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労働基準法(5)-11

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11  割増賃金-5 (法37条5項)                         重要度 ●● 

 

条文

 


第1項及び前項の割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない。

 

 

ここをチェック

 

□労働基準法37条5項が「家族手当」を割増賃金算定の基礎から除外すべきものと定めたのは、家族手当が労働者の個人的事情に基づいて支給される性格の賃金であって、これを割増賃金の基礎となる賃金に算入させることを原則とすることがかえって不適切な結果を生ずるおそれのあることを配慮したものである(三菱重工業長崎造船所事件・昭56.9.18最高裁第2小)。

 

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□「割増賃金の基礎となる賃金」であるか否かは、次のとおりである。

 


算入しなければならない賃金

 

 

算入しなくて

もよい賃金

 

 

□通常の労働時間又は労働日に支払われる賃金

 

□やむを得ない事情により特殊な危険作業に従事する場合に、危険作業手当を支給することとなっている事業場について、その危険作業が法定労働時間外、法定休日又は深夜に及んだ場合に係る当該危険作業手当(昭23.11.22基発1681号)*1
(平12択)(平16択)

 

□厚生労働省令で定める賃金(則21条)

 

a) 家族手当(平6択)

 

b) 通勤手当

 

c) 別居手当(平13選)

 

d) 子女教育手当(平6択)

 

e) 住宅手当

 

f) 臨時に支払われた賃金

 

g) 1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金

(平6択)

 

     

   ↓ ここで…

 


「家族手当」とは、扶養家族数又はこれを基礎とする家族手当額を基準として算出した手当をいい、たとえその名称が物価手当、生活手当等であっても、これに該当する手当であるか又は扶養家族数若しくは家族手当額を基礎として算定した部分を含む場合には、その手当又はその部分は、家族手当として取り扱われる。

 

 

「通勤手当」とは、労働者の通勤距離又は通勤に要する実際費用に応じて算定される手当と解されるから、通勤手当は原則として実際距離に応じて算定するが、一定額までは距離にかかわらず一律に支給する場合には、実際距離によらない一定額の部分は本条の通勤手当ではないから、割増賃金の基礎に算入しなければならない。

 

 

「住宅手当」とは、住宅に要する費用に応じて算定される手当をいう。したがって、住宅に要する費用以外の費用に応じて算定される手当や、住宅に要する費用にかかわらず一律に定額で支給される手当、例えば、住宅の形態ごとに一律に定額で支給することとされているものは、本条の住宅手当に当たらない。

(平14択)(平19択)

 

 

ちょっとアドバイス

 

□*1 坑内係員が坑内における作業に従事する場合に坑内手当を支給している事業場について、坑内係員を坑外において法定労働時間外に労働させた場合には、当該坑内手当を割増賃金の算定の基礎に含める必要はない

(昭23.5.25基発811号)。

 

□割増賃金の算定の基礎から除外することができる家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当及び住宅手当は、名称の如何にかかわらず、実質によって判断される(昭22.9.13発基17号)。

 

↓ また…

 

労働基準法に定める基準は最低のものであるから、割増賃金の算定の基礎から除外し得る賃金を、その基礎に算入することは使用者の自由である

(昭23.2.20基発297号)。