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労災保険法(1)-10

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テキスト本文の開始

 

 

 

□「職業性の疾病(2号~10号)」には、「紫外線にさらされる業務による前眼部疾患又は皮膚疾患」というように、有害業務と相当因果関係にある傷病が例示列挙(具体的には、労働基準法施行規則別表第1の2及びこれに基づく告示において業務上の疾病が規定)されている。
そして、当該疾病を発生させるだけの作業内容、作業環境等が認められる場合には、反証のない限り「業務災害」として取り扱うことが、労働者保護の見地からも望ましいとされている。(平21択)(平18選)

 

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↓ なお…

 


業務上の疾病の認定については、素因(その病気にかかりやすい素質)や基礎疾病、既存疾病等の問題が関係することがあるが、素因等が発病の原因として競合していること自体は、その疾病の業務起因性を妨げない


↓ したがって…


業務(ないし業務上の事故)がそれら競合する原因のうち、相対的に有力な原因として認められる場合には、業務上の疾病として取り扱われる。ただし、業務(ないし業務上の事故)が競合しなくても発病したであろう場合には、業務起因性は認められない。

 

 

□「その他業務に起因することの明らかな疾病(11号)」は、1号~10号に掲げられている疾病以外に業務に起因したものと認められる疾病のことであり、「包括的救済規定」であることから、具体的な疾病名は例示列挙されていない

 

↓ したがって…


この場合は、発生時において被災労働者側による相当因果関係の立証が必要となる。 (平14択)(平17択)(平19択)(平18選)

 

□第8号及び第9号に該当するか否かの判断は、従来どおり、「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く)の認定基準(平13.12.12基発1063号)」及び「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針(平11.9.14基発544号)」による。

 

ちょっとアドバイス

 

(1) 脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く)の認定基準について (平13.12.12基発1063号)

 


次のイ)~ハ)の業務による明らかな過重負荷を受けたことにより発症した脳・心臓疾患は、「その他業務に起因することの明らかな疾病」として取り扱う。<抜粋>(平20選)

 


イ) 発症直前から前日までの間において、発生状態を時間的及び場所的に明確にし得る異常な出来事(異常な出来事)に遭遇したこと。(平22択)

 

ロ) 発症に近接した時期において、特に過重な業務(短期間の過重業務)に就労したこと。


ハ) 発症前の長期間にわたって、著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務(長期間の過重業務)に就労したこと。

 

 

この場合における発症前の長期間とは、発症前おおむね6か月間をいう。また、疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因と考えられる労働時間に着目すると、その時間が長いほど、業務の過重性が増すところであり、具体的には、発症日を起点とした1か月単位の連続した期間をみて、次のように評価される。(平22択)

 


a) 発症前1か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね45時間を超える時間外労働が認められない場合は、業務と発症との関連性が弱いが、おおむね45時間を超えて時間外労働が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まると評価できる。

 

b) 発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できる。

 

 

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(2) 心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針について (平11.9.14基発544号)

 


心理的負荷による精神障害の業務上外の判断に当たっては、精神障害の発病の有無、発病の時期及び疾患名を明らかにすることはもとより、当該精神障害の発病に関与したと認められる業務による心理的負荷の強度の評価が重要である。その際、労働者災害補償保険制度の性格上、本人がその心理的負荷の原因となった出来事をどのように受け止めたかではなく、多くの人々が一般的にはどう受け止めるかという客観的な基準によって評価する必要がある。また、業務以外の心理的負荷及び個体側要因についても評価されなければならない

 

↓ 以上のことから…


まず、精神障害の発病の有無等を明らかにした上で、業務による心理的負荷、業務以外の心理的負荷及び個体側要因の各事項について具体的に検討し、それらと当該労働者に発病した精神障害との関連性について総合的に判断する必要がある。
また、業務による心理的負荷によって精神障害が発病したと認められるものが自殺を図った場合には、精神障害によって正常の認識、行為選択能力が著しく阻害され、または自殺行為を思いとどまる精神的な抑制力が著しく阻害されている状態で自殺が行われたものと推定し、原則として業務起因性が認められる。また、遺書等の存在については、それ自体で正常な認識、行為選択能力が著しく阻害されていなかったと判断することは必ずしも妥当ではなく、遺書等の表現、内容、作成時の状況等を把握の上、自殺に至る経緯に係る一資料として評価するものである。 (平13択)(平15選)