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労災保険法(2)-13

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6  返還金債権への充当 (法12条の2)                    重要度 ●    

   

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□年金給付を受けている者が死亡すると、その受給権は消滅し、保険給付は終了する。

 

↓ ところが…


諸手続の遅れなどから出るはずのない年金が支払われてしまうことがある。

 

↓ このとき…


本来ならば、それを受け取った遺族に返還させるのが当然の流れ(この遺族のことを「返還金債権に係る債務の弁済をすべき者」という)である。

 

↓ しかし…


□当該遺族が、死亡者に係る「死亡」を支給事由とする保険給付(遺族(補償)給付及び葬祭料(葬祭給付)等)が受けられるとしたら、その保険給付の支払金を返還金と相殺するとスムーズである!

 

 

条文

 

 

年金たる保険給付を受ける権利を有する者が死亡したためその支給を受ける権利が消滅したにもかかわらず、その死亡の日の属する月の翌月以後の分として当該年金たる保険給付の過誤払が行われた場合において、当該過誤払による返還金に係る債権(以下「返還金債権」という)に係る債務の弁済をすべき者*1に支払うべき保険給付があるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該保険給付の支払金の金額を当該過誤払による返還金債権の金額に充当することができる*2。(平12択)(平15択)

 

 

ちょっとアドバイス

 

□*1「債務の弁済をすべき者」は、一般的には、過誤払を受けた死亡受給権者の相続人又は当該受給権者の遺族が該当する。

 

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□*2「過誤払による返還金債権への充当」は、次の場合に行うことができる(則10条の2)。

 


イ) 年金たる保険給付の受給権者の死亡に係る遺族(補償)年金、遺族(補償)一時金、葬祭料(葬祭給付)若しくは障害(補償)年金差額一時金の受給権者が、当該年金たる保険給付の受給権者の死亡に伴う当該年金たる保険給付の支払金の金額の過誤払による返還金債権に係る債務の弁済をすべき者であるとき。

 


過誤払した保険給付

 

死亡に係る新たな保険給付

 

傷病(補償)年金

 

 

遺族(補償)年金、遺族(補償)一時金、葬祭料(葬祭給付)

 

障害(補償)年金

 

 

遺族(補償)年金、遺族(補償)一時金、葬祭料(葬祭給付)
障害(補償)年金差額一時金

 

遺族(補償)給付

 

 

遺族(補償)年金、遺族(補償)一時金、葬祭料(葬祭給付)

 

 

ロ) 遺族(補償)年金の受給権者が、同一の事由による同順位の遺族(補償)年金の受給権者の死亡に伴う当該遺族(補償)年金の支払金の金額の過誤払による返還金債権に係る債務の弁済をすべき者であるとき。

 

 

ここで具体例!

 


【事例1】傷病補償年金の受給権者Aが死亡したとき
→ Aの遺族が受ける年金は、原則として、「遺族補償年金」と「葬祭料」

 

 

【事例2】障害補償年金の受給権者Bが通勤災害で死亡したとき
→ Bの遺族が受ける年金は、原則として、「遺族年金」と「葬祭給付」

 

 

【事例3】遺族年金の受給権者Cが業務災害で死亡したとき
→ Cの遺族が受ける年金は、原則として、「遺族補償年金」と「葬祭料」

 

    

    ↓ なお…

 

□仮に、A、B、Cの遺族が、その遺族自身の保険事故に基づく保険給付を受けていたとしても、その支給部分との間での充当処理は行われない。(平5択)

 

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□年金たる保険給付の受給権者の死亡に関し支給される保険給付が2種類あるときは、葬祭料(葬祭給付)以外の保険給付(遺族(補償)年金や遺族(補償)一時金)を優先して返還金債権に充当する(昭55.12.5基発673号)。

 

↓ なお…


過誤に支払われた者と返還すべき者が別人物である場合であって、死亡者の死亡を支給事由とする死亡関連給付があるときに「充当」は行われる。

 

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※テキスト68ページ~72ページは、過去問掲載ページです。WEB上での掲載はございません