社労士/雇用保険法6-10 | 初級INPUT講座2011年度向けテキスト

社労士合格を目指す受験生を応援!2011年度向けテキストを完全公開!「雇用保険法6-10:年金額の改定等」

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厚生年金保険法(6)-10

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テキスト本文の開始

 

 

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第8節 年金額の改定等

1  再評価率の改定等-1 (原則・法43条の2)                重要度 ●   

 

outline

 

◆年金額改定制度の変遷

 


厚生年金保険の年金給付は、原則として、報酬比例制であり、その報酬比例額の算定の基礎となるのが「平均標準報酬額」であるが、厚生年金保険における従来の改定方法は、2通りの仕組みが併用されていた。

 

↓ 具体的には…

 


a) 5年に一度の財政再計算年度における再評価率表の見直し。(「賃金スライド制」とも呼ばれ、受給者の支給基準となる月額単価(平均標準報酬月額)が5年ごとに見直しされていた)

 

b) 毎年度における「完全自動物価スライド制」による年金総額の微調整。(物価の変動にあわせて毎年4月に見直しされていた)

 

 

↓ しかし…

 

平均標準報酬額の適正評価(現在価値への置き換え)に用いられる基準(再評価率)について、国民年金法による改定率の改定基準と連動するのが妥当であるという考えから、平成16年改正により「再評価率」の改定の基準は、「改定率」の改定の基準とほぼ共通のものとなった。

 

 

(1) 原則規定 (1項)

 

条文

 


再評価率については、毎年度、物価変動率*1に3年度前の実質賃金変動率及び3年度前の可処分所得割合変化率を乗じて得た率(以下「名目手取り賃金変動率」という)を基準として改定し、当該年度の4月以降の保険給付について適用する。(平17択)(平18選)

 


【再評価率の改定基準】=名目手取り賃金変動率(前年の物価変動率×3年度前の実質賃金変動率×3年度前の可処分所得割合変化率)

 

 

 

ちょっとアドバイス

 

□*1「物価変動率」とは、当該年度の初日の属する年の前々年の物価指数(総務省において作成する年平均の「全国消費者物価指数」をいう)に対する当該年度の初日の属する年の前年の物価指数の比率をいう。

 

(2) 改定基準 <その1> (2項)

 

advance

 

□次に掲げる再評価率の改定については、それぞれ右欄に定める率を基準とする。

 


イ) 当該年度の前年度に属する月の標準報酬月額と標準賞与額(前年度の標準報酬月額等)に係る再評価率

 

 

可処分所得割合変化率

 

ロ) 当該年度の前々年度又は当該年度の初日の属する年の3年前の年の4月1日の属する年度に属する月の標準報酬月額と標準賞与額(前々年度等の標準報酬月額等)に係る再評価率

 

 

物価変動率×可処分所得割合変化率

 

 

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(3) 改定基準 <その2> (3項)

 

advance

 


名目手取り賃金変動率が1を下回り、かつ、物価変動率名目手取り賃金変動率を上回る場合における再評価率の改定については、物価変動率を基準とする。ただし、物価変動率が1を上回る場合は、1を基準とする。

 

 

↓ 具体的には…

 

□再評価率の改定は、原則として、名目手取り賃金変動率を基準として改定する。

 

↓ ただし…

 


名目手取り賃金変動率が下落した場合であって、物価変動率が…

 

a) 上昇したときは改定なし

 

b) 下落した場合で、その下落幅が賃金下落幅よりも大きいときは「名目手取り賃金変動率」優先

 

c) 下落した場合で、その下落幅が賃金下落幅よりも小さいときは「物価変動率」優先

 

 

2  再評価率の改定等-2 (基準年度以後・法43条の3)        重要度 ●   

 

条文

 


1) 受給権者が65歳に達した日の属する年度の初日の属する年の3年後の年の4月1日の属する年度以後において適用される再評価率(以下「基準年度以後再評価率」という)の改定については、物価変動率を基準とする。(平18択)(平18選)

 


【基準年度以後再評価率の改定基準】=物価変動率

 

 

2) 前年度の標準報酬月額等及び前々年度等の標準報酬月額等に係る基準年度以後再評価率の改定については、前条第2項イ及びロ(改定基準<その1>)の規定を適用する。

 

 

advance

 


3) 次に掲げる場合における基準年度以後再評価率(前項に規定する基準年度以後再評価率を除く)の改定については、当該定める率を基準とする。

 


イ) 物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回り、かつ、名目手取り賃金変動率が1以上となるとき

 

名目手取り賃金変動率

 

 

ロ) 物価変動率が1を上回り、かつ、名目手取り賃金変動率が1を下回るとき

 

 

1

 

 

↓ 具体的には…

 

□基準年度以後改定率の改定は、原則として、物価変動率を基準として改定する。

 

↓ ただし…

 


物価変動率が上昇した場合であって、名目手取り賃金変動率が…

 

a) 下落したときは改定なし

 

b) 上昇した場合で、その上昇幅が物価上昇幅よりも大きいときは「物価変動率」優先

 

c) 上昇した場合で、その上昇幅が物価上昇幅よりも小さいときは「名目手取り賃金変動率」優先

 

 

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3  調整期間 (法34条)                                    重要度 ●   

 

条文

 


1) 政府は、財政の現況及び見通しを作成するに当たり、厚生年金保険事業の財政が、財政均衡期間の終了時保険給付の支給に支障が生じないようにするために必要な積立金(年金特別会計の厚生年金勘定の積立金並びに第85条の2(企業年金連合会の解散に伴う責任準備金相当額の徴収)及び第161条第1項(解散基金加入員に係る措置)に規定する責任準備金をいう)を保有しつつ当該財政均衡期間にわたってその均衡を保つことができないと見込まれる場合には、保険給付の額を調整するものとし、政令で、保険給付の額を調整する期間(以下「調整期間」という)の開始年度*1を定めるものとする。

 

2) 財政の現況及び見通しにおいて、前項の調整を行う必要がなくなったと認められるときは、政令で、調整期間の終了年度を定めるものとする。

 

3) 政府は、調整期間において財政の現況及び見通しを作成するときは、調整期間の終了年度の見通しについても作成し、併せて、これを公表しなければならない。

 

 

ちょっとアドバイス

 

□*1「調整期間の開始年度」は、平成17年度とする(令2条)。(平22択)