社労士/労働基準法5-11 | 初級INPUT講座2011年度向けテキスト

社労士合格を目指す受験生を応援!2011年度向けテキストを完全公開!「労働基準法5-11:企画業務型裁量労働制」

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労働基準法(5)-11

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5  みなし労働時間制-4
(企画業務型裁量労働制・法38条の4)                        重要度 ●●●

 

条文

 

 

1) 賃金、労働時間その他の当該事業場における労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に対し当該事項について意見を述べることを目的とする委員会*1(使用者及び当該事業場の労働者を代表する者を構成員とするものに限る)が設置された事業場*2において、当該委員会がその委員の5分の4以上の多数による議決により次に掲げる事項に関する決議をし、かつ、使用者が、厚生労働省令で定めるところにより当該決議を行政官庁に届け出た場合*3において、ロに掲げる労働者の範囲に属する労働者を当該事業場におけるイに掲げる業務に就かせたとき*4は、当該労働者は、厚生労働省令で定めるところにより、ハに掲げる時間労働したものとみなす。(平12択)

 

イ) 事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務であって、当該業務の性質上これを適切に遂行するにはその遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務(以下この条において「対象業務」という)

 

ロ) 対象業務を適切に遂行するための知識、経験等を有する労働者であって、当該対象業務に就かせたときは当該決議で定める時間労働したものとみなされることとなるものの範囲*5

 

ハ) 対象業務に従事するロに掲げる労働者の範囲に属する労働者の労働時間として算定される時間(みなし労働時間)*6

 

ニ) 対象業務に従事するロに掲げる労働者の範囲に属する労働者の労働時間の状況に応じた当該労働者の健康及び福祉を確保するための措置*7を当該決議で定めるところにより使用者が講ずること

 

ホ) 対象業務に従事するロに掲げる労働者の範囲に属する労働者からの苦情の処理に関する措置*8を当該決議で定めるところにより使用者が講ずること

 

へ) 使用者は、この項の規定によりロに掲げる労働者の範囲に属する労働者を対象業務に就かせたときはハに掲げる時間労働したものとみなすことについて当該労働者の同意*9を得なければならないこと及び当該同意をしなかった当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこと(平20択)

 

ト) イ~ヘに掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項*10

 

 

outline

 

◆企画業務型裁量労働制の導入目的

 


企業戦略において、例えば、異業種に進出するような場合、新商品の開発等に向けた活動(プロジェクトチームによる市場調査など)は不可欠である。
ところが、こうした業務の成果は、「労働時間」によって拘束することになじまない。そこで、このような業務(事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務で、「対象業務」という)に従事する労働者の労働時間は、あらかじめ労使間で取り決めた時間労働したものとみなすこととした。
なお、労使協議を行う場を「労使委員会」といい、必ず設置しなければならない。

 

 

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(1) 導入の要件について

 

ここをチェック

 

□*1 「労使委員会」は、賃金、労働時間その他の当該事業場における労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に対し当該事項について意見を述べることを目的とする委員会である。

 

↓ なお…

 

労使委員会は、次のいずれにも適合するものでなければならない(法38条の4第2項)。

 

 

イ) 当該委員会の委員の半数については、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者に任期を定めて指名されていること(平12択)

 

ロ) 当該委員会の議事について、厚生労働省令で定めるところにより、議事録が作成され、かつ、3年間保存されるとともに、当該事業場の労働者に対する周知が図られていること

 

ハ) イ、ロのほか、厚生労働省令で定める要件として、労使委員会の招集、定足数、議事その他労使委員会の運営について必要な事項に関する規程が定められていること(則24条の2の4第4項)

 

 

□*2 「労使委員会が設置された事業場」とは、次に掲げる事業場をいう(平15.10.22厚労告353号)。

 


イ) 本社、本店である事業場

 

 

ロ) イに掲げる事業場以外の事業場であって次に該当するもの

 

a) 当該事業場の属する企業等に係る事業の運営に大きな影響を及ぼす決定が行われる事業場

 

b) 本社、本店である事業場の具体的な指示を受けることなく独自に、当該事業場に係る事業の運営に大きな影響を及ぼす事業計画や営業計画の決定を行っている支社、支店等である事業場

 

 

□*3 「決議」は、労使委員会の委員の5分の4以上の多数による議決が必要となる。

 

↓ なお…

 

□*10 「厚生労働省令で定める事項」は、次のとおりである(則24条の2の3第3項)。

 


a) 決議の有効期間(3年以内が望ましい)

 

b) 労働時間の状況及び健康・福祉確保措置として講じた措置及び苦情処理措置として講じた措置並びに対象労働者から得た同意に関する労働者ごとの記録を保存すること(決議の有効期間中及びその満了後3年間)

 

 

↓ また…

 

□決議は、行政官庁(所轄労働基準監督署長)に届け出なければ、その効力は発生しない(平12.1.1基発1号)。(平17択)

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ちょっとアドバイス


□*4 「対象業務」は、次のいずれにも該当することが必要である(平15.10.22厚労告353 号)。

 


a) 事業の運営に関する事項についての業務であること

 

b) 企画、立案、調査及び分析の業務であること

 

c) 当該業務の性質上これを適切に遂行するにはその遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務であること

 

d) 当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務であること

 

 

↓ なお…

 

□対象業務は、その要件のいずれにも該当するものであることが必要であり、その要件の全部又は一部に該当しない業務を労使委員会において対象業務として決議したとしても、当該業務に従事する労働者に関し、企画業務型裁量労働制に関する労働時間のみなしの効果は生じない(同通達)。

 

□*5 「対象労働者」は、対象業務に常態として従事していることが原則である。

 

↓ また…

 

「対象業務を適切に遂行するために必要となる具体的な知識、経験等を有する労働者」の範囲については、対象業務ごとに異なり得るものであり、このため、対象労働者となり得る者の範囲を特定するために必要な職務経験年数、職能資格等の具体的な基準を明らかにすることが必要である(平15.10.22厚労告353号)。

 

↓ なお…

 

□客観的にみて対象労働者に該当しない労働者を含めて労使委員会において決議がされた場合、使用者が当該対象労働者に該当しない労働者を対象業務に就かせても、企画業務型裁量労働制に関する労働時間のみなしの効果は生じない(同通達)。

 

□*6 対象業務に従事する対象労働者の「労働時間として算定される時間」は、1日についての対象労働者の労働時間数として、具体的に定められたものであることが必要である(平15.10.22厚労告353号)。