社労士試験合格を目指す方に無料でテキストを公開します!「労働基準法1-10:思想信条の自由と採用の自由」
---- 山川予備校事務局 よりお知らせ ----
テキスト内容は、2010年度社労士試験対策の社労士初級インプット講座(2010年度版)のテキストになります。2012年度版(新年度版)テキストは、「山川靖樹の社労士予備校」HPトップにて紹介しておりますので、ご確認ください。
テキスト本文の開始
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◇思想・信条の自由VS採用の自由◇
□新規卒業者が試用期間(3箇月)の満了直前に、当該期間の満了時点で本採用を拒否する旨の通知を受けた。その際の採用拒否理由として、採用試験の際に提出した身上書における虚偽記載又は秘匿及び面接試験における虚偽回答行為が、詐欺(民法96条)に該当し、管理職要員としての適格性を否定するものと判断された。
↓ 具体的には…
学生時代に学生運動に関与したこと、大学生協の役員歴があることの事実等を秘匿したことが問題となった。
↓ 判旨より抜粋…
イ) 憲法14条1項(法の下の平等)・同19条(思想及び良心の自由)は、私人相互の関係を直接規律するものではない。
ロ) 憲法22条(職業選択の自由)、同29条(財産権の不可侵)により、企業者には、原則として採用の自由が認められる。
ハ) 「採用」は労働条件ではなく、したがって、採用差別は労働基準法3条違反とはいえない。
ニ) 採用差別は、公序良俗(民90条)、不法行為(民709条)にも違反しない。
↓ 参考までに…
*「公序良俗」とは、公の秩序又は善良の風俗のことで、これに反する事項を目的とする法律行為は無効となる。
*「不法行為」とは、故意又は過失によって他人の権利又は利益を侵害することで、これによって生じた損害は賠償する責任を負う(失火は適用除外)。
↓ 以上のことから…
□企業者は、労働者の採否決定にあたり、労働者の思想・信条を調査し、そのため、その者からこれに関連する事項についての申告を求めることも、法律上禁止された違法行為とすべき理由はない。
労働基準法3条は労働者の信条によって賃金その他の労働条件につき差別することを禁じているが、これは、雇入れ後における労働条件についての制限であって雇入れそのものを制約する規定ではない(三菱樹脂事件・最高裁大法廷判決 昭48.12.12)。(平9択)