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労働基準法(5)-2

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2  臨時の必要がある場合の時間外・休日労働 (法33条)   重要度●    

 

条文

 


1) 災害その他避けることのできない事由によって、臨時の必要がある場合*1においては、使用者は、行政官庁の許可を受けて、その必要の限度において第32条から前条まで若しくは第40条の労働時間を延長し、又は第35条の休日に労働させることができる。ただし、事態急迫のために行政官庁の許可を受ける暇がない場合においては、事後に遅滞なく届け出なければならない。

(平3択)(平22択)

 

2) 前項ただし書の規定による届出があった場合において、行政官庁がその労働時間の延長又は休日の労働を不適当と認めるときは、その後にその時間に相当する休憩又は休日を与えるべきことを、命ずることができる*2。

 

3) 公務のために臨時の必要がある場合*3においては、第1項の規定にかかわらず、官公署の事業(別表第1に掲げる事業を除く)に従事する国家公務員及び地方公務員については、第32条から前条まで若しくは第40条の労働時間を延長し、又は第35条の休日に労働させることができる。

 

 

ここをチェック

 

(1) 災害等による場合

 

□*1「災害等により臨時の必要がある場合」の時間外・休日労働は、民間企業等の業務において生ずることが想定される。

 


a) 就業規則等にその旨記載すること。

 

b) 行政官庁(所轄労働基準監督署長)の許可を受けること。

 

       

↓ なお…

 

事態急迫のために行政官庁の許可を受ける暇がない場合は、事後に遅滞なく届け出ることでも認められる。(平11択)

 

↓ また…

 

□*2 上記の事後報告について、行政官庁が、当該時間外・休日労働が不適当と認めるときは、行政官庁は、その後にその時間に相当する休憩又は休日を与えるべきことを命ずることができる(代休付与命令)。

 

(2) 公務による場合

 

□*3「公務のため臨時の必要がある場合」の時間外・休日労働は、官公署の事業(法別表第1に掲げる事業を除く)に従事する国家公務員および地方公務員のうち、労働基準法の適用を受ける者を想定している。

 

↓ この場合の…

 

「公務」とは、国、地方公共団体の事務のすべてをいい、臨時の必要があるか否かの認定については、使用者たる国、地方公共団体に委ねられている(昭23.9.20基収3352号)。

 

 

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advance

 

□派遣先の使用者は、派遣先の事業場において災害その他避けることのできない事由により臨時の必要がある場合には、派遣中の労働者に対し、法定労働時間外又は法定休日に労働させることができる。

 

↓ この場合に…

 

事前に行政官庁の許可を受け、又はその暇がない場合には事後に遅滞なく届出をする義務を負うのは、派遣先の使用者である(昭61.6.6基発333号)。(平9択)

 

□「災害その他避けることのできない事由」とは、災害、緊急、不可抗力その他客観的に避けることのできない場合の規定であるから、厳格に運用すべきものであって、その許可又は事後の承認は、概ね、次の基準によって取り扱う(昭26.10.11基発696号)。

 


認められるもの

 

認められないもの

 

 

□急病、ボイラーの破裂その他人命又は公益を保護するためのもの

 

□事業の運営を不可能ならしめるような突発的な機械の故障の修理

 

□電圧低下により保安等の必要があるとき

 

 

□単なる業務の繁忙その他これに準ずる経営上のこと

 

□通常予見される部分的な機械修理、定期的な手入れ

 

 

3  36協定による時間外・休日労働-1 (法36条1項本文)  重要度●●●

 

条文

 


使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合*1においては、第32条から第32条の5まで若しくは第40条の労働時間(以下この条において「労働時間」という)又は前条の休日(以下この項において「休日」という)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによって労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる

 

 

ここをチェック

 

□「36協定」には、次の事項を定めるものとされている(則16条)。

 


a) 時間外又は休日の労働をさせる必要のある具体的事由

 

b) 業務の種類

 

c) 労働者の数

 

d) 1日及び1日を超える一定の期間*2についての延長することができる時間又は労働させることができる休日(平14選)

 

e) 労使協定(労働協約である場合を除く)の有効期間*3(平8択)

 

 

□36協定は、事業場単位で締結し、当該事業場を管轄する労働基準監督署長に届け出ることを原則とする。

 

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↓ ただし…

 

◆36協定の本社一括届出について(平15.2.15基発0215002号)

 


次の要件を満たす場合に限り、各事業場の36協定を、本社の使用者が一括して届け出ることができる。なお、本社である事業場に係るものは本社の所在地を管轄する労働基準監督署長に、本社以外の各事業場に係るものについては本社の所在地を管轄する労働基準監督署を経由して各事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長に届け出ることとされている。

 


a) 各事業場の過半数で組織する労働組合が本社と同一であること。

 

b) 本社と協定の内容が同一(「協定の当事者である労働組合の名称又は労働者の過半数代表者の職名及び氏名」及び「使用者の職名及び氏名」もすべての協定について同一であることが必要)であること。

 

 

□*1「行政官庁(所轄労働基準監督署長)に届け出た場合」とは、届け出ることによって免罰的効力が生ずることを意味し、したがって、36協定を締結した場合であっても、届出をしない限り免罰的効力は発生しない。(平1択)(平12択)

 

ちょっとアドバイス

 

(1)*2「1日を超える一定の期間」について

 

□延長することができる時間を定めるに当たっての当該一定期間とは、「1日を超え3箇月以内の期間」及び「1年間」としなければならない(労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準(以下「延長の限度基準」とする)2条)。
(平17択)(平14選)