社労士/労働基準法3-6 | 初級INPUT講座2011年度向けテキスト

社労士合格を目指す受験生を応援!2011年度向けテキストを完全公開!「労働基準法3-6:不可抗力である旨を主張し得ないすべての場合」

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労働基準法(3)-6

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テキスト本文の開始

 

 

ちょっとアドバイス

 

◆*6「不可抗力である旨を主張し得ないすべての場合」とは?

 


□そもそも、債務者が債務を履行できないことの原因が債権者側にあるとき、債権者はどのような場合にその補償義務が生ずるのだろうか?

 

↓ 一般法(民法)では…

 

民法536条2項の債権者(労基法では使用者側)の帰責事由の基準として、「債権者の故意・過失又は信義則上これと同視すべき事由」とされている。(平18択)

 

↓ つまり…

 

債権者側に故意や過失がなければ、債務者(労基法では労働者側)は保護(補償)が受けられないことがあるということ。

 

↓ しかし、これでは…

 

債務者に対して、十分な保護が与えられているとはいえない
(使用者が休業を命じた場合であって、その休業が使用者の故意・過失によるものである場合は、民法536条2項の規定により、賃金の全額を請求できる

 

↓ そこで…

 

□労働基準法26条の「使用者の責に帰すべき事由」の解釈適用に当たっては、いかなる事由による休業の場合に労働者の生活保障のために使用者に前記の限度での負担を要求するのが社会的に正当とされるかという考量を必要とするといわなければならない。(平21選)

 

↓ このようにみると…

 

「使用者の責に帰すべき事由」とは、取引における一般原則たる過失責任主義とは異なる観点をも踏まえた概念というべきであって、民法536条2項の「債権者ノ責ニ帰スヘキ事由」よりも広く、使用者側に起因する経営、管理上の障害を含むものと解するのが相当である(ノースウエスト航空事件・最高裁第2小昭62.7.17)。(平17択)

 

↓ したがって…

 

□民法の「危険負担」に関する規定は任意規定とされているが、労働基準法26条は強行規定であるため、合意特約によって排除することはできない(民法においては、当事者間の特約条項によって補償すべきことを制限することができるが、労働基準法ではそのような任意規定の扱いはできないということ)。

 

*危険負担とは、売買契約(労働契約)を締結した後、売主(使用者)の過失ではなく、目的物(就労の機会)が当事者の責めによらない事由で消滅した場合の決着のつけかた。

 

↓ なお…

 

□不可抗力(天災地変・戦争・ゼネスト等の予見不可能な事由)や懲戒処分による出勤停止のような労働者の責に帰すべき事由は除かれる。

 

 

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advance

 

□休業手当に関する通達は、以下のとおりである。

 


該当する

 

□親工場の経営難から下請工場が資材、資金の獲得ができず休業した場合 (昭23.6.11基収1998号)

 

□使用者が解雇の予告をすることなく労働者を解雇し、労働者がその解雇を有効であると誤信した場合において、その解雇の意思表示が解雇予告として有効と認められ、かつ、その解雇の意思表示があったために予告期間中労働者が休業した場合における解雇が有効に成立するまでの期間(昭24.7.27基収1701号)

 

□事業場における一部労働者のストライキに対し、残りの労働者を就業させることが可能であるにもかかわらず、使用者がこれを拒否して休業させた場合(昭24.12.2基収3281号)

 

□新規学卒者のいわゆる採用内定により、当該企業の例年の入社時期を就労の始期とし、一定の事由による解約権を留保した労働契約が成立したとみられる場合において、企業の都合で就労の始期を繰り下げる、いわゆる自宅待機の措置をとる期間(昭63.3.14基発150号)

 

 

該当しない

 

□法33条2項に基づく代休付与命令による休業(昭23.6.16基収1935号)。

 

□使用者の正当な争議行為としての作業所閉鎖による休業の場合(昭23.6.17基収1953号)。

 

□労働組合が争議をしたことにより同一事業場における当該労働組合員以外の労働者の一部が労働を提供し得なくなった場合であって、その程度に応じて労働者を休業させる場合(昭24.12.2基収3281号)。

□労働安全衛生法66条による健康診断の結果に基づいて使用者が休業ないし労働時間の短縮を行った場合(昭63.3.14基発150号)。

 

 

◆解雇無効の判断と賃金の請求権

 

□労働基準法等により禁じられた解雇、解雇権の濫用と評価される解雇等によって、解雇が無効と判断された場合、解雇時から解雇無効判決確定時までの期間(解雇期間)中の賃金の取扱いについて

 

↓ 原則的には…

 

使用者には、解雇による労働者の就労不能につき帰責事由があるから、労働者は解雇期間中の賃金請求権を失わない(民法536条2項本文 →判例・通説)。

 

↓ したがって…

被解雇者は、解雇期間につき平均賃金の60/100以上の休業手当が保障される。