社労士合格を目指す受験生を応援!2011年度向けテキストを完全公開!「労働基準法2-16:退職時等の証明」
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5 退職時等の証明 (法22条) 重要度 ●●
1) 労働者が、退職の場合*1において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由*2(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。(平6択)(平15択)
2) 労働者が、第20条第1項の解雇の予告がされた日から退職の日までの間*3において、当該解雇の理由について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。ただし、解雇の予告がされた日以後に労働者が当該解雇以外の事由により退職した場合においては、使用者は、当該退職の日以後、これを交付することを要しない。
3) 前2項の証明書には、労働者の請求しない事項を記入してはならない。
4) 使用者は、あらかじめ第三者と謀り*4、労働者の就業を妨げることを目的として、労働者の国籍、信条、社会的身分若しくは労働組合運動*5に関する通信をし、又は第1項及び第2項の証明書に秘密の記号を記入してはならない。
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◆退職時証明の概略
□「法定記載事項」とは、a) 使用期間、b) 業務の種類、c) その事業における地位、
d)賃金、e) 退職の事由(解雇の場合は、その理由を含む)の5項目をいう。
↓ なお…
□証明書には、労働者の請求した事項のみを記入すべきであって、労働者の請求しない事項は、たとえ上記a)~e)に該当する事項であっても、記入することはできない。
(平11択)
↓ また…
□解雇された労働者が解雇された事実のみについて使用者に証明書を請求した場合、使用者は法22条3項の規定により、解雇の理由について証明書に記入してはならず、解雇の事実のみを証明書に記入すべきである(平15.12.26基発1226002号)。
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(1) 退職時の証明
□*1 「退職の場合」とは、労働者の自己退職(任意退職)に限らず、使用者から解雇された場合や契約期間の満了により自動的に契約が終了する場合も含まれ、退職原因の如何を問わない。(平1択)
↓ なお…
□退職時の証明書の交付を請求することができる時期は、退職の日以後とされている。
□退職時の証明を求める回数に制限はない(平11.3.31基発169号)。
↓ また…
□退職時の証明の請求権の時効は、法115条により、退職時から2年と解される(平11.3.31基発169号)。
□*2 「退職の事由」とは、自己都合退職、勧奨退職、解雇、定年退職等労働者が身分を失った事由のことである(平11.1.29基発45号)。
↓ また…
□解雇の理由については、具体的に示す必要があり、 就業規則の一定の条項に該当することを理由として解雇した場合には、就業規則の当該条項の内容及び当該条項に該当するに至った事実関係を証明書に記入しなければならない(平15.10.22基発1022001号)。
(2) 記載禁止事項
□*4 「あらかじめ第三者と謀り」とは、「事前に第三者と申し合わせて」という意味であって、事前の申し合わせに基づかない具体的照会に回答することは、本条の禁止するところではない(平15.12.26基発1226002号)。(平9択)
↓ したがって…
いわゆるブラックリストの回覧の如きあらかじめ計画的に行う場合は、「あらかじめ第三者と謀り」に該当する。
□*5 「国籍、信条、社会的身分若しくは労働組合運動」は、限定的列挙であって例示ではない(平15.12.26基発1226002号)。
↓ したがって…
これ以外の事項、例えば、a) 保険募集人たる法定適格条件の有無のリストを作成回覧することにより通信をした場合、b) タクシー運転手の交通違反回数、あるいは不正営業の有無等について通信をした場合であっても、本条違反とはならない。
□*3 「解雇の予告がされた日から退職の日までの間」とは、在籍中ということである。
↓ つまり…
労働者は、退職日前であっても、退職の事由が「解雇」の場合に限り、当該「理由」に係る開示請求を行うことができる。
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↓ なお…
□本規定は、解雇予告の期間中に解雇を予告された労働者から請求があった場合に、使用者は遅滞なく、当該解雇の理由を記載した証明書を交付しなければならないものであるから、解雇予告の義務がない即時解雇の場合には、適用されない(平15.10.22基発1022001号)。(平16択)
6 金品の返還 (法23条) 重要度 ●
1) 使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、権利者*1の請求があった場合においては、7日以内に賃金*2を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない。(平6択)
2) 前項の賃金又は金品に関して争がある場合においては、使用者は、異議のない部分を、同項の期間中に支払い、又は返還しなければならない。
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□*1 「権利者」とは、一般には、労働者が退職した場合にはその労働者本人であり、労働者が死亡した場合にはその労働者の遺産相続人である(一般債権者は含まれない)(昭22.9.13発基17号)。
□*2 「退職手当」は、ここでいう「賃金」には含まれず、あらかじめ就業規則等で定められた支払時期に支払うことで足りる(昭63.3.14基発150号)。(平7択) (平12択)