前のページへ | 次のページへ | 目次へ

厚生年金保険法(5)-12

仮画像

テキスト本文の開始

 

 

 

8  加算の特例-1 (経過的寡婦加算・昭60法附則73条)    重要度 ●   

 

outline

 

◆経過的寡婦加算の意義

 


 

中高齢寡婦加算額は、定額制(遺族基礎年金の額×3/4)であるのに対し、老齢基礎年金の額は「加入期間」が反映する年金である。


↓ したがって…


受給権者の生年月日による加入可能な期間によっては、65歳を前後して年金額の急激な低下が生ずることが考えられるため、中高齢寡婦加算額の水準を保障する趣旨で設けられている。

 

 

条文

 


1) 中高齢寡婦加算の額が加算された遺族厚生年金の受給権者であって昭和31年4月1日以前に生まれたもの*1(死亡した厚生年金保険の被保険者又は被保険者であった者の妻であった者に限る)がその権利を取得した当時65歳以上であったとき、又はその額が加算された遺族厚生年金の受給権者が65歳に達したときは、当該遺族厚生年金の額は、遺族厚生年金の額に、次の額を加算した額とする。(平4択)(平14択)

 

 

ちょっとアドバイス

 

□*1 なぜ、昭和31年4月1日以前に生まれたものが対象となるのか?

 


「昭和31年4月1日以前に生まれたもの」は、新法施行日(昭和61年4月1日)において満30歳以上の者である。

 

 

-----------------(183ページ目ここから)------------------

      

  ↓ ということは…


60歳に達するまでの残りが30年未満であり、強制被保険者としての加入期間だけでは中高齢寡婦加算相当額の老齢基礎年金額(少なくとも360/480月が必要)に達することができないことを考慮したもの。

 

 

advance

 

□当該遺族厚生年金の受給権者が、次のいずれかに該当する場合は、その間、当該加算する額に相当する部分の支給を停止する(1項ただし書き、2項)。

(平18択)

 


a) 国民年金法による障害基礎年金又は旧国民年金法による障害年金の受給権を有するとき(その支給を停止されているときを除く)


b) 同一の支給事由に基づく国民年金法による遺族基礎年金の支給を受けることができるとき

 

 

□中高齢寡婦加算の額が加算された遺族厚生年金の受給権者が65歳に達した場合における年金の額の改定は、その者が65歳に達した日の属する月の翌月から行う(3項)。

 

□*2 老齢基礎年金の額に「乗じる数」は、次のとおりである(昭60法附則別表第9)。

 


妻の生年月日

 

 

乗数

昭和2年4月1日以前に生まれた者

 

0

 

 

昭和2年4月2日から昭和3年4月1日までの間に生まれた者

 

 

312分の 12

 

 

昭和3年4月2日から昭和4年4月1日までの間に生まれた者

 

 

324分の 24

 

//

 

//

 

 

昭和28年4月2日から昭和29年4月1日までの間に生まれた者

 

480分の324

 

昭和29年4月2日から昭和30年4月1日までの間に生まれた者

 

480分の336

 

昭和30年4月2日から昭和31年4月1日までの間に生まれた者

 

480分の348

 

【計算に用いる乗数の意味は?】

 

 

 

9  加算の特例-2 (妻と子の特例・昭60法附則74条)      重要度 ●   

 

outline

 

◆遺族基礎年金を受けられないときの加算

 


「子のある妻」又は「子」であるにもかかわらず、遺族厚生年金の受給権のみが発生し、遺族基礎年金の受給権は発生しないという特殊な場合がある(一般的には、子がいるのだから、2階建て年金の支給となるはずであるが…)。


↓ 具体的には、例えば、次のいずれにも該当するとき…

 


a) 障害厚生年金(障害等級1級又は2級)の受給権者であること


b) 老齢基礎年金の受給権者でないこと(受給資格期間も満たしていない若年者)


c) 海外に居住し、国民年金法の被保険者となっていないこと

 

 

-----------------(184ページ目ここから)------------------

 

    ↓ この場合…


当該障害厚生年金の受給権者の死亡について、遺族厚生年金の受給権は発生するが、遺族基礎年金の支給要件のいずれにも当てはまらないことから、遺族厚生年金のみが支給されるという特殊なケースが生ずることになる。


↓ そこで…


このような夫が死亡した場合、厚生年金保険法から遺族基礎年金額及び子の加算額相当額が、遺族厚生年金に特例加算されるというもの(結果的には、遺族基礎年金と併せて受給している場合と同額となる制度)。*当然、妻も子も、本来の「遺族の範囲」に該当する者であること。