決定又は変更が円滑に行われるようにすることを通じて、労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資することを目的とする。

 

 

【定義 (法2条)】
1) この法律において「労働者」とは、使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者をいう。


2) この法律において「使用者」とは、その使用する労働者に対して賃金を支払う者をいう。

 

 

【労働契約の原則 (法3条)】
1) 労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。<労使対等の原則>


2) 労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。<均衡考慮の原則>

(平22択)(平23択)


3) 労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。<調和配慮の原則> (平21択)


4) 労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。<信義誠実の原則>


5) 労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない。<権利濫用禁止の原則>

 

 

【労働契約の内容の理解の促進 (法4条)】
1) 使用者は、労働者に提示する労働条件及び労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにするものとする。


2) 労働者及び使用者は、労働契約の内容(期間の定めのある労働契約に関する事項を含む)について、できる限り書面により確認するものとする。

(平23択)

 

 

【労働者の安全への配慮 (法5条)】
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。(平22択)

 

 

ちょっとアドバイス

 

□「労働者」は、使用従属関係の有無により労働基準法と同様に判断する。

 

□「使用者」は、労働者との間において労働契約を締結する当事者であり、個人事業にあっては事業主個人法人にあっては法人そのものをいう。

 

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2  労働契約の成立及び変更 (法6条~法13条)           重要度 ●● 

 

条文

 


【労働契約の成立 (法6条、法7条)】
労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。

<合意の原則>

 

 

労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合*1には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、第12条(就業規則違反の労働契約)に該当する場合を除き、この限りでない(特約優先)。

 

 

【労働契約の内容の変更 (法8条)】
労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。<合意の原則>

 

 

【就業規則による労働契約の内容の変更 (法9条)】
使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、第10条の場合は、この限りでない。

 

 

【変更後の就業規則の規範性 (法10条)】
使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度労働条件の変更の必要性変更後の就業規則の内容の相当性労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第12条(就業規則違反の労働契約)に該当する場合を除き、この限りでない(特約優先)。(平22択)(平23択)

 

 

【就業規則の変更に係る手続 (法11条)】
就業規則の変更の手続に関しては、労働基準法第89条(就業規則の作成及び届出の義務)及び第90条(就業規則の作成の手続)の定めるところによる。

 

 

【就業規則違反の労働契約 (法12条:旧労基法93条)】
就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。(平1択)(平11択)(平2記)(平16選)

 

 

【法令及び労働協約と就業規則との関係 (法13条)】
就業規則が法令又は労働協約に反する場合には、当該反する部分については、第7条(就業規則で定める労働条件)、第10条(変更後の就業規則の規範性)及び第12条(就業規則違反の労働契約)の規定は、当該法令又は労働協約の適用を受ける労働者との間の労働契約については、適用しない。*2

 

 

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ちょっとアドバイス

 

□*1 労働基準法106条(法令等の周知義務)の「周知」は、同法施行規則52条の2により次のa)~c)のいずれかの方法によるべきこととされているのに対し、労働契約法の「周知」は、これらa)~c)の3種類の方法に限定されるものではなく、実質的に判断されるものである(平20.1.23基発0123004号)。

 


a) 常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること。

 

 

b) 書面を労働者に交付すること。

 

 

c) 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。

 

 

◆*2 就業規則の効力 (平20.1.23基発0123004号)

 


就業規則が法令に反してはならないこと及び労働組合と使用者との間の合意により締結された労働協約は使用者が作成する就業規則よりも優位に立つことは、法理上当然であり、就業規則は法令又は労働協約に反してはならないものである。
一方、法第7条、第10条及び第12条においては、一定の場合に就業規則で定める労働条件が労働契約の内容となることを規定しているが、就業規則が法令又は労働協約に反している場合においても当該就業規則で定める労働条件が労働契約の内容となることは適当ではない
具体的には、法第13条は、就業規則で定める労働条件が法令又は労働協約に反している場合には、その労働条件は労働契約の内容とはならないことを規定したものである。
なお、法第13条は、労働基準法第92条第1項と同趣旨の規定であり、就業規則と法令又は労働協約との関係を変更するものではない。