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労働基準法(1)-7

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4  均等待遇 (法3条)                                  重要度 ●● 

 

条文

 


使用者は、労働者の国籍、信条*1又は社会的身分*2を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件*3について、差別的取扱をしてはならない*4。

(平1択)(平11択)

 

 

ここをチェック

 

□*1「信条」とは、特定の宗教的又は政治的信念をいう。

 

□*2「社会的身分」とは、生まれながらの身分をいう。

 

□*3「その他の労働条件」には、労働契約の終了、災害補償、寄宿舎等に関する条件も含まれるが、雇入れ(採用)は含まれていない

 

□*4 本条の趣旨は「差別的取扱をしてはならない」のであって、就業規則等に差別規定が設けられていたとしても、現実にその規定に基づいて差別が行われていなければ、違反となるものではない。ただし、当該就業規則等の規定は、無効とされる。

 

ちょっとアドバイス

 

□何をもって有利とし、何をもって不利とするかは、一般の社会通念により判断し、また、労働者を有利に取扱っても不利に取扱っても差別的な取扱いとなる

 

□ここにいう「国籍、信条又は社会的身分」とは、限定的列挙であって、性別を理由とする差別的取扱いは禁止されていないが、法4条及び男女雇用機会均等法において抵触する可能性がある。(平14択)(平19択)

 

 

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判例チェック

 

◇採用の自由vs思想・信条の自由◇

 


□新規卒業者が試用期間(3箇月)の満了直前に、当該期間の満了時点で本採用を拒否する旨の通知を受けた。その際の採用拒否理由として、採用試験の際に提出した身上書における虚偽記載又は秘匿及び面接試験における虚偽回答行為が、詐欺(民法96条)に該当し、管理職要員としての適格性を否定するものと判断された。
(具体的には、学生時代に学生運動に関与したこと及び大学生協の役員歴があることの事実等を秘匿したことが問題となった)

 

↓ 判旨より抜粋…

 

a) 憲法14条1項(法の下の平等)・同19条(思想及び良心の自由)は、私人相互の関係を直接規律するものではない

 

b) 憲法22条(職業選択の自由)、同29条(財産権の不可侵)により、企業者には、原則として採用の自由が認められる。

 

c)「採用」は労働条件ではなく、したがって、採用差別は労働基準法3条違反とはいえない。

 

d) 採用差別は、公序良俗(民90条)、不法行為(民709条)にも違反しない。

 


*「公序良俗」とは、公の秩序又は善良の風俗のことで、これに反する事項を目的とする法律行為は無効となる。

 

*「不法行為」とは、故意又は過失によって他人の権利又は利益を侵害することで、これによって生じた損害は賠償する責任を負う(失火に関しては適用除外)。

 

      

  ↓ 以上のことから…

 

□企業者は、労働者の採否決定にあたり、労働者の思想・信条を調査し、そのため、その者からこれに関連する事項についての申告を求めることも、法律上禁止された違法行為とすべき理由はない
労働基準法3条は労働者の信条によって賃金その他の労働条件につき差別することを禁じているが、これは、雇入れ後における労働条件についての制限であって雇入れそのものを制約する規定ではない(三菱樹脂事件・昭48.12.12最高裁大判)。(平9択)(平21択)