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厚生年金保険法(1)-1

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テキスト本文の開始

 

「厚生年金保険法」学習を始める前に

 

厚生年金保険法とは

厚生年金保険法は、労働者の老齢、障害又は死亡について保険給付を行い、労働者及びその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とし、あわせて厚生年金基金がその加入員に対して行う給付に関して必要な事項を定めた法律です。
労働者年金保険法を前身とし、その適用範囲を事務職員及び女性労働者に拡大したことに伴い、昭和19年10月に「厚生年金保険法」と改称されました。昭和29年の全面改正(旧法)を経て、昭和60年の公的年金制度の抜本的な改革に伴い、昭和61年4月に基礎年金を1階部分とし、その上乗せとして支給される現在の体系(新法)となりました。
近年においても、社会経済情勢等の変化に対応し、将来にわたって安定した持続可能な制度とすべく様々な改正が行われています(年金制度の沿革については、一般常識(社一)テキストを参照のこと)。

 

本試験について

 

<択一式>

 

択一式の出題数は合計10問(50肢)です。10点満点中4点以上をとることが合格への最低ラインとなります。
出題傾向としては、過去問(国民年金法と共通の部分も含む)を題材にしたものが多いといえます。ただし、日本年金機構が設立されたため、行政官職名でひっかけるような単純な出題は減り、より一層条文の要件を的確に理解しているかを問われることになりました。
択一式対策としては、まず本書掲載の過去問をもとに出題実績のある条文の要件を正確に押さえ、徐々にその周辺にまで知識を広げていくとよいでしょう。年金制度全体を完璧に把握しようとすると国民年金法以上に難解です。試験対策であると割り切り、ピンポイントで理解できれば十分です。また、厚生年金保険法には、特に、経過措置や救済規定が多数あり、そうした措置の内容について、目的や理由に関連づけて覚えていくことも大切です。最終的には、6~7点の獲得を目指しましょう!

 

<選択式>

 

選択式の出題数は5問です。5点満点中3点以上をとることが合格への最低ラインとなります。
出題傾向としては、改正点や、その年度に話題となった事項からの出題が多いことが挙げられます。したがって、法改正部分は必須事項です。また、具体的事例を示してあてはめるような出題がされた場合に備え、単なる暗記から一歩踏み込んだ学習もしておきたいところです。まずは、本書の太字箇所を押さえておきましょう。
これから先の学習において、模擬試験などでも最も苦労をする科目だと考えられますが、詳細を気にするとキリがありません。とにかく、他の受験生が得点した箇所を絶対に落さないという堅実さを心掛けるようにしてください。

 

各章のポイント

 

本書に記載の重要度を基準に、メリハリをつけて学習して下さい。具体的には、以下の点に注意して学習に取り組んでみましょう。厚生年金保険法は、重要条文の要件をどれだけ正確に理解できたかが重要です。早い段階からポイントを整理していきましょう。

 

第1章

総則

 

「報酬」、「賞与」など、他の科目の類義語と知識が混同しないようにすること。

 

第2章

被保険者

 

ほぼ毎年出題される。4種類の被保険者に係る資格要件を整理し、確実に得点できるようにしておこう!

 

第3章

標準報酬月額

及び

標準賞与額

 

健康保険法とあわせてみると毎年どちらかで出題される。2法における相違点の整理は必須。また、数字・改正項目など素材の宝庫であることから、選択式対策も視野に入れた学習を心がけたい。<詳細は「健康保険法」において学習する>

 

第4章

届出等

 

ほぼ毎年数肢の出題があり、提出期限(数字部分)の誤りなど詳細が作問されることもあるが、本書のまとめ表において要点が整理できる。問題を解く都度、まとめ表に立ち返って知識を定着させたい。

 

第5章

保険給付

 

最重要頻出箇所。本章については、ほぼ満遍なく出題がある。老齢厚生年金・障害厚生年金・遺族厚生年金について、国民年金法と同様、①支給要件、②支給額、③支給停止要件、④失権要件の理解と記憶に努め、国民年金法との相違点も含めて、きちんと整理していこう。まずは、本書の重要度に沿って学習を進めればよいが、この分野に限っては、●一つでも、過去問や答練、模擬試験等で出題があれば、必ずその都度本書で確認するようにしてほしい。なお、厚生年金保険の学習が済まないとわかりにくかった国民年金の諸制度についても、ここで復習すること。

 

第6章

 

積立金の運用

及び

費用の負担

 

 

保険料の関連事項について、毎年数肢の出題がある。ただし、本書の重要度と過去の出題箇所を中心に、メリハリをつけて学習してもよいパートである。

第7章

不服申立て等

 

択一式でほぼ毎年出題がある。「不服申立て」については過去問がすべて!「時効」については、重要度に従い、過去問をベースに学習すれば十分である。

 

第8章

厚生年金基金

及び

企業年金連合会

 

毎年出題があり、目立たないが重要なカテゴリー。難解な用語など専門用語も数多く登場するが、詳細にこだわることなく、重要度に従ってメリハリをつけた学習に心がけよう。

 

 

学習前のアドバイス!

 

かなり分厚い本書ですが、勉強が進んでいくと、すき間時間で読みこなせるようになります。そのときを意識して、さまざまな「情報」は本書に集約していきましょう。
講義やその復習(過去問・テキスト読み込み)は、一定のリズムでこなし、早めに自分のペースにあった学習スタイルを確立しましょう。
学習中に生じた疑問点は、「同志たちの掲示板」などを活用し、その場で解決していくと記憶にも残りやすく効果的です。

 

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第 1 章

総  則

第1節  総則    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2  

 

 

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第1節 総則

 

1  目的等 (法1条~法2条の4)                        重要度 ●   

 

条文

 

(1) 厚生年金保険の目的 (法1条)

 


この法律は、労働者の老齢、障害又は死亡について保険給付を行い、労働者及びその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とし、あわせて厚生年金基金がその加入員に対して行う給付に関して必要な事項を定めるものとする。(平10択)

 

 

(2) 管掌 (法2条)

 


厚生年金保険は、政府が、管掌する。

 

 

(3) 年金額の改定 (法2条の2)

 


この法律による年金たる保険給付の額は、国民の生活水準、賃金その他の諸事情に著しい変動が生じた場合には、変動後の諸事情に応ずるため、速やかに改定の措置が講ぜられなければならない。

 

 

(4) 財政の均衡 (法2条の3)

 


厚生年金保険事業の財政は、長期的にその均衡が保たれたものでなければならず、著しくその均衡を失すると見込まれる場合には、速やかに所要の措置が講ぜられなければならない。

 

 

(5) 財政の現況及び見通しの作成 (法2条の4)

 


1) 政府は、少なくとも5年ごとに、保険料及び国庫負担の額並びにこの法律による保険給付に要する費用の額その他の厚生年金保険事業の財政に係る収支についてその現況及び財政均衡期間における見通し(以下「財政の現況及び見通し」という)を作成しなければならない。


2) 財政均衡期間は、財政の現況及び見通しが作成される年以降おおむね100年間とする。


3) 政府は、第1項の規定により財政の現況及び見通しを作成したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

 

 

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2  用語の定義 (法3条)                                重要度 ●● 

 

条文

 


1) この法律において、次に掲げる用語の意義は、それぞれイ~ニに定めるところによる。

 


イ)「保険料納付済期間」とは、国民年金法第5条第2項*1に規定する保険料納付済期間をいう。(平13択)

 

 

ロ)「保険料免除期間」とは、国民年金法第5条第3項*2に規定する保険料免除期間をいう。 (平13択)

 

 

ハ)「報酬」とは、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのものをいう*3。ただし、臨時に受けるもの及び3月を超える期間ごとに受けるものは、この限りでない。(平1択)(平2択)(平22択)

 

 

ニ)「賞与」とは、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が労働の対償として受けるすべてのもののうち、3月を超える期間ごとに受けるものをいう。(平22択)

 

 

2) この法律において、「配偶者」、「夫」及び「妻」には、婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含むものとする。
(平3択)(平9択)(平22択)

 

 

ちょっとアドバイス

 

□*1「国民年金法第5条第2項」の規定とは、国民年金の第1号被保険者としての被保険者期間のうち納付された保険料(督促及び滞納処分の規定により徴収された保険料を含み、申請一部免除の規定によりその一部の額につき納付することを要しないものとされた保険料につきその残余の額が納付又は徴収されたものを除く)に係るもの、第2号被保険者としての被保険者期間及び第3号被保険者としての被保険者期間を合算した期間である。

□*2「国民年金法第5条第3項」の規定とは、保険料全額免除期間、保険料4分の3免除期間、保険料半額免除期間及び保険料4分の1免除期間を合算した期間である。

 

□*3 労働協約により「私傷病手当金」を支給することとした場合は、当該手当金は、報酬に含まれる(昭39.12.21庁保険発46号)。(平16択)


↓ なお…


□傷病に関し事業主が恩恵的に支給する「見舞金」は、原則として、報酬に含まれない(昭18.1.27保発303号)。

 

◆日本年金機構の設立


□平成22年1月1日より「日本年金機構」が開設され、これに伴い社会保険庁は廃止された。したがって、改正前厚生年金保険法の本則及び附則中の「社会保険庁長官」は、現在「厚生労働大臣」と改正されている。

 

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※テキスト4ページ~6ページは、過去問掲載ページです。WEB上での掲載はございません