社労士/初級インプット講座/健康保険法4-18 ~山川靖樹の社労士予備校~

社労士試験対策の決定版!山川靖樹プロデュースの社労士初級レベルのインプット講座!「健康保険法4-18:直接支払制度」

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(3) 出産育児一時金等の医療機関等への直接支払制度 (実施要綱・平21.5.29保発0529008号平22.7.1改訂版)

 

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【第1 趣旨】

 

 

これまで、出産育児一時金及び家族出産育児一時金(「出産育児一時金等」という)については、原則として出産後に被保険者等(健康保険若しくは船員保険の被保険者若しくは被保険者であった者又は国民健康保険の世帯主若しくは組合員をいう)が保険者に申請し、支給される仕組みであったため、一時的に被保険者等が多額の現金を用意する必要が生じていたところであるが、緊急の少子化対策の一環として、安心して出産できる環境を整備するという観点から、その支給方法を見直し、被保険者等が病院、診療所又は助産所(「医療機関等」という)との間に、出産育児一時金等の支給申請及び受取に係る代理契約を締結の上、出産育児一時金等の額を限度として、医療機関等が被保険者等に代わって出産育児一時金等の支給申請及び受取を直接保険者と行うことにより、被保険者等があらかじめまとまった現金を用意した上で医療機関等の窓口において出産費用を支払う経済的負担の軽減を図るものである。

 

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【第2 直接支払制度の運用方法】

 

 

出産育児一時金等の医療機関等への直接支払制度(単に「直接支払制度」という)は、次の「ここをチェック!」に掲げる事務を関係者(医療機関等、支払機関(国民健康保険団体連合会(「国保連」という)及び社会保険診療報酬支払基金(「支払基金」という)をいう)及び保険者)が実施することを通じ、当該医療機関等から被保険者等又はその被扶養者(国民健康保険の世帯主及び組合員以外の被保険者を含む)に対し請求される出産費用について、保険者が当該医療機関等に対し出産育児一時金等を直接支払うことをその内容とする。

 

 

ちょっとアドバイス

 


【対象者】

 

 

平成21年10月1日から平成23年3月31日までの間の出産に係る出産育児一時金等の受給権を有する被保険者等(児童福祉法に規定する助産施設において助産の実施を受ける者を除く)を対象とする。

 

 

【出産を取り扱う医療機関等における事務】

 

 

<申請・受取に係る代理契約の締結等>

 

医療機関等は、被保険者等又はその被扶養者の出産に関し、当該医療機関等を退院(医師又は助産師の往診による出産の場合にあっては、その医学的管理を離れるときをいう)するまでの間に、直接支払制度について被保険者等又はその被扶養者に十分に説明した上で、直接支払制度を活用するか意思確認をする。
確認に当たっては、次のイ)~ニ)に掲げる旨について書面により被保険者等の合意を得るものとする。当該書面は2通作成するものとし、1通は被保険者等又はその被扶養者に手交し、1通は医療機関等において保管する。(医療機関等における保管期間は、出産育児一時金等の請求に係る消滅時効に照らし、出産日から最低でも2年とする)

 


イ) 保険者に対し、被保険者等の名において出産育児一時金等の申請を無償で代わって行う旨並びに申請先となる保険者の名称

 

ロ) 保険者が被保険者等に対して支給する出産育児一時金等の額(42万円(財団法人日本医療機能評価機構が運営する産科医療補償制度に加入する医療機関等の医学的管理下における在胎週数22週に達した日以後の出産(死産を含む、「加算対象出産」という)でない場合にあっては39万円))を限度として、医療機関等が被保険者等に代わって出産育児一時金等を受け取る旨及び出産育児一時金等の額を超えた出産費用については、別途被保険者等又はその被扶養者が医療機関等の窓口で支払う必要がある旨

 

ハ) 医療機関等が被保険者等に代わって出産育児一時金等を受け取った額の範囲で、保険者から被保険者等へ出産育児一時金等の支給があったものとみなされる旨

 

ニ) 現金等で出産費用を医療機関等に即時支払う等の理由により直接支払制度を利用せず、被保険者等が別途従来どおりの方法で出産育児一時金等の支給申請を行うことは、法令上妨げられるものでない旨

 

 

なお、被保険者等又はその被扶養者の転院等により、契約を締結した医療機関等において出産がなされなかった場合においては、当該代理契約は無効となり、当該医療機関等は直接支払制度の活用ができない。転院等する先の医療機関等において、直接支払制度の活用を希望する場合は、新たに代理契約を締結する必要がある

 

 

<入退院時の事務>

 

a) 入院(医師又は助産師の往診による出産の場合にあっては、その医学的管理に入るときをいう)する際に、被保険者証(日雇特例被保険者の受給資格者票又は特別療養費受給票若しくは国民健康保険被保険者資格証明書を含む)の提示を求めること。

 

b) 直接支払制度を用いる医療機関等は、要した出産費用について、42万円(加算対象出産でない場合にあっては39万円)を上回るときに限り、当該上回った額について被保険者等又はその被扶養者に退院時に請求する。なお、直接支払制度の利用を希望しなかった被保険者等又はその被扶養者については、医療機関等において出産費用全額の支払いを求めることになる。

 

 

【支払機関における事務】

 

 

<保険者との支払業務委託契約の締結>

 

支払機関は、各保険者と直接支払に係る業務委託契約を締結する。

 

<専用請求書に係る支給要件等確認事務>

 

保険者から支払事務の委託を受けた支払機関は、各医療機関等から提出された専用請求書について、出産数、在胎週数等記載事項の確認を行い、請求額等が適正か否かの確認作業を保険者に代わり行う
専用請求書の記載内容について支払機関は審査を行うものでなく、記載内容に不備があった場合は、医療機関等に返戻することとなる。

 

 

【保険者における事務】

 

 

<医療機関等からの請求額が出産育児一時金等として支給すべき額未満である場合の被保険者等への支払い等>

 

医療機関等が請求した代理受取額が、42万円(加算対象出産でない場合にあっては39万円)未満の場合、これらの額と代理受取額の差額を被保険者等に対し支払うものとする。
この場合において保険者は、被保険者等に対し、差額の支給申請ができる旨のお知らせを、出産育児一時金等の支給決定通知書に併記するなどの方法により、確実に行うものとする。
なお、差額の支給に当たっては、支払機関より送付される請求明細や専用請求書等を確認することが必須となるが、直接支払制度においては、専用請求書等が保険者に到達するのが出産月から1~2ヶ月後とならざるを得ないため、被保険者等の経済的負担を軽減する現金給付である制度趣旨に照らし、所定の明細書等により、直接支払制度を利用していること及び出産にかかった実費が確認できた場合は、専用請求書の到達を待たずとも、必要に応じ差額の振込先を記した書面の提出を求めること等を通じ、当該差額を被保険者等に早期支給するものとする。
<直接支払制度を利用しなかった被保険者等への対応>
直接支払制度を利用しなかった被保険者等に係る出産育児一時金等の支給については、従来の方法により、被保険者等からの申請に基づき支給を行うものとする。
なお、直接支払制度を利用したにもかかわらず、被保険者等が、同一又は他の保険者に対し従来の方法により出産育児一時金等の支給を重複して申請すること等が考えられるが、出産育児一時金等の早期支給及び二重給付の防止を図る観点から、従来の方法により出産育児一時金等の支給を申請する被保険者等が、既に直接支払制度を利用していないか又は他の保険者に対して重複申請をしていないかを保険者において判断することが可能となるよう、健康保険法施行規則86条2項2号等において、従来の方法による支給申請書に、所定の書面及び明細書等を添付することとしているので、保険者は、これらの書類の確認により、適正な保険給付に努められたい。
また、保険者独自の付加給付等、出産を要件とした42万円を超える給付を行っている場合にあっては、当該超える給付に係る専用の申請書を設ける等、保険者の実情に応じ所要の体制整備を図られたい。

 

 

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◆出産育児一時金等の医療機関等への直接支払制度の平成22年4月以降の取扱いについて (平22.3.12保発0312第6号)

 


【第1 趣旨】

 

 

直接支払制度については、医療機関等からの支給申請から支払までに1~2ヶ月かかることから、当面の準備がどうしても整わないなど、直接支払制度に対応することが直ちには困難な医療機関等については、例外的に、平成21年度に限り、準備が整うまでの間、直接支払制度の適用を猶予していたところである。(中略)
このため、直接支払制度に対応することが困難な医療機関等については、例外的に、第2に掲げる措置を講じた上で、出産育児一時金等の支給額の引上げ等に係る暫定措置期間である平成22年度に限り、直接支払制度の適用を猶予することとする。

 

 

【第2 医療機関等における措置】

 

 

イ) 直接支払制度に対応していない旨、窓口に掲示すること。

 

ロ) イ)の措置を講じた上で、直接支払制度の利用を希望する妊婦等に対し、直接支払制度に対応していない旨を説明し、書面により合意を得ること(実施要綱に規定する直接支払制度を利用しない旨の合意文書を交わすこと)。

 

ハ) 出産費用をあらかじめ用意できない等により、支払が困難な妊婦等に対しては、以下のいずれかの措置を講ずること。

 


a) 個別に直接支払制度に対応すること。(医療機関等の判断により、妊婦等が医療保険者から出産育児一時金等を受け取るまで、出産費用の支払いを待つことでもよいこと)

 

b) 医療保険者による出産費用の貸付や、都道府県社会福祉協議会による低所得世帯向けの貸付制度である生活福祉資金貸付を受けられるよう、これらの制度の説明や申請の支援等の便宜を図ること。