社労士/労災保険法1-14 | 初級INPUT講座2011年度向けテキスト

社労士合格を目指す受験生を応援!2011年度向けテキストを完全公開!「労災保険法1-14:住居」

前のページへ | 次のページへ  | 目次へ 

労災保険法(1)-14

---- 山川予備校事務局 よりお知らせ ----

山川靖樹先生の講義をご覧になる場合は会員登録が必要になります。「山川靖樹の社労士予備校」HPトップから登録画面に進んでください。

テキスト本文の開始

 

 

advance

 

◆用語解説と具体例 (昭48.11.22基発644号)

 

(1) 住居 <労働者が居住している日常生活及び就業のための拠点>

 


OK

 

a) 本宅が会社等と非常に離れている等就業の必要性があって、本宅とは別に就業の場所の近くに単身でアパートを借りたり、下宿をしてそこから通勤している場合

 

b) 通常は本宅から通勤するが、別にアパート等を借りていて、早出や長時間の残業の場合にアパートに泊まり、そこから出勤する場合(本宅とアパートの双方が住居と認められる)

 

c) 長時間の残業や、早出出勤及び新規赴任、転勤のため等の勤務上の事情や、交通ストライキ等の交通事情、台風などの自然現象等の不可抗力的な事情により、一時的に、住居以外の場所、例えば旅館やホテルなどに宿泊する場合(一時的に住居の場所を移していると認められる)

 

d) 単身赴任者等が、就業の場所と本宅との間を往復する場合において、その往復行為に反復・継続性が認められるとき(おおむね毎月1回以上往復行為があるとき)は、当該本宅は住居として認められる(平11択)

 

e) 「アパート」は、アパートの外戸が住居と通勤経路との境界であるため、アパートの階段は、通勤の経路と認められる

 

 

NG

 

a) 友人宅で麻雀をし、そのまま泊まり、翌朝そこから直接出勤する場合

 

b) 「一戸建て」の屋敷構えの住居は、敷地内に入る地点が住居と通勤との境界であるため、たとえ玄関先の石段で転倒し負傷したとしても通勤災害とは認められない

 

-----------------(27ページ目ここから)------------------

 

□(認められた事例)被災労働者は、夫の入院先である病院に宿泊し、翌朝、当該病院より勤務先への出勤途中、路面が凍結しアイスバーン状になっているところを歩行中に転倒し、尾骨部を地面に打ち負傷したものである。なお、被災労働者は、入院中の夫の看護のため、勤務のかたわら母親と1日交替で看護にあたっていた。交替で看護にあたっていた間は、通勤経路は自宅から勤務先に出勤し、業務終了後、当該病院へ行き看護にあたり、翌日は当該病院から直接勤務先へ出勤し、業務終了後自宅へ帰るという態様を繰り返していた(昭52.12.23基収981号)。

 

(2) 就業の場所 <業務を開始し、終了するところ>

 


OK

 

a) 物品を得意先に届けて、その届け先から直接帰宅する場合の物品の届け先

 

b) 全員参加で出勤扱いとなる会社主催の運動会の会場

 

c) 接待業務に利用した飲食店、外勤営業職の直行先、直帰先 etc.

 

 

(3) 就業に関し <移動行為と業務の間に関連性があること>

 


OK

 

a) 事業主の命によって物品を届けに行く場合

 

b) 事業主の命を受けて、得意先を接待し又は得意先との打ち合わせに出席する場合

 

c) 全職員について参加が命じられ、これに参加すると出勤扱いとされるような会社主催の運動会等の行事に参加する場合

 

d) 転任の場合における転任前の住居(以下「帰省先住居」という)から転任後の住居(以下「赴任先住居」という)への移動の場合は、実態等を踏まえ、当該移動が業務に就く当日又は前日に行われた場合は、就業との関連性が認められる(ただし、前々日以前に行われた場合は、交通機関の状況等の合理的理由があるときに限り、就業との関連性が認められる)

 

e) 転任の場合における赴任先住居から帰省先住居への移動の場合は、実態等を踏まえ、当該移動が業務に従事した当日又は翌日に行われた場合は、就業との関連性が認められる(ただし、翌々日以後に行われた場合は、交通機関の状況等の合理的理由があるときに限り、就業との関連性が認められる) etc.

 

 

NG

 

a) 休日に会社の運動施設を利用しに行く場合

 

b) 参加するか否かが労働者の任意とされている会社主催の運動会等の行事に参加する場合

 

c) 運動部の練習に参加する等の目的で、例えば、午後の遅番の出勤者であるにもかかわらず、朝から住居を出るなど、所定の就業開始時刻とかけ離れた時刻(おおむね2時間を超える場合)に会社に行く場合

 

d) 第2の就業の場所にその所定の就業開始時刻と著しくかけ離れた時刻に出勤する場合(ただし、第1の就業の場所における就業終了時刻等によりやむを得ない事情によることがあるため、おおむね2時間を超える長時間であっても、それのみをもって、就業との関連性が失われるものではない。また、第1の就業の場所における就業終了時刻後の業務以外の行為による時間の経過は、それのみをもって、第2の就業場所への移動に係る就業との関連性を失わせるものではない)etc.

 

-----------------(28ページ目ここから)------------------

□「通勤」は、1日について1回しか認められないものではなく、例えば、昼休みに帰宅するような場合には、午前中の業務を終了して帰り、午後の業務に就くために出勤するものと考えられるため、その往復については就業との関連性が認められる

 

□就業開始前の組合活動に参加するため、通常の出勤時刻より約1時間30分程度早く会社へ向かうときは、就業との関連性が認められる(昭52.9.1基収793号)。(平6択)

 

(4) 合理的な経路 <通常利用することが考えられる経路>

 


OK

 

a) 乗車定期券に表示され、又は、会社に届け出ているような、公共交通機関等の通常利用する経路及び通常これに代替することが考えられる経路

 

b) タクシー、マイカーを利用する場合等に、通常利用することが考えられる経路がいくつかあるような場合(その経路は、いずれも合理的な経路となる)

 

c) 通常通勤している経路が、道路工事、デモ行進等の経路に当たっている場合など当日の交通事情により通常の経路を迂回してとる経路

 

d) マイカー通勤者が貸切の車庫を経由して通る経路

 

e) 他に子供を看護する者がいない共働き労働者などが、託児所、

親戚宅等に子供を預けるためにとる経路 etc.

 

 

NG

 

a) 特段の合理的な理由もなく著しく遠回りとなるような経路をとる場合

 

b) 鉄道線路、鉄橋、トンネル等を歩行して通る場合 etc.

 

 

(5) 合理的な方法 <一般的に常識的な方法>

 


OK

 

a) 公共交通機関を利用し、自動車、自転車等を本来の用法に従って使用する場合、徒歩の場合等通常用いられる交通方法(一般に合理的な方法であれば、その労働者が平常利用又は使用している方法であるか否かを問わない)

 

NG

 

a) 免許を一度も取得したことのない者が自動車を運転(無免許運転)する場合

 

b) 自動車、自転車等を泥酔して運転する場合 etc.(平11択)

 

 

↓ ただし…

 

□次のような場合は、必ずしも合理性を欠くものとして取扱う必要はない(ただし、事情を勘案し、給付制限が行われることはある)。

 


a) 軽い飲酒運転の場合

 

b) 単なる免許証不携帯の場合(平11択)

 

c) 免許証の更新忘れによる無免許運転の場合 etc.

 

 

(6) 業務の性質を有するもの <業務災害として判断できるもの>

 

□業務災害の「通勤途上」に該当する場合は、「通勤」の要件を満たす移動上で生じた事故であっても、業務災害として保険給付を受けることができるため、当該移動は、通勤の範囲から除かれている