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労働保険徴収法(1)-1

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第 1 章

総  則

第1節  趣旨及び定義    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2  
第2節  適用事業の範囲    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 

 

 

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第1節  趣旨及び定義

 

1  趣旨 (法1条)                                      重要度 ●   

 

条文

 


この法律は、労働保険の事業の効率的な運営を図るため、労働保険の保険関係の成立及び消滅、労働保険料の納付の手続、労働保険事務組合等に関し必要な事項を定めるものとする。

 

 

2  定義 (法2条)                                      重要度 ●●●

 

条文

 


1) この法律において「労働保険」とは、労働者災害補償保険法(以下「労災保険法」という)による労働者災害補償保険(以下「労災保険」という)及び雇用保険法による雇用保険(以下「雇用保険」という)を総称する。


2) この法律において「賃金」とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかんを問わず、労働の対償として事業主が労働者に支払うもの(通貨以外のもので支払われるものであって、厚生労働省令で定める範囲外のものを除く)をいう。


3) 賃金のうち通貨以外のもので支払われるもの*1の評価に関し必要な事項は、厚生労働大臣が定める。(平14択)


4) この法律において「保険年度」とは、4月1日から翌年3月31日までをいう。

 

 

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(1) 労働保険の全体構造

 


【労働保険】


 

【労災保険法】
労働基準監督署

 

保険給付

 

 

社会復帰促進等事業

 

 

【雇用保険法】
公共職業安定所

 

失業等給付

 

 

雇用保険二事業

 

 

【労働保険徴収法】

 

保険適用・労働保険料の徴収

 

 

【権限の委任 (法45条)】


この法律に定める厚生労働大臣の権限は、厚生労働省令で定めるところにより、その一部を都道府県労働局長に委任することができる。

 

 

 

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◆権限委任事務 (則76条) 

 

前年改正

 


法に定める次に掲げる厚生労働大臣の権限は、都道府県労働局長に委任する。

 

 

a) 法第8条第2項(下請負事業の分離)の規定による認可に関する権限


b) 法第9条(継続事業の一括)の規定による認可及び指定に関する権限


c) 法第33条第2項(労働保険事務組合)の規定による認可、同条第3項(業務の廃止)の規定による届出の受理及び同条第4項(不当な事務処理等)の規定による認可の取消しに関する権限 (平2択)


d) 法第26条第2項(特例納付保険料の納付等)の規定による勧奨及び同条第3項の規定による申出の受理に関する権限

 

 

(2)「賃金」の性質

 


徴収法上の「賃金」とは、簡単に言えば、保険料計算の基礎とするか否(保険料がかかる金銭か否か)ということである。


↓ 原則として…


福利厚生的な性質の金銭は、どんなに手厚くても「賃金」とはならない。

 


(例)社会保険料に係る事業主負担分は、法定福利費とされており「賃金」とはならない。

 

       

↓ 反対に…


「賃金」と解される金銭は、どんなに少額でも保険料がかかる

 

 

ここをチェック

 

◆「賃金」の範囲のまとめ


(1) 賃金と解されるもの

 


□休業手当(労働基準法26条)(平1択)


□住宅手当、通勤手当(定期券、回数券も含む)、役職手当、扶養手当、物価手当、深夜手当


□単身赴任手当、勤務地手当、宿日直手当、超過勤務手当、休日手当、年次有給休暇日の給与


□労働者が業務外の疾病又は負傷で休業中に労働協約等の定めにより事業主から支給されるもの(いわゆる私傷病手当)(平16択)


↓ なお…

 


私傷病による休業中、恩恵的な見舞金として支給される場合は、賃金とならない

 

 

□所得税、社会保険料等の労働者負担分を、労働協約等の定めにより事業主が負担したもの(平1択)(平7択)


□臨時に支払われる賃金及び3箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与)
(平13択)(平17択)


□いわゆる前払い退職金(労働者の在職中に、退職金相当額の全部又は一部を給与や賞与に上乗せするなどして前払いされるもの)


□さかのぼって昇給したことによって受ける給与(昇給差額)etc.

 

 

□*1 賃金に算入すべき「通貨以外のもので支払われる賃金」(現物給与)の範囲は、食事、被服及び住居の利益のほか、所轄労働基準監督署長又は所轄公共職業安定所長の定めるところによる(則3条)。(平1択)(平19択)

 

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(2) 賃金と解されないもの

 


□休業補償(労働基準法76条)(平3択)(平16択)


↓ この場合…

 


当該額が平均賃金の60%を超えた場合であっても、その超えた額を含めて賃金とはならない(昭25.12.27基収3432号)。(平1択)(平5択)

 

 

□解雇予告手当(労働基準法20条)


□傷病手当金(健康保険法99条)


□事業主が全額負担する生命保険の掛金


□退職金(退職を事由として支払われるものであって、退職時に支払われるもの又は事業主の都合等により労働者の退職前に一時金として支払われるもの)

 

 

□任意的なもの、恩恵的なもの、実費弁償的なもの(昭22.9.13発基17号)
(労働の対償として支払われるものではないから)


↓ 具体的には…

 


a) 結婚祝金、私傷病見舞金、死亡弔慰金等


b) 出張旅費、宿泊費、制服・作業着の貸与、住宅の貸与等


c) 財産形成貯蓄のため事業主が負担する奨励金等(平1択)


↓ なお…


a)については、労働基準法上の取扱いと異なり、労働協約等によって事業主にその支払が義務づけられるものであっても賃金とならない

(昭25.2.16基発127号)。

 

 

□チップ


↓ ただし…

 


事業主が定めた奉仕料が一旦客から徴収し、集計された後に再分配されるものは賃金となる(昭39.5.21基収3343号)。(平10択)

 

 

(3) 現物給与の判断

 


a) 被服の利益 (平7択)
労働者が業務に従事するため支給される作業衣又は業務上着用することを条件として支給し若しくは貸与(レンタル)する被服の利益は、賃金にあたらな

(昭23.2.20基発297号)。

 

 

b) 住居の利益(住宅貸与の利益)


原則としては、福利厚生施設とみなされるため、一部の者にのみ住宅が貸与されていても、他の者に何ら均衡手当(現物の利益を受けられない者に対する調整手当金的な金銭のことで、名称を問わず、その金銭の性質により判断する)が支給されていない場合には、当該住宅貸与の利益は、賃金にあたらない

(昭28.10.16基収2386号)。