(2010年度版)社労士初級インプット講座/一般常識5-11

社労士試験合格を目指す方に無料でテキストを公開します!「一般常識5-11:事業主の対処指針」

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一般常識(5)-11

山川靖樹の社労士(社会保険労務士試験対策)講義風景

---- 山川予備校事務局 よりお知らせ ----

テキスト内容は、2010年度社労士試験対策の社労士初級インプット講座(2010年度版)のテキストになります。2012年度版(新年度版)テキストは、「山川靖樹の社労士予備校」HPトップにて紹介しておりますので、ご確認ください。

テキスト本文の開始

 

 

◆事業主の対処指針 <募集及び採用、配置並びに昇進についての特例>

 

□次に掲げる場合において、指針に掲げる措置を講ずることは、性別にかかわりなく均等な機会を与えていない、又は性別を理由とする差別的取扱いをしているとは解されず、法5条及び法6条の規定に違反することとはならない。

 


イ) 次に掲げる職務に従事する労働者に係る場合

 

[1]芸術・芸能の分野における表現の真実性等の要請から男女のいずれかのみに従事させることが必要である職務

 


[2]守衛、警備員等のうち防犯上の要請から男性に従事させることが必要である職務

 

[3][1]及び[2]に掲げるもののほか、宗教上、風紀上、スポーツにおける競技の性質上その他の業務の性質上男女のいずれかのみに従事させることについてこれらと同程度の必要性があると認められる職務

 

 

ロ) 労働基準法の規定により女性を就業させることができず、又は保健師助産師看護師法の規定により男性を就業させることができないことから、通常の業務を遂行するために、労働者の性別にかかわりなく均等な機会を与え又は均等な取扱いをすることが困難であると認められる場合

 

 

ハ) 風俗、風習等の相違により男女のいずれかが能力を発揮し難い海外での勤務が必要な場合その他特別の事情により労働者の性別にかかわりなく均等な機会を与え又は均等な取扱いをすることが困難であると認められる場合

 

 

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3 性別以外の事由を要件とする措置(間接差別・法7条) 重要度 ● 

 

条文

 

事業主は、募集及び採用並びに前条に掲げる事項に関する措置であって労働者の性別以外の事由を要件とするもののうち、措置の要件を満たす男性及び女性の比率その他の事情を勘案して実質的に性別を理由とする差別となるおそれがある措置として厚生労働省令で定めるもの*1については、当該措置の対象となる業務の性質に照らして当該措置の実施が当該業務の遂行上特に必要である場合、事業の運営の状況に照らして当該措置の実施が雇用管理上特に必要である場合その他の合理的な理由がある場合でなければ、これを講じてはならない。

 

ちょっとアドバイス

 

□*1 「実質的に性別を理由とする差別となるおそれがある措置」は、次のとおりとする(則2条)。

 


a) 労働者の募集又は採用に関する措置であって、労働者の身長、体重又は体力に関する事由を要件とするもの

 

b) 労働者の募集又は採用に関する措置(事業主が、その雇用する労働者について、労働者の職種、資格等に基づき複数のコースを設定し、コースごとに異なる雇用管理を行う場合において、当該複数のコースのうち当該事業主の事業の運営の基幹となる事項に関する企画立案、営業、研究開発等を行う労働者が属するコースについて行うものに限る)であって、労働者の住居の移転を伴う配置転換に応じることができることを要件とするもの

 

c) 労働者の昇進に関する措置であって、労働者が勤務する事業場と異なる事業場に配置転換された経験があることを要件とするもの

 

 

advance

 

◆雇用の分野における性別に関する間接差別 (事業主の対処指針)

 


イ) 雇用の分野における性別に関する間接差別とは、[1]性別以外の事由を要件とする措置であって、[2]他の性の構成員と比較して、一方の性の構成員に相当程度の不利益を与えるものを、[3]合理的な理由がないときに講ずることをいう。

 

 

ロ) イの[1]の「性別以外の事由を要件とする措置」とは、男性、女性という性別に基づく措置ではなく、外見上は性中立的な規定、基準、慣行等(以下「基準等」という)に基づく措置をいうものである。
イの[2]の「他の性の構成員と比較して、一方の性の構成員に相当程度の不利益を与えるもの」とは、当該基準等を満たすことができる者の比率が男女で相当程度異なるものをいう。

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イの[3]の「合理的な理由」とは、具体的には、当該措置の対象となる業務の性質に照らして当該措置の実施が当該業務の遂行上特に必要である場合、事業の運営の状況に照らして当該措置の実施が雇用管理上特に必要であること等をいうものである。

 

 

ハ) 法7条は、募集、採用、配置、昇進、降格、教育訓練、福利厚生、職種及び雇用形態の変更、退職の勧奨、定年、解雇並びに労働契約の更新に関する措置であって、イの[1]及び[2]に該当するものを厚生労働省令で定め、イの[3]の合理的な理由がある場合でなければ、これを講じてはならないこととするものである。

 

 

◆事業主の対処指針 <労働者の募集又は採用に当たって、労働者の身長、体重又は体力を要件とすること>

 


□「労働者の募集又は採用に関する措置であって、労働者の身長、体重又は体力に関する事由を要件とするもの」とは、募集又は採用に当たって、身長若しくは体重が一定以上若しくは一定以下であること又は一定以上の筋力や運動能力があることなど一定以上の体力を有すること(以下「身長・体重・体力要件」という)を選考基準とするすべての場合をいい、例えば、次に掲げるものが該当する。

 

【身長・体重・体力要件を選考基準としている例】

 

イ) 募集又は採用に当たって、身長・体重・体力要件を満たしている者のみを対象とすること。

 

ロ) 複数ある採用の基準の中に、身長・体重・体力要件が含まれていること。

 

ハ) 身長・体重・体力要件を満たしている者については、採用選考において平均的な評価がなされている場合に採用するが、身長・体重・体力要件を満たしていない者については、特に優秀という評価がなされている場合にのみその対象とすること。

 

 

□合理的な理由の有無については、個別具体的な事案ごとに、総合的に判断が行われるものであるが、合理的な理由がない場合としては、例えば、次のようなものが考えられる。

 

【合理的な理由がない例】

 

イ) 荷物を運搬する業務を内容とする職務について、当該業務を行うために必要な筋力より強い筋力があることを要件とする場合

 

ロ) 荷物を運搬する業務を内容とする職務ではあるが、運搬等するための設備、機械等が導入されており、通常の作業において筋力を要さない場合に、一定以上の筋力があることを要件とする場合

 

ハ) 単なる受付、出入者のチェックのみを行う等防犯を本来の目的としていない警備員の職務について、身長又は体重が一定以上であることを要件とする場合

 

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◆事業主の対処指針 <コース別雇用管理における総合職の労働者の募集又は採用に当たって、転居を伴う転勤に応じることができることを要件とすること>

 


□「当該事業主の運営の基幹となる事項に関する企画立案、営業、研究開発等を行う労働者が属するコース」(以下「総合職」という)に該当するか否かの判断に当たっては、単なるコースの名称などの形式ではなく、業務の内容等の実態に即して行う必要がある。

 

 

□「労働者の募集又は採用に関する措置(事業主が、その雇用する労働者について、労働者の職種、資格等に基づき複数のコースを設定し、コースごとに異なる雇用管理を行う場合において、当該複数のコースのうち当該事業主の事業の運営の基幹となる事項に関する企画立案、営業、研究開発等を行う労働者が属するコースについて行うものに限る)であって、労働者が住居の移転を伴う配置転換に応じることができることを要件とするもの」とは、コース別雇用管理を行う場合において、総合職の募集又は採用に当たって、転居を伴う転勤に応じることができること(以下「転勤要件」という)を選考基準とするすべての場合をいい、例えば、次に掲げるものが該当する。

 

【転勤要件を選考基準としている例】

 

イ) 総合職の募集又は採用に当たって、転居を伴う転勤に応じることができる者のみを対象とすること。

 

ロ) 複数ある総合職の採用の基準の中に、転勤要件が含まれていること。

 

 

□合理的な理由の有無については、個別具体的な事案ごとに、総合的に判断が行われるものであるが、合理的な理由がない場合としては、例えば、次のようなものが考えられる。

 

【合理的な理由がない例】

 

イ) 広域にわたり展開する支店、支社等がなく、かつ、支店、支社等を広域にわたり展開する計画等もない場合

 

ロ) 広域にわたり展開する支店、支社等はあるが、長期間にわたり、家庭の事情その他の特別な事情により本人が転勤を希望した場合を除き、転居を伴う転勤の実態がほとんどない場合

 

ハ) 広域にわたり展開する支店、支社等はあるが、異なる地域の支店、支社等で管理者としての経験を積むこと、生産現場の業務を経験すること、地域の特殊性を経験すること等が幹部としての能力の育成・確保に特に必要であるとは認められず、かつ、組織運営上、転居を伴う転勤を含む人事ローテーションを行うことが特に必要であるとは認められない場合

 

 

◆事業主の対処指針 <労働者の昇進に当たり、転勤の経験があることを要件とすること>

 


□「労働者の昇進に関する措置であって、労働者が勤務する事業場と異なる事業場に配置転換された経験があることを要件とするもの」とは、一定の役職への昇進に当たり、労働者に転勤の経験があること(以下「転勤経験要件」という)を選考基準とするすべての場合をいい、例えば、次に掲げるものが該当する。

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【転勤経験要件を選考基準としている例】

 

イ) 一定の役職への昇進に当たって、転勤の経験がある者のみを対象とすること。

 

ロ) 複数ある昇進の基準の中に、転勤経験要件が含まれていること。

 

ハ) 転勤の経験がある者については、一定の役職への昇進の選考において平均的な評価がなされている場合に昇進の対象とするが、転勤の経験がない者については、特に優秀という評価がなされている場合にのみその対象とすること。

 

ニ) 転勤の経験がある者についてのみ、昇進のための試験を全部又は一部免除すること。

 

 

□合理的な理由の有無については、個別具体的な事案ごとに、総合的に判断が行われるものであるが、合理的な理由がない場合としては、例えば、次のようなものが考えられる。

 

【合理的な理由がない例】

 

イ) 広域にわたり展開する支店、支社がある企業において、本社の課長に昇進するに当たって、本社の課長の業務を遂行する上で、異なる地域の支店、支社における勤務経験が特に必要であるとは認められず、かつ、転居を伴う転勤を含む人事ローテーションを行うことが特に必要であるとは認められない場合に、転居を伴う転勤の経験があることを要件とする場合

 

ロ) 特定の支店の管理職としての職務を遂行する上で、異なる支店での経験が特に必要とは認められない場合において、当該支店の管理職に昇進するに際し、異なる支店における勤務経験を要件とする場合

 

 

4  女性労働者に係る措置 (法8条、法9条)            重要度 ●   

 

◆女性労働者に係る措置に関する特例 (法8条)

 


□前3条の規定は、事業主が、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保の支障となっている事情を改善することを目的として女性労働者に関して行う措置を講ずることを妨げるものではない。(平11択)

 

 

ちょっとアドバイス

 

□労働者全体に占める女性労働者の割合が「4割を下回っている」雇用管理区分等において、募集及び採用、配置、昇進、教育訓練、職種の変更、雇用形態の変更について、女性労働者に有利な取扱いをすることは“違法でない”とされている(平18.10.11雇児発1011002号)。(平11択)

 

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◆法違反とならない場合 (事業主の対処指針)

 

□次に掲げる措置を講ずることは、法8条に定める雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保の支障となっている事情を改善することを目的とする措置(ポジティブ・アクション)として、法5条及び法6条の規定に違反することとはならない。

 


イ) 女性労働者が男性労働者と比較して相当程度少ない雇用管理区分(4割を下回るとき)における募集又は採用に当たって、当該募集又は採用に係る情報の提供について女性に有利な取扱いをすること、採用の基準を満たす者の中から男性より女性を優先して採用することその他男性と比較して女性に有利な取扱いをすること。

 

 

ロ) 一の雇用管理区分における女性労働者が男性労働者と比較して相当程度少ない職務に新たに労働者を配置する場合に、当該配置の資格についての試験の受験を女性労働者のみに奨励すること、当該配置の基準を満たす労働者の中から男性労働者より女性労働者を優先して配置することその他男性労働者と比較して女性労働者に有利な取扱いをすること。

 

 

ハ) 一の雇用管理区分における女性労働者が男性労働者と比較して相当程度少ない役職への昇進に当たって、当該昇進のための試験の受験を女性労働者のみに奨励すること、当該昇進の基準を満たす労働者の中から男性労働者より女性労働者を優先して昇進させることその他男性労働者と比較して女性労働者に有利な取扱いをすること。

 

 

ニ) 一の雇用管理区分における女性労働者が男性労働者と比較して相当程度少ない職務又は役職に従事するに当たって必要とされる能力を付与する教育訓練に当たって、その対象を女性労働者のみとすること、女性労働者に有利な条件を付すことその他男性労働者と比較して女性労働者に有利な取扱いをすること。

 

 

ホ) 一の雇用管理区分における女性労働者が男性労働者と比較して相当程度少ない職種への変更について、当該職種の変更のための試験の受験を女性労働者のみに奨励すること、当該職種の変更の基準を満たす労働者の中から男性労働者より女性労働者を優先して職種の変更の対象とすることその他男性労働者と比較して女性労働者に有利な取扱いをすること。

 

 

ヘ) 一の雇用管理区分における女性労働者が男性労働者と比較して相当程度少ない雇用形態への変更について、当該雇用形態の変更のための試験の受験を女性労働者のみに奨励すること、当該雇用形態の変更の基準を満たす労働者の中から男性労働者より女性労働者を優先して雇用形態の変更の対象とすることその他男性労働者と比較して女性労働者に有利な取扱いをすること。