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健康保険法(5)-15

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第2節  給付に関する規定

 

1  付加給付、不正利得の徴収等 (法53条ほか)           重要度 ●    

 

条文

 


【健康保険組合の付加給付 (法53条)】
保険者が健康保険組合である場合においては、法定給付に併せて、規約で定めるところにより、保険給付としてその他の給付を行うことができる*1。

(平12択)

 

 

【保険給付の方法 (法56条)】
1) 入院時食事療養費、入院時生活療養費、保険外併用療養費、療養費、訪問看護療養費、移送費、傷病手当金、埋葬料、出産育児一時金、出産手当金、家族療養費、家族訪問看護療養費、家族移送費、家族埋葬料及び家族出産育児一時金の支給は、その都度、行わなければならない。埋葬に要した費用に相当する金額の支給についても、同様とする。


2) 傷病手当金及び出産手当金の支給は、前項の規定にかかわらず、毎月一定の期日に行うことができる

 

 

【不正利得の徴収等 (法58条)】
1) 偽りその他不正の行為によって保険給付を受けた者があるときは、保険者は、その者からその給付の価額の全部又は一部*2を徴収することができる。<受給者に対する費用徴収>(平23択)


2) 前項の場合において、事業主が虚偽の報告若しくは証明をし、又は保険医療機関において診療に従事する保険医若しくは指定訪問看護に係る主治の医師が、保険者に提出されるべき診断書に虚偽の記載をしたため、その保険給付が行われたものであるときは、保険者は、当該事業主、保険医又は主治の医師に対し、保険給付を受けた者に連帯して前項の徴収金を納付すべきことを命ずることができる。<共同行為者に対する費用徴収>


3) 保険者は、保険医療機関若しくは保険薬局又は指定訪問看護事業者が偽りその他不正の行為によって療養の給付に関する費用の支払又は入院時食事療養費、入院時生活療養費、保険外併用療養費、訪問看護療養費、家族療養費若しくは家族訪問看護療養費の支払を受けたときは、当該保険医療機関若しくは保険薬局又は指定訪問看護事業者に対し、その支払った額につき返還させるほか、その返還させる額に100分の40を乗じて得た額を支払わせることができる。<保険医療機関等による返還> (平17択)(平23択)

 

 

ちょっとアドバイス

 

□*1「付加給付」は、健康保険法上の保険事故(疾病、負傷、死亡又は出産)以外のものに関しては行うことができない。

 

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□*2「全部又は一部」とは、偽りその他の不正行為により受けた分が、「その一部」であることが考えられるので、全部又は一部としたものであって、詐欺その他の不正行為によって受けた分はすべてという趣旨である

(昭32.9.2保発123号)。

 

2  その他の通則 (法59条~法62条)                    重要度 ●   

 

条文

 


【文書の提出等 (法59条)】
保険者は、保険給付に関して必要があると認めるときは、保険給付を受ける者(当該保険給付が被扶養者に係るものである場合には、当該被扶養者を含む)に対し、文書その他の物件の提出若しくは提示を命じ、又は当該職員に質問若しくは診断をさせることができる。

 

 

【診療録の提示等 (法60条)】
1) 厚生労働大臣は、保険給付を行うにつき必要があると認めるときは、医師、歯科医師、薬剤師若しくは手当を行った者又はこれを使用する者に対し、その行った診療、薬剤の支給又は手当に関し、報告若しくは診療録、帳簿書類その他の物件の提示を命じ、又は当該職員に質問させることができる。


2) 厚生労働大臣は、必要があると認めるときは、療養の給付又は入院時食事療養費、入院時生活療養費、保険外併用療養費、療養費、訪問看護療養費、家族療養費若しくは家族訪問看護療養費の支給を受けた被保険者又は被保険者であった者に対し、当該保険給付に係る診療調剤又は指定訪問看護の内容に関し、報告を命じ、又は当該職員に質問させることができる。

 

 

【受給権の保護 (法61条)】
保険給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。 (平8択)(平11択)(平18択)

 

 

【租税その他の公課の禁止 (法62条)】
租税その他の公課は、保険給付として支給を受けた金品を標準として、課することができない。(平11択)(平18択)

 

 

ちょっとアドバイス

 

□「保険給付を受ける権利」には、療養の給付を受ける権利は含まれない

 

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第3節  保険給付の制限

 

1  犯罪又は故意による場合 (法116条)                  重要度 ●● 

 

条文

 


被保険者又は被保険者であった者が、自己の故意の犯罪行為により、又は故意に給付事由を生じさせたときは、当該給付事由に係る保険給付は、行わない。
(平3択)(平12択)

 

 

ここをチェック

 

□被保険者が、自己の故意の犯罪行為により、被扶養者にけがをさせた場合、被扶養者に対する治療は保険給付の対象とならない。(平20択)

 

ちょっとアドバイス

 

◆通達による判断基準

 


被保険者の自殺による死亡は、故意に基づく事故ではあるが、死亡は絶対的な事故であるとともに、この死亡に対する保険給付としての埋葬料は、被保険者であった者に生計を依存していた者で埋葬を行うものに対して支給されるという性質のものであるから法116条後段に該当しないものとして取り扱い、埋葬料を支給しても差し支えない(昭26.3.19保文発721号)。
(平9択)(平11択)(平12択)(平23択)

 

 

自殺未遂による傷病に関しては、療養の給付等又は傷病手当金は、支給しない(昭11.1.9保規394号)。

 

 

精神異常により自殺を企てたものと認められる場合においては、法116条の故意に該当せず、保険給付は為すべきものである(昭13.2.10社庶131号)。

 

 

2  闘争・泥酔等による場合 (法117条)                  重要度 ●   

 

条文

 


被保険者が闘争、泥酔又は著しい不行跡によって給付事由を生じさせたときは、当該給付事由に係る保険給付は、その全部又は一部を行わないことができる。
(平5択)(平17択)(平18択)(平23択)

 

 

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3  少年院施設等に収容された場合 (法118条)            重要度 ●● 

 

条文

 


1) 被保険者又は被保険者であった者が、次のいずれかに該当する場合には、疾病、負傷又は出産につき、その期間に係る保険給付(傷病手当金及び出産手当金の支給にあっては、厚生労働省令で定める場合に限る*1)は、行わない。

 


a) 少年院その他これに準ずる施設に収容されたとき。

 

 

b) 刑事施設、労役場その他これらに準ずる施設に拘禁されたとき。

(平12択)(平18択)

 

 

2) 保険者は、被保険者又は被保険者であった者が前項a)又はb)のいずれかに該当する場合であっても、被扶養者に係る保険給付を行うことを妨げない。
(平9択)(平10択)(平13択)

 

 

ちょっとアドバイス

 

□「死亡」に関する保険給付は、行われる。(平10択)(平22択)

 

有罪が確定していない者(いわゆる未決勾留者)については、法118条1項の規定は適用されない。

 

advance

 

□*1 傷病手当金及び出産手当金の給付の制限に係る「厚生労働省令で定める場合」とは、次のいずれかに該当する場合とする(則32条の2)。

 


a) 少年法の規定による保護処分として少年院若しくは児童自立支援施設に送致され、収容されている場合又は売春防止法の規定による補導処分として婦人補導院に収容されている場合。

 

 

b) 懲役、禁錮若しくは拘留の刑の執行のため若しくは死刑の言渡しを受けて刑事施設(少年法の規定により少年院において刑を執行する場合における当該少年院を含む)に拘置されている場合若しくは留置施設に留置されて懲役、禁錮若しくは拘留の刑の執行を受けている場合、労役場留置の言渡しを受けて労役場に留置されている場合又は監置の裁判の執行のため監置場に留置されている場合。