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国民年金法(2)-11

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テキスト本文の開始

 

 

2  裁定 (法16条)                                     重要度 ●    

   

条文

 


給付を受ける権利は、その権利を有する者(以下「受給権者」という)の請求に基いて、厚生労働大臣が裁定する。(平5択)(平8択)(平11択)(平20択)

 

 

ちょっとアドバイス

 

◆裁定請求とは?

 


Step.1「基本権」の発生
年金給付を受ける権利(受給権)は、例えば、「老齢」ならば65歳に達したとか、「障害」ならば障害等級に該当するというように、各給付の支給要件を満たしたとき(支給事由が生じた日)に、法律上当然に発生する。
*原則的には、「請求する」ことによって得るものではない。

 

 

Step.2「支分権」の確定
実際に、年金を受給するためには、受給権者(支給事由を満たした者)が基本権の確認とあわせて、いつからいくら支給されるのかという「支分権の決定」を受けなければならない。


↓ この…


一連の手続を、年金給付の「裁定請求」という。
*受給権が確認されると、「年金裁定通知書」と「年金証書」が交付される。

(平22択)

 

 

 

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3  端数処理 (法17条)                                 重要度 ●    

   

条文

 


1) 年金たる給付(以下「年金給付」という)を受ける権利を裁定する場合又は年金給付の額を改定する場合において、年金給付の額に50円未満の端数が生じたときは、これを切り捨て、50円以上100円未満の端数が生じたときは、これを100円に切り上げるものとする。(平5択)


2) 前項に規定するもののほか、年金給付の額を計算する場合において生じる1円未満の端数の処理については、政令で定める*1。

 

 

ちょっとアドバイス

 

□具体的には、「年金額×改定率」の額について、50円未満の端数を切り捨て50円以上100円未満の端数を100円に切り上げるものとする(法27条ほか)。

 

↓ なお…


□振替加算額(昭60法附則14条)及び子の加算額(法33条の2ほか)についても同様であるため、下、本書においてはこの規定を「端数処理あり」と省略して表記する

 

advance

 

◆*1「年金給付の額」を計算する場合において生じる端数処理 (令4条の3)

 


年金たる給付の額を計算する過程において、50銭未満の端数が生じたときは、これを切り捨て、50銭以上1円未満の端数が生じたときは、これを1円に切り上げることができる。ただし、この規定を適用して裁定又は改定した年金たる給付の額とこの規定を適用しないで裁定又は改定した年金たる給付の額との差額が100円を超えるときは、この端数の処理は行わない。(平22択)

 

 

4  年金の支給期間及び支払期月 (法18条)               重要度 ●    

   

条文

 


1) 年金給付の支給は、これを支給すべき事由が生じた日の属する月の翌月から始め、権利が消滅した日の属する月で終るものとする。
(平5択)(平9択)(平11択)(平13択)


2) 年金給付は、その支給を停止すべき事由が生じたときは、その事由が生じた日の属する月の翌月からその事由が消滅した日の属するまでの分の支給を停止する。ただし、これらの日が同じ月に属する場合は、支給を停止しない。

(平22択)


3) 年金給付は、毎年2月、4月、6月、8月、10月及び12月の6期に、それぞれの前月までの分を支払う。ただし、前支払期月に支払うべきであった年金又は権利が消滅した場合若しくは年金の支給を停止した場合におけるその期の年金は、その支払期月でない月であっても、支払うものとする。(平5択)

 

 

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advance

 

□「老齢福祉年金」は、毎年4月、8月及び12月(12月に支払われるべき年金につき受給権者が請求した場合は、11月)の3期に分けて支払うものとする(昭60法附則32条1項・4項、旧国民年金法79条の2第5項)。(平17択)

 

5  死亡の推定 (法18条の2)                           重要度 ●    

 

条文

 


船舶が沈没し、転覆し、滅失し、若しくは行方不明となった際現にその船舶に乗っていた者若しくは船舶に乗っていてその船舶の航行中に行方不明となった者の生死が3箇月間分らない場合又はこれらの者の死亡が3箇月以内に明らかとなり、かつ、その死亡の時期が分らない場合には、死亡を支給事由とする給付の支給に関する規定の適用については、その船舶が沈没し、転覆し、滅失し、若しくは行方不明となった日又はその者が行方不明となった日に、その者は、死亡したものと推定する。
(平1択)(平7択)(平12択)(平14択)(平18択)(平22択)
航空機が墜落し、滅失し、若しくは行方不明となった際現にその航空機に乗っていた者若しくは航空機に乗っていてその航空機の航行中に行方不明となった者の生死が3箇月間分らない場合又はこれらの者の死亡が3箇月以内に明らかとなり、かつ、その死亡の時期が分らない場合にも、同様とする。(平18択)

 

 

6  失踪宣告の場合の取扱い (法18条の3)               重要度 ●    

   

条文

 


失踪の宣告を受けたことにより死亡したとみなされた者に係る死亡を支給事由とする給付の支給に関する規定の適用については、「死亡日」とあるのは「行方不明となった日」とし、「死亡の当時」とあるのは「行方不明となった当時」とする。ただし、受給権者又は給付の支給の要件となり、若しくはその額の加算の対象となる者の身分関係、年齢及び障害の状態に係るこれらの規定の適用については、この限りでない。

 

 

ちょっとアドバイス

 

□「死亡の推定に係る行方不明」以外の行方不明については、「失踪宣告」を受けた時点(普通失踪の場合、原則として、7年を経過した日)において死亡したものとみなす(民法30条、31条)。(平18択)

 


行方不明となった日

 

死亡したとみなされる日

a) 被保険者の資格   

 

b) 保険料納付要件


c) 生計維持関係

 

a) 死亡者との身分関係     

 

b) 遺族の年齢

 

c) 遺族の障害の状態

 

 

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7  未支給年金 (法19条)                               重要度 ●    

   

条文

 


1) 年金給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき年金給付でまだその者に支給しなかったものがあるときは、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹であって、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の年金の支給を請求することができる。(平6択)(平13択)(平19択)


2) 前項の場合において、死亡した者が遺族基礎年金の受給権者であったときは、その者の死亡の当時当該遺族基礎年金の支給の要件となり、又はその額の加算の対象となっていた被保険者又は被保険者であった者の子は、同項に規定する子とみなす*1。(平20択)


3) 第1項の場合において、死亡した受給権者が死亡前にその年金を請求していなかったときは、同項に規定する者は、自己の名で、その年金を請求することができる。(平18択)


4) 未支給の年金を受けるべき者の順位は、第1項に規定する順序による。

(平5択)


5) 未支給の年金を受けるべき同順位者が2人以上あるときは、その1人のした請求は、全員のためその全額につきしたものとみなし、その1人に対してした支給は、全員に対してしたものとみなす。(平8択)

 


ここで具体例!

 

◆*1 未支給の遺族基礎年金に係る「みなしの子」とは?

 


【原則的な基礎知識】
「妻」が遺族基礎年金の受給権を得るためには、被保険者(つまり、死亡した夫)の「子」と生計同一関係になければならない(他の要件は省略)。

 

 

 

↓ このように…


夫との間に婚姻の届出はあったが、夫の子との間には養子縁組をしていなかった者であっても、その子(「継子」という)と生計を同じくするならば、妻は受給権者となれる(遺族基礎年金は、被保険者(夫)に代わって被保険者の子を育てていくための養育費の役割がある)。


↓ そして…


このケースにおいて、「妻」が未支給の遺族基礎年金を残して死亡した場合、その継子は「妻の子」とみなされて、当該未支給年金の請求権を有することとなる。