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労災保険法(1)-1

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テキスト本文の開始

 

 

「労働者災害補償保険法」学習を始める前に

 

労働者災害補償保険法とは

労働者災害補償保険法(以下、本文においては「労災保険法」という)は、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害又は死亡等に対しての保険給付と、被災労働者の社会復帰の促進、被災労働者とその遺族の援護、労働災害の防止等を目的とする社会復帰促進等事業とを制度化した法律です。
労災保険法は、昭和22年に、労働基準法第8章「災害補償」で業務上災害についての事業主の無過失賠償責任の理念が確立したのと同時に、事業主の一時的補償負担の緩和を図り、労働者に対する迅速かつ公正な保護を確保するために施行されました。
当初は、労働基準法上の災害補償と同一の内容・水準を補償するのみでしたが、適用事業の拡大、給付水準の引上げ、通勤災害保護制度、社会復帰促進等事業、介護(補償)給付、二次健康診断等給付の創設など、制度の拡充が図られてきました。したがって、今日では労災保険法が災害補償の大部分の機能を担っており、労働基準法による災害補償制度が果たす役割は小さくなっていると言えるでしょう。

 

本試験について

 

<択一式>

 

択一式の出題数は7問(35肢)です。労働保険徴収法3問(15肢)と合わせて、10点満点中4点以上をとることが合格への最低ラインとなります。
近年の出題傾向をみると、条文等をストレートに問う形式から、条文等の知識をベースに具体的な判断ができるかを問う形式へシフトしつつあり、出題の難易度が上がってきていると言えます。しかし、条文ベースのポイントさえ把握していれば、正答が見つけやすい問題も相変わらず多数出題されています。難問に惑わされることなく、冷静に得点を重ねていきましょう。
択一式対策として、まずは、過去に問われた箇所を本書の中で確認し、理解を深めていきます。その上で、条文等の要件を確実におさえ、労災保険法4点(徴収法が苦手な方は+1~2点)以上得点できるよう目標を定めましょう。

 

<選択式>

 

選択式の出題数は5問です。5点満点中3点以上をとることが合格への最低ラインとなります。
近年の出題傾向としては、条文レベルのものから施行規則・通達レベルのものまで多岐にわたっており、選択肢が絞りにくくなっています。
選択式対策として、まずは、各々の条文のキーワードを覚えることから始めましょう。さらに、択一式の過去問を用いてキーワードの書き出しを行うことで、徐々に選択肢から選ぶのではなく、用語に見当をつけてから選択肢を見るような癖をつけていきましょう。

 

各章のポイント

 

本書に記載の重要度を基準に、メリハリをつけて学習して下さい。具体的には、以下の点に注意して学習に取り組んでみましょう。細かい知識を気にするよりも、まずは条文ベースの問題で確実に得点することを目標にして下さい。

 


第1章

総則

 

ほぼ毎年基本事項から出題される。労働者の範囲は、本書掲載例と定義を照らし合わせ正確に押える必要がある。

 

第2章

業務災害と
通勤災害

 

選択式を含めて頻出事項。施行規則や通達からの細かな出題も多く、本書記載内容のマスターは必須。特に、「業務上の疾病」関連が目立つ。また、具体例が出題されても認定の可否等が判断できるようにしておきたい。

 

第3章

給付基礎日額

 

条文ベースの出題が多いが、条文自体が長文のため、慣れないと解答時間にロスがでる。本書の太字箇所を中心に、各条文の相違点を整理し、短時間で確実に得点できるようにしたい。

 

第4章

保険給付の
通則Part1

 

各保険法に共通した通則事項を中心にまとめたパート。ほぼ毎年条文ベースの出題がある。本書記載の類似概念の比較をベースに自身でも横断整理をして、確実な得点源にしたい。

 

第5章

保険給付

 

選択式を含め頻出項目が多い。条文ベースの出題が目立つが、実践的な出題もある。業務災害に関する給付と通勤災害に関する給付の相違点や各保険給付の内容を横断整理し、条文ベースの出題の際には確実に得点したい。実際の支給請求書(労働基準監督署等で入手可能)を手元において学習することも効果的。

 

第6章

二次健康診断等給付

 

ほぼ隔年で出題されている。他の保険給付との相違点をチェックしつつ、本書記載の内容を正確にマスターすればよい。

 

第7章

保険給付の
通則Part2

 

主として労災保険法独自の通則事項をまとめたパート。毎年出題されている。民事損害賠償との調整など難解なテーマもあるが、まずは本書の重要度に従って、太字箇所と基本事項を理解したい。

 

第8章

社会復帰促進等事業

 

択一式では頻出、選択式では出題実績のないテーマ。社会復帰促進等事業は、各事業の実施主体・内容を把握する。また、「特別支給金」は、保険給付との違いを中心とした学習が必要。

 

第9章

特別加入

 

出題頻度は他に比べて低い。3種類の特別加入制度の横断的相違点、通常の労働者との相違点等の要件を整理しておくとよい。

 

第10章

不服申立て・訴訟・雑則
及び罰則

 

「不服申立て」と「時効」については頻出事項であり横断的な整理が必要である。また、「雑則」については、本書の太字箇所を中心に確認しておく。

 

 

学習前のアドバイス!

 

講義やその復習(過去問・テキスト読み込み)は、一定のリズムでこなし、早めに自分のペースにあった学習スタイルを確立しましょう。
学習中に生じた疑問点は、「同志たちの掲示板」などを活用し、その場で解決していくと記憶にも残りやすく効果的です。

 

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第 1 章

総  則

第1節  労災保険の概要    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
第2節  適用事業    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4

 

 

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第1節  労災保険の概要

 

1  目的と管掌 (法1条・法2条・法2条の2)             重要度 ●    

   

outline

 

◆保険事業の構造

 


労働者災害補償

保険事業

保険給付

 

業務災害

 

 

保険事故
(負傷、疾病、障害、

死亡)

 

通勤災害

 

 

二次健康診断等給付

 

社会復帰促進等

事業

 

a) 社会復帰促進事業

 

 

b) 被災労働者等援護事業

 

 

c) 安全衛生確保・賃金支払確保事業

 

 

条文

 

 

労働者災害補償保険は、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行い、あわせて、業務上の事由又は通勤により負傷し、又は疾病にかかった労働者の社会復帰の促進、当該労働者及びその遺族の援護、労働者の安全及び衛生の確保等を図り、もって労働者の福祉の増進に寄与することを目的とする。

(平13選)(平22選)

 

 

条文

 


労働者災害補償保険は、政府が、これを管掌する。(平2択)

 

 

条文

 


労働者災害補償保険は、第1条の目的を達成するため、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に関して保険給付を行うほか、社会復帰促進等事業を行うことができる。

 

 

ちょっとアドバイス

 

□具体的な「事務の所轄」は、次のとおりである(則1条)。(平1択)

 


1) 労働者災害補償保険法34条1項3号(中小事業主等の給付基礎日額)及び第35条1項6号(一人親方等の給付基礎日額)に規定する厚生労働大臣の権限は、都道府県労働局長に委任する。


2) 労働者災害補償保険に関する事務は、厚生労働省労働基準局長の指揮監督を受けて、事業場の所在地を管轄する都道府県労働局長(以下「所轄都道府県労働局長」という)が行う。


3) 保険給付(二次健康診断等給付を除く)並びに社会復帰促進等事業のうち労災就学等援護費及び特別支給金の支給並びに厚生労働省労働基準局長が定める給付に関する事務は、都道府県労働局長の指揮監督を受けて、事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長(以下「所轄労働基準監督署長」という)が行う。