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労働安全衛生法(1)-1

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「労働安全衛生法」学習を始める前に

 

労働安全衛生法とは

労働安全衛生法は、職場における労働者の安全及び健康の確保と、快適な職場環境の形成の促進とを目的として、安全衛生管理体制、労働者を危険や健康障害から守るための措置、機械や危険物・有害物に関する規制、労働者に対する安全衛生教育、労働者の健康を保持増進するための措置等を定めた法律です。
この法律は、昭和47年に、急激に変化する産業社会の実態に災害防止対策が即応すべく、労働基準法の「安全及び衛生」の章と労働災害防止団体等に関する法律の「労働災害防止計画」及び「特別規制」を統合したものを母体とし、新たに規制事項や国の援助措置等の規定を加える形で制定されました。
近年は、企業間競争の激化や労働者の働き方の多様化により、自主的な安全衛生活動の不足に伴う重大災害の発生や、業務の集中する年齢層の長時間労働に伴う健康障害の増加など労働者の生命や生活に関わる問題に対応すべく、そうした観点からの様々な改正が行われています。また、メンタルヘルスに関連した対策について、事業者の責務を強化することが検討されています。

 

本試験について

 

<択一式>

択一式の出題数は3問(15肢)です。出題は、労働基準法7問の後に続く3問となっており、2科目を併せて10点満点中4点以上をとることが合格への最低ラインとなります。
出題傾向としては、近年では、条文や規則の内容を問うオーソドックスなものが目立ちますが、過去においては難問奇問の出題もありました。
択一式対策としては、まずは、本書掲載の過去問を押さえることがあげられます。その上で本書のその他の内容を覚えることに重点を置き、あまりにも細かい規則等が問われた場合には「捨て問」にする勇気も必要です(その分、労働基準法に時間を割いた方がよい)。また、類似する制度を比較して覚えておくことで、要件を入れ替えた問題では確実に得点したいところです。目標としては、1~2点、最終的には「労働基準法と併せて4点以上取れればよし!」と考えましょう。

 

<選択式>

選択式の出題数は、例年2問です。労働基準法と合わせて、5点満点中3点以上をとることが合格への最低ラインとなります。
近年の出題は、条文のキーワードや語尾の穴埋めが多いようですが、判例や通達からの出題もあります。ただし、あいまいな記憶で選択肢から正答を見つけ出すことは難しく、2文字以上のキーワードと語尾を意識しつつ、本書で太字になっている箇所を正確に覚えるしか対策がありません。労働基準法の難易度次第では、この科目で勝負しなければならないときもあるでしょう。択一式対策としても有効ですから、リスクはありますがここは精神的にめげることなくがんばるしかありません。

 

各章のポイント

本書に記載の「重要度」を判断の目安として、メリハリをつけて学習して下さい。具体的には、以下の点に注意して根気よく取り組みましょう。労働安全衛生法は、類似用語の比較による知識の整理が得点を重ねることへの近道です。まずは、校内テストに向け、知識の整理と暗記を試みて“敵”を知ることから始めましょう。

 

第1章

総則

 

択一の出題実績は少ないが、選択式では出題が目立つ。キーワードと語尾には注意したい

(特に未出題箇所)。

 

第2章

労働災害

防止計画

 

出題実績は全くないが、選択式対策だけはやっておきたい。

 

第3章

安全衛生管理体制

 

頻出事項。管理者等に係る選任規模や業種、資格ごとの要件などを本書のまとめ等を活用して覚えること。試験独特の緊張状態でダミーの選択肢を選んでしまわないように、選択肢を見極める実力と注意力が必要である。

 

第4章

労働者の危険又は健康障害を防止するための措置

 

択一式のみならず、選択式問題を作成しやすい条文が多いのでその対策が必要である。「だれ」が「何」を「しなければならない」のか「できる」のか等をまとめておきたい。

 

第5章

機械等並びに危険物及び有害物に関する規制

 

近年の出題頻度は少ないが、平成初期には隔年単位で出題されていたこともある。本書の出題実績をもとに、まずは、出題された制限事項に関し学習しておくこと。

 

第6章

労働者の就業に当たっての措置

 

択一式では隔年単位で出題があるも、選択式は未出題であるため、万一のため、太字箇所潰しは必要であろう。

 

第7章

健康の保持増進のための措置

 

頻出事項。近年、健康診断等に絡んだ改正も多いことから、優先的に学習すべきカテゴリー(選択式対策も必須)。各制度を比較し、相違点を把握しておきたい。

 

第8章

 

免許等・監督等

 

 

出題は第2節、第3節に偏っている。本書の重要度を参考に、太字箇所を学習しておけばよい。

 

第9章

雑則・罰則

 

出題は少ない。過去の出題実績に応じた学習で足りる。第1章~第8章で学んできた義務規定に反するとどんな罰則があるのかを確認することで、努力規定との違いが認識できる。

 

 

学習前のアドバイス!

講義やその復習(過去問・テキスト読み込み)は、一定のリズムでこなし、早めに自分のペースにあった学習スタイルを確立しましょう。
学習中に生じた疑問点は、「同志たちの掲示板」などを活用し、その場で解決していくと記憶にも残りやすく効果的です。ゴロなども思いついたらぜひ投稿してください。

 

 

第 1 章

総  則

第1節  総則    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2

 

 

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第1節  総則

 

1  目的 (法1条)                     重要度 ●   

 

条文

 


この法律は、労働基準法と相まって、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする。

(平12択)(平10記)

 

 

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◆関係法令の位置づけ

 

 

2  用語の定義 (法2条)                   重要度 ●   

 

条文

 


この法律において、次のイ~ホに掲げる用語の意義は、それぞれ当該定めるところによる。(平12択)

 


イ) 労働災害

 

労働者の就業に係る建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等により、又は作業行動その他業務に起因して、労働者が負傷し、疾病にかかり、又は死亡することをいう。

 

ロ) 労働者

 

労働基準法9条に規定する労働者(同居の親族のみを使用する事業又は事務所に使用される者及び家事使用人を除く)をいう。

 

ハ) 事業者*1

 

事業を行う者で、労働者を使用するものをいう。

 

ニ) 化学物質

 

元素及び化合物をいう。

 

ホ) 作業環境 測定*2

 

作業環境の実態を把握するため空気環境その他の作業環境について行うデザイン、サンプリング及び分析(解析を含む)をいう。

 

 

 

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ちょっとアドバイス

 

□*1「事業者」とは、その事業における経営主体のことをいう。


↓ したがって…


個人事業の場合にはその事業主個人、会社その他の法人の場合には法人そのものとされ、労働基準法の「使用者」とは異なる部分がある。(平15択)

 

advance

 

□*2「作業環境測定」の用語に関しては、次のとおりである

(昭50.8.1基発448号)。

 


a)「デザイン」とは、測定対象作業場の作業環境の実態を明らかにするために当該作業場の諸条件に即した測定計画をたてることをいい、その内容としては、生産工程、作業方法、発散する有害物の性状その他作業環境を左右する諸因子を検討して、サンプリングの箇所、サンプリングの時間及び回数、サンプリングした試料を分析するための前処理の方法、これに用いる分析機器等について決定することをいうものであること。


b)「サンプリング」とは、測定しようとする物の捕集等に適したサンプリング機器をその用法に従って適正に使用し、デザインにおいて定められたところにより試料を採取し、必要に応じて分析を行うための前処理、例えば、凍結処理、酸処理等を行うことをいうものであること。


c)「分析(解析を含む)」とは、サンプリングした試料に種々の理化学的操作を加えて、測定しようとする物を分離し、定量し、又は解析することをいうものであること。